ハードウェア

「プリント基板に印刷した超薄型モーター」はどのようにして作られたのか?


ソフトウェア開発者で電機系のエンジニアでもあるCarl Bugeja氏が、「プリント基板を利用した超薄型モーターを製作した」と語り、どのようにしてプリント基板を使ってモーターを作ったのかについて解説しています。

PCB Motor | Hackaday.io
https://hackaday.io/project/39494-pcb-motor

How to Print an Electric Motor - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/geek-life/hands-on/how-to-print-an-electric-motor

Bugeja氏は「超小型のドローンを作りたい」と考えたことをきっかけに、超小型モーターの開発をスタートしたとのこと。しかし、やがてBugeja氏は「ドローンの小型化には限界があり、その限界を作る原因はモーターにある」ということに気づいたと語ります。


モーターを使ってドローンを飛ばす以上、ドローンの部品にモーター自体の重さを加えた質量の物体を飛ばす能力を持つモーターが必要になります。そこでドローンに搭載するモーターの小型化には、モーター本体の重さがネックになると考えたBugeja氏は、どうにかしてモーターを少ない部品で構成し、質量を軽減できないかと考え始めました。

超小型モーター作りに取りかかったBugeja氏は、プリント基板上に銅で描いた導線を用いて作るマイクロストリップアンテナという平面アンテナの一種から着想を得て、「プリント基板の導線からモーターを回転させるのに必要な磁場を作り出せるのではないか?」と思ったとのこと。Bugeja氏はモーターの回転部に円盤状のローター(回転子)を使い、ローターを回転させるステーター(固定子)にプリント基板を使ったブラシレスモーターを作りました。

実際にBugeja氏が作ったモーターの様子は、以下のムービーから確認することができます。

Motor made from a PCB!


クルクルと回転する円盤。一見するとコマのようにも見えますが……


Bugeja氏が作ったれっきとしたブラシレスモーターです。


真ん中の棒がシャフト、黒い円盤がローター、緑色の土台がプリント基板で作られたステーターで、下部にベアリングがあります。


通常のモーターでは、磁力を発生させてローターを回転させるステーターにワイヤーを巻いたコイルを使用しますが……


Bugeja氏はコイルの代わりにプリント基板をステーターに使います。


プリント基板には6極のコイルが導線としてプリントされており、それが4層に積み重ねられています。プリント基板が1層ではローターを回転させるのに十分な磁力が得られなかったそうですが、薄いプリント基板を4層重ねることでモーターのステーターとして十分な磁力を確保することができたとのこと。


ステーターの上にのせられるローターには、永久磁石が埋め込まれていて……


ステーターと並行に設置されます。ローターは3Dプリンターで作られたもので、シャフトと連結するスナップフィットがローター自体と一体化しており、モーターを構成する部品をローター・永久磁石・ベアリング・プリント基板のみに削減することができました。


ステーターに電流を流すと磁場が発生し、ちゃんとローターが回転します。ローターの直径は16mmで、市販されている最小のブラシレスモーターと同じくらいだとのこと。


ブラシレスモーターでは、ローターを回転させ続けるために電流の方向を定期的に交代させる整流子を使わないため、通常は逆起電力を検知してローターの回転を制御する電子制御システムなどを使用します。このような電子制御システムは、ステーターのコイル内に発生する逆起電力を検知することでローターの回転をフィードバックとして受け取り、回転と電流方向を同期させる仕組みです。

しかし、Bugeja氏が作成したプリント基板を使用するブラシレスモーターでは逆起電力が弱すぎて、逆起電力を使用してローターの回転と電流方向を同期させることができなかったとのこと。そこで、Bugeja氏はモーターで発生する磁場の変化を直接測定し、ローターとその内部に埋め込まれた永久磁石がスピンしている速さを計測するセンサーを取り付けたとのこと。このセンサーにより、電子制御システムがローターの回転を検知し、電流を適切に同期させることに成功しました。

Bugeja氏が作ったモーターは、ローターのトルクが十分でないためドローンを飛ばすほどの力はないとのこと。しかし、従来のブラシレスモーターよりも非常に薄くて安い上に……


製造がより簡単だとのこと。


実際、Bugeja氏は特殊な器具を使うことなく、手作業で難なく超薄型のモーターを組み立てていました。


シャフトにプリント基板で作ったステーターを通し……


ローターに永久磁石を埋め込みます。


ローターもシャフトに通せば……


あっという間にブラシレスモーターの完成です。

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in ハードウェア,   サイエンス,   動画, Posted by log1h_ik

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