匿名通信技術「Tor」専用のSIMカードをISPがベータテスト中
by Alexandru Zdrobău
一般的なスマートフォンや携帯電話で通話機能やモバイルネットワーク通信機能を使うためには「SIMカード」が必須。現在、イギリスのISPが、匿名通信技術である「Tor」経由でのみネットワークに接続する専用SIMカードを開発し、ベータテストを行っているそうです。
This SIM Card Forces all of Your Mobile Data Through Tor - Motherboard
https://motherboard.vice.com/en_us/article/d3qqj7/sim-card-forces-data-through-tor-brass-horn-communications
IT系ニュースサイト・Motherboardは、イギリスの草の根ISP・Brass Horn Communicationsとのオンラインチャットの中で、Brass Horn CommunicationsがTor専用SIMカードを開発し、現在、ベータテストを行っているという情報を得ました。
「Tor(トーア)」とは、通常ならば記録されるアクセス元のIPアドレスを残さないことで、「誰がウェブサイトにアクセスしたのか」といった情報を知られることなく匿名で通信できる技術、およびその技術を使うためのソフトウェアのことです。どういった仕組みなのかは、以下の記事を参考にしてください。
匿名通信「Tor」はどういう仕組みなのか分かりやすく解説 - GIGAZINE
Brass Horn Communicationsは、もともとエドワード・スノーデン氏が暴露したような世界規模の「盗聴」に対抗するため、「TorベースのISP」として誕生したサービスです。Torには、PCからならブラウザソフト、Androidなら「Orbot」アプリで接続できるので、これまでもスマートフォンでTorを利用することは可能でした。しかし問題は、「Torブラウザを起動しつつ、別に通信が発生するソフトを使っている」など、Tor経由ではないトラフィックが発生しうる点にあったとMotherboardは指摘。
これを解決するのが、Tor専用SIMカードだというわけです。実際、Brass Horn Communicationsを作ったGareth Llewelyn氏は「重要なのは『フェイルセーフ』です。Tor接続ではないときは、そもそも接続できないのです」と、その意義を語っています。
このTor専用SIMカードを使うには、Orbotを端末自体にインストールする必要があるとのことで、今のところサービスが提供されているのはイギリスのみ。
Googleのように、すべての情報を一元化して管理しようとするサービスがある一方で、徹底的に情報を漏らさない仕組みが存在しているというのは面白いところ。こうしたサービスを求める人の数は、思っているよりも多いのかもしれません。
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