フィヨルドをトンネルと橋で通過するノルウェー史上最大の道路建設プロジェクト
ノルウェー南部にあるクリスチャンサンと中部ノルウェーの中心地・トロンハイムは「E39」という道路で結ばれていますが、この道路はフィヨルドの入り組んだノルウェー西岸を走るため、8カ所でフェリーによる連絡が行われています。これにより著しく利便性が損なわれているため、ノルウェーではフィヨルドを越える橋やトンネルの建設を行う国家規模のプロジェクトが進められています。中には、完成すれば世界最長・最深となるトンネルも含まれるとのこと。
Norway’s $47BN Coastal Highway
https://www.theb1m.com/video/norways-47bn-coastal-highway
以下のムービーでどのような計画が立てられているのかが把握できます。
Norway’s $47BN Coastal Highway | The B1M - YouTube
ノルウェー西部は氷河による浸食作用で深く沈み込んだフィヨルドが多数存在します。
「E39」はこのノルウェー西部を1100kmにわたって走る道路です。
しかし、フィヨルドの影響で、8カ所でフェリーによる連絡が行われており、全体の走破時間は21時間に及びます。図中、オレンジ色で書かれているのがフェリー連絡の行われているフィヨルドで、ここに順次、橋やトンネルが作られる予定です。
たとえば、南端のボクナフィヨルドの場合、総延長27km・深さ390mの海底トンネルが予定されています。
これは完成すれば世界最長・最深の海底トンネルになるもので、各2車線の上下線トンネルが並行して建設され、それぞれのトンネルは連絡路で結ばれます。
他に類を見ないトンネルになるということで、途中に待避所と緊急脱出口が設けられる予定。
また、中間部にあるクヴィストイ島に出入口が設けられます。
赤い印がついているのがクヴィストイ島、その右上を、左上から右下へ横切る点線が現行のフェリー航路です。
深さ600mのビョルネフィヨルドは全長5kmの橋で越える予定。
場所はこの辺り。
スラフィヨルドは深さ400m、幅4kmで、吊り橋か水中浮遊式トンネルのいずれかで検討が進められています。
吊り橋は主塔が2つのケースが多いのですが、スラフィヨルドの場合、両岸とフィヨルド中央の3カ所に主塔が設けられる予定。
水中浮遊式トンネルの場合は、フィヨルドを渡る橋のような形でトンネルを作ることになります。トンネルの形状はボクナフィヨルドに作られるものと同じく、上下線別で2車線ずつ。ただし、海底の岩盤内ではなくチューブ状のトンネルがフィヨルドに浮かぶ形となり、アンカーで海底に固定します。
難関は、世界最長・最深のフィヨルドであるソグネフィヨルド。岸から岸までどう結ぶかという問題なので、世界最長の全長204kmはそれほど影響がないにしても、深さが1308mもあるため海底トンネルを作ることはまず不可能。
また、大型船の航行のために幅400m・水面上70m・水面下20mの確保が必須条件です。
そこで、いくつかの案が検討されています。1つは「吊り橋」。
これは同じく吊り橋のように見えますが、フィヨルド上にアンカーで固定した主塔を設けた「浮遊橋」。
スラフィヨルドの主塔とは異なり、ソグネフィヨルドは深くて主塔を海底に直接アンカーで固定することができないため、両岸を結んだ足場の上に主塔を建てることになり、工学的な課題がとても多い方法になるそうです。
水中浮遊式トンネルの案もあります。
ただし、フィヨルド全体をトンネルで通過するのではなく、東京湾アクアラインのように、航路部分だけをトンネルにするという形です。
とにかく安全性と環境への配慮が必要であることから、この計画は世界中のインフラプロジェクトのモデルになるものとして注目を集めています。
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