メモ

エネルギーの自給自足を行う「マイクログリッド」はやり方によっては高い電力自給率を実現する


日常生活の中で使う「電力」は、火力・水力・原子力・風力などいろいろなリソースをもとに、生活の場から離れたところに建設された発電所で集中的に生み出され、送電線を経由して供給されています。これに対して、小規模発電施設を生活の場の近くに作って電力需要を賄うのが「マイクログリッド(小規模発電網)」です。この「マイクログリッド」をうまく構築すれば、地域の電力需要のほとんどを自給自足で賄うことすらできるそうです。

New Strategies For Smart Integrated Decentralised Energy Systems
(PDFファイル)https://www.metabolic.nl/wp-content/uploads/2018/08/SIDE_SystemsReport-1.pdf


Metabolic How SIDE systems can unlock an energy revolution
https://www.metabolic.nl/how-side-systems-can-unlock-an-energy-revolution/

Decentralized Microgridding Can Provide 90% of a Neighborhood's Energy Needs, Study Finds - Motherboard
https://motherboard.vice.com/en_us/article/vbngmd/decentralized-microgridding-can-provide-90-of-a-neighborhoods-energy-needs-study-finds

このレポートは、「持続可能性」の課題に取り組むベンチャー企業・Metabolicの技術者・フローリン・デ・グラーフ氏が、「SIDEシステム」と呼ばれるシステムが再生可能エネルギーへの移行にどのように貢献しうるかを調査したもの。

「SIDE」は「Smart Integrated Decentralised Energy」(スマート統合分散型エネルギー)の頭文字を取ったもので、それぞれ定義は以下の通り。
Smart:地域のエネルギー制御システムによって知的に管理されること
Integrated:各構成要素の相乗効果を最大限にすること
Decentralised:システムが地方レベルで作動し、明確なシステムの境界線が存在すること
Energy:持続可能な技術によって供給される熱と電力系統

レポートの中では、4つの地域に対して、それぞれ複数のSIDEシステム導入シミュレーションのパターンが示されています。


たとえば、オランダ東部にある「Aardehuizen」に対しては、3つのシナリオが示されています。Aardehuizenは23軒の住宅からなる地区で、ここにある住宅はみな、建築家のマイケル・レイノルズ氏が提唱する、電力会社の送電網に頼らないオフグリッド住宅「アースシップ」で、2015年に完成しました。

シナリオは「1:ローテクとハイテクの出会い」「2:よりスマートなグリッド」「3:根本的なリデザイン」の3つ。

シナリオ1の場合、地域全体にソーラーパネルが275枚、太陽熱発電パネルが20枚、ヒートポンプが3基、薪ストーブが22基、電気ボイラーが22基設置されます。


地域内のエネルギーの動きを示した図は、左側が供給元、右側が供給先を示しています。完全に自給自足というわけではなく、送電網から73.2メガワット時の供給を受けており、地域内では太陽光発電で76.4メガワット時を生み出しています。このうち、82.4メガワット時が最低限維持されるベースロードとなり、一方で41.7メガワット時は売電に回されることになります。


これは経年コストを比較したグラフ。斜めに引かれたグレーの直線が従来のシステム、緑色のラインがシナリオ1で、縦軸は1目盛りが100万ユーロ(約1億3000万円)、横軸は年数を示しています。シナリオ1の場合、11.6年で元が取れる(従来のシステムのコストに並ぶ)見込み。


必要電力量は107.9メガワット時、生産する電力量は76.4メガワット時。自給率としては32.2%です。


シナリオ2では、スマートメーターを設置して、もっと積極的なモニタリングを実施するなどの変更が加えられています。


エネルギーの流れも変化。ソーラーパネルを増やしたことで、太陽光発電による生産量が136.8メガワット時に増加。これに合わせて、19.5メガワット時を蓄えるバッテリーも設置されました。


シナリオ2の場合、初期投資がかなり大きくなるため、その後の省エネ効果があっても、投資の回収には16.5年ほどかかる見込み。


電力自給率は45.1%。


シナリオ3は、できるだけ自給率を高めることを目指したもので、小型のコジェネレーションシステムも導入することで、発電をカバーしています。コジェネレーションシステムは熱電併給とも訳されるように、発電時の廃熱を冷暖房に生かしてエネルギー効率を高めます。


このシナリオ3のエネルギーの流れは、ほぼコジェネレーションシステム中心といえます。


投資回収はわずか8.5年の見込み。


電力自給率は実に89.3%という高さです。


オランダ政府はパリ合意のもと、2050年までに二酸化炭素の排出量を80%~95%削減すると約束しており、その実現には相当な努力が必要となりますが、エネルギーを自給自足するマイクログリッドを適切に導入することで、インフラ整備にかかる支出を抑えることができると期待されています。

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in メモ, Posted by logc_nt

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