メモ

AmazonやeBayで横行する中国人セラーによる「VAT逃れ」問題とは?


EU諸国では商品販売時に商品価格に上乗せする形で付加価値税(VAT)が徴収されるのが一般的です。しかし、オンラインショッピングのAmazonやeBayでは、VATを価格に含ませないで販売する中国人セラーが多数おり、EU諸国は数千億円規模の税金を取り損ねています。

How Amazon and eBay became a tax haven for Chinese sellers - The Verge
https://www.theverge.com/2018/9/4/17796118/amazon-ebay-chinese-sellers-tax-fraud-haven

ドイツ在住のミハエルさん(仮名)は、2018年8月にドイツのAmazon(Amazon.de)で8.99ユーロ(約1200円)の商品を購入しました。プライム会員のミハエルさんは送料も無料で商品を安く購入でき非常に満足していましたが、商品に同封されているはずの領収書兼納品書が入っていませんでした。そこで、Cseeinという名の売り手に問い合わせて納品書を取り寄せましたが、一般的な価格表記とは異なることに気づきました。


通常、EU圏内で商品をオンラインで購入した場合、請求書には商品の価格、VATの金額、合計額(支払額)の3つが表記されるものですが、Cseeinの納品書にはVATの記載がなく、VATの識別番号もなかったとのこと。これは、CseeinがVATを徴収しておらず、すなわちEUにVATを納付していないことを疑わせるものでした。なお、Cseeinの納品書には中国・広東省の住所が記載されていたとのこと。

ドイツの法律事務所AWBのナタリー・ハークセン弁護士がCseeinに問い合わせたところ、「EUで販売している商品についてはすべてイギリスにVATを支払っています。すぐに承認されるはずです」との回答が返ってきたとのこと。ハークセン弁護士が推測するに、Cseeinは顧客からVATの還付に関する問い合わせを受けたと勘違いし、このような回答をよこしたのだろうとのこと。「彼らはEUの税法に関する知識がまったくないように思えます」とハークセン弁護士は話しています。

EUでは、商品の販売者には徴収したVATを報告し納付する義務が課せられています。これはAmazonなどのオンラインショッピングでも同様ですが、AmazonやeBayのマーケットプレイスで商品を販売する何千もの中国ベンダーでは、VATを支払わないケースが横行しているとのこと。

eコマース専門のコンサルタントのマルク・ステイア氏によると、Amazon.deには1万5000人の中国人販売者が登録しており、その3分の1がプロフィール欄に付加価値税登録番号(VAT番号)を明記していないとのこと。ステイア氏によると、たとえVAT番号が明示されていても無効なことも多いそうです。ステイア氏はAmazon.deだけでも約1万人の中国人セラーがVATの徴収・納付を行っていないと推測しています。そして、ドイツの連邦財務省によると、売り手がVATを徴収しない「VAT逃れ」が原因で、年間に数億ユーロ(数百億円)の税収が失われています。


中国人セラーがVATを徴収しないことはEU諸国の徴税にとって問題なだけでなく、EU圏内でのオンライン販売における公平性の点でも問題です。まっとうな販売者はオンライン販売であってもVAT込みの価格で商品を販売しているため、VAT抜きの価格で商品を販売する中国人バイヤーとの価格競争で太刀打ちできないという事態を招いています。AmazonやeBayで長年カバンを販売してきたマーティンさん(仮名)は、「かつてトイレ用の小バッグをAmazonのマーケットプレイスで1万個くらい売りました。それが、今では年に400個しか売れません」と述べ、VAT抜きで販売する中国人セラーとの競争で劣勢に立たされていると話しています。

マーティンさんのように不利益を被る販売者は、管理を怠ることでVAT逃れを許しているとして、AmazonやeBayなどのプラットフォームを提供する企業に対して批判の矛先を向けています。Vergeの問い合わせに対してAmazonは、VAT税制を順守するよう売り手に通知し、指導やツールの提供を行っていると回答したとのこと。売り手がVATに準拠していないとドイツの税務担当局からの通知があれば、速やかに口座の閉鎖を行うと、Amazon側でも対策に努めているそうです。

by Ben Mortimer

すでにイギリスでは、VAT逃れを撲滅しオンライン市場の公平性を取り戻すべく、AmazonやeBayなどのオンラインショッピング大手4社に対して行政指導を行うなど、本格的なVAT逃れ対策に乗り出しています。プラットフォーム側の管理強化やEU諸国の徴税強化によって、VAT逃れを働く中国セラーへの圧力は次第に高まっています。

しかし、中国最大のeコマース企業のAlibabaがEU圏で事業規模を拡大し続けていることから、中国セラーが"合法的"にVATフリー状態でEUでオンライン販売ができるようになる可能性もあることから、EU諸国の悩みは尽きないようです。

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in メモ,   ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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