サイエンス

ミクロの美しい世界をカメラで捉えるコンテスト「Nikon’s Small World」の2018年度受賞作品が発表


高性能なカメラでしか捉えることができないミクロの世界を、幻想的で美しく撮影した写真やムービーのコンテスト「Nikon's Small World」の2018年度上位作品が発表されました。いずれも非常に美しい出来栄えとなっており、人間の肉眼では見えないミクロの世界にはこんなに美しい光景が広がっているのかとうっとりする作品になっています。

Nikon’s Small World
https://www.nikonsmallworld.com/

写真部門の上位作品は、いずれも思わず息をのんでしまうようなミクロの世界を体感できる写真となっています。

◆写真部門1位:ゾウムシの目
2018年度の1位を獲得したのは、アラブ首長国連邦のYousef Al Habshi氏が撮影したゾウムシの目。上部にはゾウムシの複眼がぎっしりと並び、その周囲は緑色のうろこのような構造になっていることがはっきりとわかります。レンズの倍率は20倍とのこと。


◆写真部門2位:シダの胞子嚢
2位はシダ植物が個体を増やすために放出する胞子が詰まった胞子嚢を撮影した、パナマのカメラマンRogelio Moreno Gill氏の作品が獲得しました。カメラの倍率は10倍で、奇抜な色彩は人工的な蛍光マーカーによるものではなく、自家蛍光によるものだそうです。


◆写真部門3位:泡に閉じこもったアワフキムシの幼虫
Saulius Gugis氏が多焦点合成を用いてアメリカのイリノイ州で撮影した、カメムシ目の昆虫であるアワフキムシが泡の中に閉じこもっている写真が第3位となりました。アワフキムシの幼虫は、排泄物を泡立たせて最終的には白く泡だった粘度の高い塊にして、その泡の塊を巣にして暮らします。カメラの倍率は5倍です。


◆写真部門4位:クジャクの羽
第4位にはトルコのCan Tunçer氏が撮影したクジャクの羽のアップがランクイン。遠目に見ても美しいクジャクの羽ですが、近寄ると非常に小さな毛が繊細に重なり合い、美しい色合いを生み出していることがよくわかります。


◆写真部門5位:オオヒメグモの胚
人家に一般的に見られるクモの一種であるオオヒメグモの胚を着色した、ハーバード大学のTessa Montague氏が撮影した写真が5位を獲得。表面をピンク、細胞核を青色、細胞中に見いだされる管状の構造である微小管を緑色に着色し、倍率20倍で撮影しています。


◆写真部門6位:網膜の中心窩
フランス・パリの視覚研究所に務めるHanen Khabou氏が撮影した、網膜の中心窩を撮影した蛍光写真が6位になりました。中心窩は高精細な中心視野の視覚に寄与している部位です。倍率は40倍とのこと。


◆写真部門7位:人間の涙
7位にはジョンズ・ホプキンズ大学のNorm Barker氏が撮影した、人間の涙のしずくがランクイン。暗視野下で撮影した涙は、普段私たちが見ている涙とは全く違うもののように見えています。


◆写真部門8位:マンゴーゾウムシのポートレート
マンゴーに寄生するマンゴーゾウムシのポートレートを撮影した、オーストラリアのPia Scanlon氏の作品が8位に入賞しています。いかつい顔の中央部には2個の複眼があり、うろこのような構造で皮膚が覆われているのがはっきりと見えています。


◆写真部門9位:偽造防止シール
9位にはここまでで初の人工物がランクイン。ギリシャのHaris Antonopoulos氏が倍率10倍で撮影した偽造防止用のホログラムシールは、人工物ならではの精緻で規則正しい模様を形成していました。


◆写真部門10位:花粉のついた花柄
花や実を支えるための茎の部分「花柄」に花粉がたっぷりついた様子を撮影した、ハンガリーのCsaba Pintér氏の作品が写真部門10位を獲得。細かい毛の生えた表面に、無数の色鮮やかな花粉がまとわりついているのがよくわかります。


ムービー部門は以下のようなランキングになっています。

◆ムービー部門1位:ゼブラフィッシュの胚が成長していく様子
2018年度のムービー部門1位に輝いたのは、ゼブラフィッシュの胚で神経システムが成長していく様子を収めた、ウィスコンシン大学マディソン校のElizabeth M. Haynes氏とJiaye Henry He氏が撮影したムービー。ムービーは倍率10倍で撮影されており、網の目のような神経組織が成長していく様子は、生命の神秘を感じさせてくれます。

2018 Nikon Small World in Motion Competition - First Place


◆ムービー部門2位:石けんの膜にレーザー光を当てた様子
第2位には、イスラエルの研究者であるMiguel A. Bandres氏とAnatoly Patsyk氏が撮影した、レーザー光を石けんの膜に当てたムービーがランクインしました。緑色のレーザー光が石けんのうねりによって曲がったり分岐したりして、ウネウネと形を変えている様子がはっきりと捉えられているムービーです。

2018 Nikon Small World in Motion Competition - Second Place


◆ムービー部門3位:多毛類の一種であるシリスを捉えたムービー
多毛類に属するシリスという環形動物が動く様子を捉えた、Rafael Martin-Ledo氏のムービーが3位を獲得。大きな黒い目をしたシリスがくねくねと動く様子からは、どこかユーモラスな雰囲気を感じます。

2018 Nikon Small World in Motion Competition - Third Place


◆ムービー部門4位:ミジンコの赤ちゃんが生まれる瞬間
オランダのWim van Egmond氏が撮影した、ミジンコの赤ちゃんが親から生まれる瞬間のムービーが4位となっています。ミジンコは胎生で赤ちゃんを産む場合があり、そのような時にこうして母親のお腹から赤ちゃんが生まれる様子を撮影可能だとのこと。

2018 Nikon Small World in Motion Competition - Fourth Place


◆ムービー部門5位:リンパ球のアクチンが活動する様子
ムービー部門第5位に輝いたのは、アメリカ国立衛生研究所に務めるJia Chao Wang氏が倍率60倍で撮影した、マウスのリンパ球においてアクチンが活動する様子を捉えたムービー。非常に小さな細胞内でも、驚くほど躍動的な光景が広がっていることを思い起こさせてくれます。

2018 Nikon Small World in Motion Competition - Fifth Place


なお、ここまでに紹介したものがコンテストで入賞した全ての作品というわけではなく、写真部門には合計109枚、ムービー部門には合計26本もの作品がランクインしています。全ての作品は、「Nikon's Small World」の公式サイトから見ることが可能です。

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in サイエンス,   生き物,   動画, Posted by log1h_ik

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