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病院患者160万人の医療データが今やGoogleに握られていると権利団体が警鐘を鳴らす

by Christina Morillo

Googleの兄弟会社である人工知能企業「DeepMind」にはヘルスケア部門があり、イギリスの国営医療サービス事業・NHSと協力して医療従事者のためのアプリ「Streams」を開発してきました。DeepMindはこれまで「Googleからは独立している」という姿勢を明言してきましたが、新たにStreamsの開発チームがGoogle Healthに移ることが発表され、権利団体から大きな批判を浴びています。

Privacy advocates sound the alarm after Google grabs DeepMind UK health app - The Verge
https://www.theverge.com/2018/11/14/18094874/google-deepmind-health-app-privacy-concerns-uk-nhs-medical-data


Googleの親企業であるAlphabet傘下のDeepMindは、イギリスを拠点に置き、これまでイギリスのNHSと協力医療費の削減患者の個人情報をリアルタイムで追跡する新技術の開発など、数々の医療プロジェクトを進めてきました。この1つが医師や看護師が急性腎障害の状態を即座に判断できるようにする「Streams」というアプリで、実際にStreamsは医療現場でテスト運用されるようになっています。

一方のGoogleでは、11月8日、アメリカの医療サービス団体「Geisinger」の元CEOであるデイビッド・フェインバーグ氏が新たにヘルスケア部門の代表に就任しました。そしてフェインバーグ氏の指揮のもと、新たに、Streamsの開発チームがGoogle Healthチームに参加したとDeepMind Healthは発表。ブログの投稿では「学術パートナーと共に研究を続ける」という点が強調されていますが、同時に、今後発表される製品はGoogleの傘下にあることも記されています。

Scaling Streams with Google | DeepMind
https://deepmind.com/blog/scaling-streams-google/


Google Health unit absorbs DeepMind health
https://www.cnbc.com/2018/11/13/google-health-unit-absorbs-deepmind-health.html

医療の分野に民間企業であるGoogleやDeepMindが参入することは、以前から問題点が指摘されていました。2017年7月には、イギリスの病院とDeepMindの間で結ばれた契約が「データ保護法を順守しなかった」という判決も下されています。この判決は、Streamsの開発に際してDeepMindが160万人の患者の医療データに不適切なアクセスを行ったとするものでしたが、判決が下される前にDeepMindは人々を安心させるべく契約書を書き直たとのこと。

DeepMindのムスタファ・スレイマン氏は、2016年に「DeepMindはGoogleと別個に、自律して動いています。私たちは最初からずっと、患者のデータをGoogleのアカウントやプロダクト、サービスと関連させていません」と述べています。批評家は、Streamsの開発チームがGoogle Healthチームに移ったという発表について、「約束を破った」と指摘。これに対し DeepMindは「全ての患者のデータはパートナーの厳格なコントロール下にあり、データを使う判断は彼らと共に行う」と述べ、医療データがリスクにさらされることはないと説明しています。

しかし、研究者のジュリア・パウルス氏はDeepMindの説明を的外れだと一蹴。「DeepMindはStreamsをGoogleと決して関係させないと言っていたのに、今やStreamsはGoogleのものです。Streamsは既に議論の的だったのに、これは信頼を裏切る行為です」とTwitterに投稿しました。


医療情報関連の市民団体「MedConfidential」に所属する研究者であるサム・スミス氏も、「DeepMindやムスタファ氏はデータをGoogleに渡したとは決して認めませんが、だからといってこれはAlphabetがDeepMind Healthの全データをGoogleに渡していないということを意味しません」と述べました。


ただし、DeepMind Healthの全てのプロジェクトがGoogleの管理下に移るわけではないということには注意が必要。目の病気の診断乳がんを予測するアルゴリズムの開発など、研究に特化した部門は、DeepMindの管理下にとどまります。商用アプリを扱うチームのみがGoogleに以降するわけです。

また、DeepMindはNHSとの取引を監督するための独立した調査委員会を設けていましたが、今回の移行によって調査委員会は廃止されるものとみられています。調査委員会は「DeepMind Healthがイギリス政府の一部として動くための管理構造でしたが、今や世界的な成果のために動くようになったため、将来的においてこの構造は不適切になります」とDeepMindの広報はコメントを発表しています。

そして、Streamsのアプリ自体にも変化があるとみられています。これまで、アプリはAIを用いていませんでしたが、今後は医師や看護師のためにAIアシスタントに組み込むための開発が行われていきます。ただし、Streamsがアクセスする160万人の医療データについてAI解析が行われるかどうかは、記事作成時点で不明です。

海外ニュースメディアのThe Vergeは「次に何が起こるとしても、イギリスにおけるDeepMindの存在は不可逆的に変わってしまった」とコメントしています。

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in ソフトウェア,   セキュリティ, Posted by darkhorse_log

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