サイエンス

自殺リスクを脳のスキャン画像とAIの組み合わせで判定する研究が進行中


人が頭の中で考えていることは外からは見ることができず、仮に相手が「自殺」について考えていたとしてもそれを知る手がかりはほとんどありません。そんな課題を解決すべく、脳の働きを視覚化するfMRIとAIによる画像認識技術を組み合わせることで対象者の「自殺リスク」の特定に役立てようとする研究が進められています。

A Brain Scan Could Help Reveal if a Person is a Suicide Risk | Digital Trends
https://www.digitaltrends.com/cool-tech/brain-scan-suicide-risk/

この研究は、アメリカのカーネギーメロン大学とピッツバーグ大学の研究チームが進めているもの。研究チームは、最先端の技術を用いるためにアメリカ国立精神衛生研究所(NIMH)から380万ドル(約4億2000万円)の助成金を授与されており、臨床医が自殺の兆候を持つ対象者を発見し、処置を可能にするための技術の研究に取り組んでいます。

研究チームが着目したのは、「人が自殺に関連することや感情的な概念を考えている時に生じる脳の活性化パターンの違い」というポイントです。自殺の傾向がある人とない人では、「death(死)」や「cruelty(残酷さ)」「trouble(問題)」「carefree(心配がない)」「good(良い)」「praise(称賛)」などの言葉を口にした時に頭の中が活性化する部位のパターンに差異が存在しており、その様子をfMRIで測定し、機械学習を使って自殺リスクを判定するというものです。


この研究はまだ初期段階にありますが、機械学習アルゴリズム(Gaussian Naive Bayes)を用いて自殺リスクのある人物を91%の精度で判定するに成功するなど、良好な結果が示されているとのこと。

Machine learning of neural representations of suicide and emotion concepts identifies suicidal youth | Nature Human Behaviour
https://www.nature.com/articles/s41562-017-0234-y


研究に携わるピッツバーグ大学のデビッド・ブレント教授は、「最初の研究は比較的小規模で、自殺傾向のない被験者はおらず、しかもある一時点における状況を調査する横断的なものでした」と述べていますが、今後の展望についても「この研究はもっと規模を拡大し、神経信号の変動が自殺傾向の変動に関連するのかどうかを確認するための手順を繰り返すことで、将来的な自殺リスクを予測できるかどうかの確認を行います。さらに、周辺的な計測を行う手法の開発と測定を行うことで、fMRIを用いることなく測定できる方法の開発を目指します」と述べています。

この手法が確立されると、今は被験者の自己申告に頼っている自殺リスクの判定をより客観的な方法で行うことが可能になるとみられています。また同時に、自殺リスクのある人が「死」というものについてどのように考えているのかを明らかにすることで、心理療法をより正確に導くために活用されることが期待されています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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