「あなたは自分が思うより人に好かれている」と研究結果で示される
by rawpixel
初対面の人と会話する時に相手の反応が気になったり、拒絶が怖くて会話に入れないという経験をしたことがある人は多いはず。新たな研究で、人は「相手はどのくらい自分を好きか」ということについて過小評価をする傾向があり、自分が考えているよりも相手は自分を好いてくれている可能性が示されました。
The Liking Gap in Conversations: Do People Like Us More Than We Think? - Erica J. Boothby, Gus Cooney, Gillian M. Sandstrom, Margaret S. Clark, 2018
http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0956797618783714
You probably made a better first impression than you think
https://medicalxpress.com/news/2018-09-you-probably-made-a-better.html
People Like You More Than You Know - Scientific American Blog Network
https://blogs.scientificamerican.com/illusion-chasers/people-like-you-more-than-you-know/
コーネル大学で心理学や行動経済学について研究を行う博士研究員のErica Boothby氏らによる研究チームは、5つの研究を行った結果、「会話相手が自分をどう思っているのか」ということについて本人と相手の間にギャップが生じていると結論を出しました。知らない人と会話を持った時に、相手は会話を楽しんでいるのに、自分はそのことに気づかないという現象を、研究者らは「認知の錯覚」と呼んでいます。
5つのうちの研究の1つでは、研究者は初対面の被験者をペアにし、「出身は?」「趣味は?」といった緊張を和らげるための典型的な質問を行ってもらいました。そして、被験者は会話の終わりに「あなたは会話相手のことをどのくらい好きになりましたか?」「会話相手は自分のことをどのくらい好きになったと思いますか?」ということを評価しました。
この結果、平均的に見て、「相手が自分のことをどのくらい好きか」という自己評価は「実際に相手が自分をどのくらい好きか」という評価よりも低くなったとのこと。これは、被験者が「相手が自分をどのくらい好きか」ということについて予測間違いをしていることを意味します。実際に会話の様子を録画した映像を分析しても、被験者は相手の「興味」や「楽しさ」を示す振る舞いを考慮していないことがわかるとのこと。別の研究では、人は相手との会話において生じたネガティブな瞬間から「相手が自分をどのくらい好きか」という考えが作られると信じる傾向にあることが示されました。
by Kelsey Chance
また、このような認知の錯覚は、長い会話の有無や、現実世界のシチュエーションに左右されることなく発生することもわかっています。実際に大学生のルームメイトを被験者とした研究で観測された認知の錯覚は、その後、数カ月間も消えることがなかったそうです。
これまでに行われた研究で「ろくでもない危険な運転をするドライバーほど無自覚である」ことが示されているように、人は基本的に運転技術や知能といったさまざまな点で自分の能力を過信する傾向にあります。今回の研究の興味深いところは、人は能力を過信する傾向があるにも関わらず、「相手が自分をどう思うのか」という点については過小評価しがちだという、対照的な結果が得られた点です。
「社会的な相互関係や会話になると、人は遠慮がちになり、自分が相手にどのような印象を残しているのかに確信が持てず、自分のパフォーマンスに対して過度に批判的になります」「他の分野の多くで人は楽観的であるのに対し、会話については悲観的であるということは驚きでした」と研究者は語ります。
研究者は、「相手が存在するかどうか」が自己評価に影響を及ぼしているのではないかと仮説を立てています。これはつまり、会話相手という他者が関係するとき、人は自分を評価する人が誰もいない時よりも慎重になり、自分に批判的になるのではないか、という仮説です。「私たちは自己保護のため悲観的になり、『相手が自分のことを好き』ということが事実だとわかるまで、相手が自分を好きだとは考えたくないのです」と研究者は述べています。
by Pablo Heimplatz
ただし、このような自分監視は、本当に自分を好いてくれている人を遠ざけてしまう可能性もあります。「隣人と近づいた時や新しい友情を築こうとする時、あるいは新しい同僚に好印象を与えたい時に、相手が自分をどう思っているのかを知る必要があります」「私たちの思考におけるシステムエラーは個人的・職業的な生活において大きな影響を与えてしまうかもしれません」と研究者は述べました。
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