「猫の楽園」を科学の発展のために作ってしまった大学
by Jan-Mallander
猫の避妊ワクチンについて研究するイリノイ大学の研究者が、「より野生の環境を再現したい」ということにこだわり続けた結果、オモチャや本物の木、ボールピットなどが備わった「猫の楽園」を大学の研究施設内に作り上げました。
Researchers Built a Cat Paradise for Science - Motherboard
https://motherboard.vice.com/en_us/article/bjbkam/researchers-built-a-cat-paradise-for-science
Illinois study pioneers humane feline research facility | EurekAlert! Science News
https://eurekalert.org/pub_releases/2018-08/uoic-isp082118.php
Hybrid model intermediate between a laboratory and field study: A humane paradigm shift in feline research - Amy Fischer, Valerie AW Benka, Joyce R Briggs, Joanne Maki, Kevin N Morris, Kayla A Myers, Linda Rhodes, George Robert Weedon, Julie K Levy, 2018
http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1098612X18791872
これが科学研究のために作られた「猫の楽園」。室内なのに大きな木が生えており、複数のカウチ、つめ研ぎ、多数のオモチャが散らばる部屋には35匹の猫が暮らしています。
猫の楽園を作り出したのはイリノイ大学の研究者たち。研究者の目的は猫用の避妊薬を開発するということにありました。野生の猫の個体数を減らすために猫に不妊治療を行う方法は効果的ですが、手術は侵襲性であり、費用が高くなってしまうことも問題に挙げられています。これまでの研究で「GonaCon」と呼ばれる注射タイプの避妊ワクチンが「ホ乳類の数の調整に効果的」だとラボ内で示されましたが、野生環境で効果があるのかどうかをテストするのは難しいと考えられてきました。
この問題を解決するために作られたのが、「猫の楽園」。この施設は、野生で暮らしてきた猫が、野生のままの行動を取り、既存の研究施設よりも自然に近い状態で暮らせるようになっています。
研究を行ったAmy Fischer氏は「多くの施設が動物にとってよい研究環境を作ろうとしてきましたが、多くがまだ豊かさとは無縁の小さな柵で囲まれています」と語ります。Fischer氏のラボで暮らす猫は35匹で、うち30匹はメス。全ての猫は地元のアニマルシェルターから連れてこられたとのことです。
研究対象となる猫はラボで育てられることが多いので、「アニマルシェルターから引き取る」という方法もイレギュラーなもの。これも、「野生の環境で暮らす猫に対してワクチンが効くのか」ということを正しく理解するという、科学研究のゴールのための決断です。
ラボにおいてワクチン摂取を受けた20匹の雌猫が5匹の雄猫と共に暮らしたところ、数カ月後には12匹が妊娠。ワクチン接種から1年で合計14匹の猫が妊娠しました。野生に近い状態で実験したところ、効果があるとみられていたGonaConは猫の数をコントロールするのにあまり効果的ではないことが判明したとのことです。
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