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ウェス・アンダーソン監督映画の常連俳優をネットワーク分析で視覚化して初めてわかったこととは?

by Rogelio A. Galaviz C.

ウェス・アンダーソン監督といえば「グランド・ブダペスト・ホテル」「犬ヶ島」など、美しい色彩感覚や統一された画面表現、独特の雰囲気を持った映画を数多く監督しています。そんなアンダーソン監督作品には「繰り返し登場する常連俳優」がいることも知られており、アンダーソン監督作品の常連俳優について、Googleが提供するデータベースであるFusion Tablesを用いて分析した結果、監督の好みが丸わかりとなっています。

Network Analysis of Wes Anderson’s Stable of Actors | DHUM 70000 – Introduction to Digital Humanities
https://dhintro18.commons.gc.cuny.edu/2018/11/06/ten-things-network-analysis-of-wes-andersons-stable-of-actors/

アンダーソン監督映画に親しんでいる人であれば、「あ、この俳優は以前の作品にも出てきたな」と思うことが度々あるはず。ニューヨーク市立大学大学院センタースティーブ・ブライアー教授とマシュー・ゴールド准教授は、そんなアンダーソン監督映画の常連俳優について、ネットワーク分析を用いて視覚化したいと考えました。

今回のネットワーク分析を行うにあたっては、何よりも先に分析する元データ、つまりアンダーソン監督作品の出演俳優のデータを用意する必要があります。幸運なことに、IMDbが各映画の俳優リストを公開しているため、ブライアー氏らは俳優のリストをIMDBからコピーし、Googleスプレッドシートに貼り付けていくだけで事前の準備は完了したとのこと。


こうして準備した元データを、ブライアー氏らはFusion Tablesを用いてわかりやすく視覚化していきました。それぞれの俳優を単体で表示するのではなく、俳優を出演映画と紐付けたマップにしてみたところ、出演映画を中心に花火が開いたようにきれいな画像になりました。少し大きめの丸がアンダーソン監督の映画で、その丸から伸びる線が映画に出演した俳優を表す小さな丸へと伸びています。ブライアー氏らはさらにこの方面での視覚化を試していくことにしたそうです。


ブライアー氏は、次にアンダーソン監督映画に複数回出演したことのある「常連俳優」のみを表示するようにフィルタリングしたとのこと。また、俳優は青い点で、映画は黄色い点で示すように設定を変更したところ、さらにわかりやすいマップが表示され、常連俳優と映画の関係性を検討しやすくなりました。複数回アンダーソン監督映画に出演している俳優は、計40人。

このマップを見ると、「アンソニーのハッピー・モーテル(原題は『Bottle Rocket』)」「天才マックスの世界(原題は『Rushmore』)」「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」といったアンダーソン監督初期の3作が左下、「ライフ・アクアティック(原題は『The Life Aquatic with Steve Zissou』)」「ダージリン急行」「ファンタスティック Mr.FOX」といった次の3作が真ん中に、そして「ムーンライズ・キングダム」「グランド・ブダペスト・ホテル」「犬ヶ島」という近年の3作が右下に配置されています。

映画は左から公開時期が古いものとなっているので、マップの左下にある青い点で示される俳優は、いずれも初期のアンダーソン監督映画だけに出演していたことを意味します。同様に右下の青い点は近年の作品にのみ登場していることがわかり、マップ中央の青い点はさまざまな時期のウェス・アンダーソン監督作品に一貫して登場していることがわかるようになっています。


中でもマップの中心に位置しているビル・マーレイは、非常に多くのアンダーソン監督映画に登場しており、実にアンダーソン監督映画9作品のうち「アンソニーのハッピー・モーテル」を除く8作品に登場しています。ビル・マーレイをピックアップして視覚化した図がこれ。


また、マップの右端に位置するティルダ・スウィントンに注目してみると、直近の3作品全てに登場していて、エドワード・ノートンハーヴェイ・カイテルと同様に最近のアンダーソン監督が気に入っている俳優であることがわかります。ティルダ・スウィントンをピックアップした画像が以下のもの。


また、ブライアー氏らが興味を引かれたのが、アンダーソン監督の兄弟であり作家・イラストレーターでもあるエリック・チェイス・アンダーソンが、実に4作品もの映画に出演しているという点です。「この発見はデータの視覚化をしていなければ、そう簡単に思いつくものではないでしょう」と、ブライアー氏は述べています。

ブライアー氏は映画ごとについてもアンダーソン監督映画の常連俳優について分析。アンダーソン監督第1作の「天才マックスの世界」に出演している俳優のうち、その後も他の作品に登場している俳優は全部で8人。


一方、「グランド・ブダペスト・ホテル」に登場した常連俳優は22人と、非常に多くの常連俳優を起用していた模様。


ブライアー氏らは今回用いたネットワーク分析の手法を用いて、他の映画監督や映画シリーズ、さまざまな賞に関連する俳優などについてのマップを作成できると考えています。さらに、機械学習を組み合わせることで映画監督の好みを分析し、「この監督が次の映画に起用する可能性が高い俳優」を予測するなどの発展も考えられるとブライアー氏は述べました。

なお、今回ブライアー氏らが用いたアンダーソン監督作品分析用データはここから参照することができます。

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in メモ,   映画, Posted by log1h_ik

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