「人工の月」を打ち上げて夜間の都市を照らす計画が進行中
by Robert Wiedemann
民間の航空宇宙会社であるChengdu Aerospace Science and Technology Microelectronics System Research(CASC)が、中国西部の都市である成都市を、街灯ではなく人工的に作った月で照らすという驚くべき計画を進めています。
Chinese city 'plans to launch artificial moon to replace streetlights' | Cities | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2018/oct/17/chinese-city-plans-to-launch-artificial-moon-to-replace-streetlights
This Chinese City Wants to Launch an 'Artificial Moon' to Replace Street Lights
https://www.sciencealert.com/chinese-city-planning-artificial-moon-to-light-up-streets-at-night
CASCのウー・チュンフェン会長によると、成都での街灯に使用される電気代を節約するために、人工的に作られた月を打ち上げる計画を進行中であるとのこと。打ち上げられた人工月は地球上のエネルギーではなく太陽光を反射して成都を照らすことになるそうです。
人工月は本物の月のように巨大な球状の物体である必要はなく、地上では薄い板のような形状になるとのこと。これを打ち上げるとソーラーパネルのような翼が開き、特殊な反射コーティングを施された板が太陽光を直接反射し、成都まで光を届けてくれるそうです。人工月は地上の直径10~80kmのエリアを照らすことが可能で、数十メートル単位で照明位置を制御することも可能とのこと。
by Kristine Weilert
チェンフェン会長によると、人工月のテストはすでに数年前から始まっており、衛星として2020年の打ち上げが計画されています。ただし、海外メディアのThe Guardianは「この計画を成都市や中国政府が支持しているかどうかは不明」と記しています。
実際に人工月で街の灯りを代用しようとする例は今回が初めてですが、2013年にはノルウェーのリューカンという街で、3台の大型コンピューターに制御された鏡が太陽の動きを追跡して街中に光を反射させるというプロジェクトが行われました。鏡の反射を使って暗い街中を照らす様子は以下のムービーで見られます。
Giant mirrors reflect sunshine into dark Norway town of Rjukan - YouTube
さらに、1990年代にはロシアの天文学者とエンジニアによるチームが、宇宙に打ち上げた衛星で太陽の光を反射させて地球に戻すことに成功しています。この「Znamya」とよばれる実験について報じた New York Timesは、「満月の光と同等のものを地球上に照射し、照明として利用可能かどうかをテストするためだった」と記しており、このコンセプトは人工月と同じです。
その後、Znamyaを開発したチームは進化版の試作機である「Znamya 2.5」の打ち上げを計画したものの、打ち上げに失敗。その後、プロジェクトは資金調達に失敗し、最終的に太陽光を反射させて地上の照明として使うプロジェクトは中止となっていました。
なお、ハルビン工科大学宇宙科学院の理事長であるカン・ウェイミン氏は、「衛星(人工月)の光は夕暮れのような光であると説明されており、これが動物の生態系を乱すようなことはないはずだ」とコメントしています。
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