Amazonのジェフ・ベゾスがついにロケットエンジンの販売もスタート

Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏が率いる、プライベートなロケット開発企業の「Blue Origin」が、ロケット開発メーカーへのロケットエンジン供給契約を勝ち取りました。エンジン供給コンペで負かした相手はアメリカ空軍御用達の老舗Aerojet Rocketdyneということで、ロケット産業にとって歴史的な出来事だという指摘があります。

Amazon’s Jeff Bezos will now sell rocket engines, too | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2018/09/amazons-jeff-bezos-will-now-sell-rocket-engines-too/

United Launch Allianceは、新開発するロケット「Vulcan Centaur」に搭載するロケットエンジンについて、Blue Originが開発する「BE-4」を採用することを正式に発表しました。これまでUnited Launch Allianceにロケットエンジンを供給してきたアメリカで最も歴史のあるロケットエンジンメーカーAerojet Rocketdyneを、新興企業のBlue Originが打ち破ったとして話題になっています。

BE-4はロケット燃料にメタンを使用しており、推進力自体もスペースシャトルの主エンジンより25％も強力ということで航空宇宙業界から注目を集めています。Blue Originのボブ・スミスCEOは、「United Launch AllianceがBE-4エンジンを選んだことを非常にうれしく思っています。United Launch Allianceは国家安全保障ミッションを受け持つロケット打ち上げサービスプロバイダーであり、我々のチームがその任務の一翼を担うことを喜んでいます」と述べています。

また、United Launch Allianceのトリー・ブルーノ氏は「Blue Originとの提携に満足しており、次世代ロケットの初飛行の成功を楽しみにしています」と述べ、BE-4を搭載するVulcanロケットが2020年中期に初飛行を行う計画が順調に進んでいることを明らかにしています。

Blue Originがロケットエンジンの供給競争を勝ち抜いたのは、BE-4が性能だけでなくコスト面でも優れているからとみられています。例えば、Aerojet RocketdyneからロケットエンジンAR1の供給を受けるアメリカ空軍は、エンジン開発費用の大半を負担しています。これに対してBlue Originのジェフ・ベゾス氏は、ロケットエンジン開発費用の負担をロケットメーカーに求めておらず、ロケット開発者にとってコスト面でも大きなメリットがあるというわけです。

なお、コンペに敗れたAerojet Rocketdyneは、United Launch Allianceがアメリカ空軍との間で幅広いロケット打ち上げ契約を結んでおり、実績のないBE-4を採用することは国家安全保障上の問題があるとして、ロケットエンジン供給契約の見直しを求めて国会議員に対してロビー活動を行っているそうです。

かつては、アメリカの航空宇宙産業でのロケットエンジンの供給契約コンペでは、費用対効果が半ば度外視される形でAerojet Rocketdyneが勝者となってきたという歴史があったとのこと。しかし、Falcon 9を開発しNASAとの国際宇宙ステーションへの物資輸送契約を勝ち取ったSpaceXの登場によって、老舗企業が採用されるという伝統は、変容しつつあります。United Launch AllianceがAerojet RocketdyneではなくBlue Originを選んだことは、今後の航空宇宙産業の変化を象徴する出来事になる可能性があります。