サイエンス

毎年変化するインフルエンザウイルスへの抗体がラマを用いて生み出せるかもしれない

by Willian Justen de Vasconcellos

インフルエンザウイルスは人体の免疫システムを回避するために、常に変異する「究極のシェイプシフター」ですが、「インフルエンザウイルスの中でも不変の部分」を狙うことであらゆるインフルエンザウイルスに対抗する新たな治療法が探られています。

Universal protection against influenza infection by a multidomain antibody to influenza hemagglutinin | Science
http://science.sciencemag.org/content/362/6414/598


Llama blood clue to beating all flu - BBC News
https://www.bbc.com/news/health-46078989


インフルエンザウイルスの厄介なところは、免疫系の隙を狙うために毎年のように変異してきて、前年は効いたワクチンが効かなくなることがあるという点です。このため、科学者たちは、ありとあらゆるインフルエンザウイルスを倒す方法を探してきました。その中で、スクリップス研究所の集積的構造&コンピューター利用生命科学部門や、ヤンセン研究開発などの共同研究チームが着目したのは「ラマ」です。

人間の持つ抗体は、ウイルスの先端部を攻撃する傾向があるのですが、この部分はインフルエンザウイルスがもっとも容易に変化させられる部分でもあるため、インフルエンザウイルスが異なる形をとると攻撃が通用しなくなってしまいます。


一方、ラマの抗体は、人間とは比べものにならないぐらい小さいものなので、インフルエンザウイルスが変化させられないような深い部分まで攻撃することが可能だとのこと。

研究チームでは免疫反応を刺激するため、ラマを複数のインフルエンザウイルスに感染させ、多くのインフルエンザウイルスを攻撃可能な抗体を探し出しました。この抗体を、致命的な分量のインフルエンザウイルスを投与されたハツカネズミに与えたところ、60種類いたウイルスのうち、1種類をのぞくウイルスを倒すことができたとのこと。また、この残り1種類は、人間には感染しないタイプのインフルエンザウイルスだったそうです。

この研究はまだ早期の段階にあり、研究チームでは臨床試験に入る前に、より多くの実験を重ねたいと語っています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by logc_nt

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