サイエンス

「SpaceXの人工衛星が明るすぎて宇宙研究を破壊してしまう」という懸念


AmazonGoogleSpaceXといった民間企業が宇宙事業に進出していますが、技術に規制が追いついておらず、宇宙ゴミ「スペースデブリ」の問題など、懸念点も多く残されています。その1つとして「SpaceXが打ち上げた人工衛星が明るすぎる」という問題が挙げられ、世界中の天文学者が「宇宙研究の脅威になる」として解決策に頭を抱えています。

SpaceX tests black satellite to reduce ‘megaconstellation’ threat to astronomy
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00041-4

SpaceX, astronomers working to address brightness of Starlink satellites - SpaceNews.com
https://spacenews.com/spacex-astronomers-working-to-address-brightness-of-starlink-satellites/

宇宙開発企業のSpaceXは2019年5月27日に、「人工衛星を打ち上げて巨大な通信網を作り出す」というStarlinkプロジェクトの一環として、60基の人工衛星を打ち上げました

STARLINK MISSION | SpaceX
https://www.spacex.com/webcast


打ち上げは成功したのですが、人工衛星が発する光が余りにも明るかったため、その後、多くの科学者が「科学研究に影響が出る」と苦言を呈しました。SpaceXはこれを受け、2020年1月6日付で打ち上げを行った新たな人工衛星60基のうち1基を黒く塗装するという実験を行っています。

SpaceXのヴァイスプレジデントであるパトリシア・クーパー氏によると、人工衛星が明るく輝いてしまう理由は複数の要素が考えられるとのこと。まずStarlinkは宇宙待機軌道の低い位置で放出された時と、衛星群がそれぞれソーラーパネルを展開する時に反射の関係で明るさが増します。そして高度550kmの運用軌道に達すると実視等級が約5程度になり、肉眼でも確認できるほどの明るさになるとのこと。また、望遠鏡がとらえる範囲を衛星が横切るスピードも関係し、速度が遅いほど画像になった時の輝度が増してしまう点も指摘されています。

ローウェル天文台によって撮影されたStarlinkの写真がこれ。画像中に走る斜線がStarlinkの光跡となっています。


衛星がさまざまな望遠鏡に与える影響と、その回避法について、既に多くの天文学者が議論しています。ミシガン大学の天文学者であるパトリック・セイザー氏は「衛星のメガコンステレーションは地球の軌道上にある99%の物質よりも明るい可能性がある」と指摘しており、カリフォルニア大学デイビス校の天文学者トニー・タイソン氏は「この問題に頭を悩ませて夜も眠れない」と漏らしています。

計算によると、Starlinkの明るさの影響が最も大きくなるのは夜明けと夕暮れとのこと。このため、夜明けに観察する必要がある地球に近い小惑星などは、調査に大きな影響が及ぶとみられています。チリに設置が予定されている大型シノプティック・サーベイ望遠鏡は、2022年以降、その後10年にわたって3日ごとに空全体を広範囲で撮影する予定ですが、これも大きな影響を受ける可能性があります。

タイソン氏の研究チームは人工衛星の軌跡を予測して電気の光を取り除くソフトウェアの修正に取り掛かっていますが、「全てを取り除くのは非常に難しく、システムエラーについても懸念が残っています」と語っています。人工衛星が通る位置をあらかじめ知っていれば、人工衛星がある時間はその場所以外を撮影することで「人工衛星を含まない写真」を撮影することができますが、人工衛星の数が増加すれば、それも実現不可能です。なお、SpaceXは最終的に4000基以上の人工衛星を打ち上げる予定です。


このため1月6日に打ち上げられた人工衛星の1つについて、「黒く塗られる」という試みが行われたわけです。黒く塗られた人工衛星は「DarkSat」と呼ばれ、光の錯乱・反射を抑えてくれるものとみられています。DarkSatは既に地球の軌道上にのっていますが、運用軌道に乗るのは2月後半以降だと考えられており、その効果を確認するには時間がかかる予定です。

なお、記事作成時点では人工衛星の明るさを取り締まる法律は存在しません。SpaceXは、機体を黒く塗るほか、打ち上げ軌道も必要に応じて調整することも明らかにしています

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in サイエンス, Posted by logq_fa

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