子どもの前に立ちはだかる苦難をすべて解決しようとする「芝刈り機ペアレンツ」の問題点とは?
アメリカやカナダでは、子どもが成長して社会人になっても過剰に干渉し、子どもの言動すべてに介入する「Helicopter Parent(ヘリコプターペアレンツ)」と呼ばれる親が増えているといわれています。近年、ここからさらに一歩発展した「Lawnmower Parent(芝刈り機ペアレンツ)」という概念が生まれていると報じられています。
Lawnmower Parents Are the New Helicopter Parents
https://www.weareteachers.com/lawnmower-parents/
Meet the lawnmower parent, the new helicopter parents
https://www.usatoday.com/story/life/allthemoms/2018/09/19/meet-lawnmower-parent-new-helicopter-parents-types-parents-tiger-attachment/1347358002/
「ヘリコプターペアレンツ」は「自分の管理下に子どもを置きたがる親」のことで、「子どもの上を常に飛び回って、その行動を監視している」という過保護ぶりを揶揄(やゆ)した呼び名です。子どもが自分で考えて選択できる年齢になっても、子離れできない親が子どもの行動を制限するため、子どもは精神的・社会的な成長が遅れてしまうという弊害が生まれ、アメリカやカナダでも社会問題となっています。
by Greg Williams
そして、この「ヘリコプターペアレンツ」からより一歩進んだ「芝刈り機ペアレンツ」という言葉も登場しました。「芝刈り機」には「子どもが苦難(芝生)に足を踏み入れる前にすべて刈り取ってしまう」という過保護な親の行動を揶揄(やゆ)する意味合いが込められています。
by Jeff Wandasiewicz
そんな「芝刈り機ペアレンツ」の一例として、アメリカの教育情報サイト「WeAreTeachers.com」への匿名の投稿が話題となりました。
教師として働く投稿者は、担当している生徒の保護者から渡したいものがあると、電話で呼び出しがあったとのこと。「ぜんそくの吸入器か未払いの給食費かだろうか?」と考えながら、投稿者は事務室に向かいました。すると、仕事中だったのか、ビジネススーツに身を包んだ保護者は、子どもが持つにはかなり高級な水筒を差し出して「子どもが『水筒が欲しい』とメールを送ってきました。私は『学校には水飲み場がないの?』と返信したんですが、子どもが取り返しのつかない事態になったのかもしれないと考えました」と語ったそうです。
学校に電話をかけてまで子どもに水筒を渡したがる保護者に対して、投稿者は「お子さんはティーンエイジャーですよね?マジで?」と返しそうになりましたが、ぐっとこらえて「私も同じものを愛用していますよ」と大人な対応を見せたとのこと。それでも、投稿者は「それはひょっとしてマジで言ってるのか?」と保護者に目で訴えかけていたそうです。
投稿者は「最小限の苦労しか経験させないということが、子どもたちにとってより幸せなことであるとは限りません」と述べ、自分たちが教育している世代の子どもたちは、苦難に立ち向かう時に何をすべきかを考えられず、ちょっとした失敗でパニックになったりシャットダウンするような大人になるだろうと指摘しています。
by amenclinicsphotos ac
また、デュケイン大学薬学部のカレン・ファンチャー助教授は、自身のブログで、娘と同伴で大学にやってきて授業スケジュールに苦情を入れてきた「芝刈り機ペアレンツ」について語っています。ファンチャー助教授は、子どもの問題を親がすべて解決してしまう「芝刈り機型」の育児スタイルでは、子どもが自分で物事を成し遂げられなくなってしまうため、子どもの成長に永続的な悪影響を及ぼすと警告しています。
WeAreTeachers.comの編集長であるハンナ・ハドソン氏は、この他にも「高校生になる子どもが授業に遅刻しないように、迎えに来て学校へ連れて行くように教師へ要求する親」「『食堂のランチが熱すぎて子どもが食べられないので、誰かフーフーと息を吹きかけて冷ましてあげてほしい』とメールで依頼する親」「既に子どもが一人で手続きできる年齢だというのに、子どものために再テストの日程を組むよう電話で要求する親」など、投稿された「芝刈り機ペアレンツ」のエピソードの一部を紹介しています。
ハドソン氏は、「子どもへの正当な手助け」と「芝刈り機のような過保護」の違いを見極めるのは非常に難しいと述べ、「子どもが成功するために手助けをする親の意志は賞賛され、理解できます。問題なのは、子どもの前に立ちはだかる苦難をすべて排除するための親の努力が、結果として子どもを経験不足にし、必然的に子どもの人生を台無しにしていることです」と語っています。
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