「配車サービス規制法案」を止めるためUberやLyftが100万ドルの支援を提案するもニューヨーク市は拒否
アプリからタクシーやハイヤーの手配ができる配車サービスはここ数年で急増し、あまりに車の数が増えすぎてアメリカ・ニューヨーク市では交通が過密化していることが問題になっていました。タクシードライバーの支援や渋滞緩和のため、ニューヨーク市は配車サービスを規制する方針で、これに対してUberやLyftが「法案のカギとなる部分を削除するならば100万ドル(約1億1000万円)の支援を行う」と提案。しかし、ニューヨーク市がこれを拒否するという事態が起こっています。
Uber, ehail apps offer city council $100 million deal to drop regulation - NY Daily News
http://www.nydailynews.com/new-york/ny-metro-uber-lyft-medallion-fund-20180801-story.html
Uber and Lyft offered to bail out struggling taxi drivers, but New York City said no - The Verge
https://www.theverge.com/2018/8/1/17639656/uber-lyft-bailout-nyc-taxi-drivers-cap
Apps and caps: The City Council's bid to rein in Uber and Lyft gets it mostly right - NY Daily News
http://www.nydailynews.com/opinion/ny-edit-ride-share-20180730-story.html
Opinion | Stop Uber From Flooding New York - The New York Times
https://www.nytimes.com/2018/08/01/opinion/stop-uber-from-flooding-new-york.html
ニューヨークではイエローキャブと呼ばれるタクシーが街の「顔」にもなっているほどに有名ですが、近年はUberやLyftといった配車サービスが急成長し、街を走る自家用車の数が増加しています。これにより、ドライバーが新しい収入源を確保できたほか、利用者は余計な待ち時間を削ることができるなどメリットも多く発生しましたが、一方で、ドライバーの収益が増えてもアプリを使った配車サービスを提供する会社がドライバーの収益を持っていってしまうという問題や、市内の交通量が増えすぎるといった問題も起こっています。
またニューヨークタイムズによると、メトロポリタン・トランスポーテーション・オーソリティ(MTA)の統計で2017年の地下鉄の乗客数は2015年から2%減少したことが判明しており、この傾向は2018年に入っても継続しているとのこと。MTAのJoseph J. Lhota氏は乗客が減少した原因について、サービスの低下や不正乗車とともに、配車サービスの影響があるとみています。地下鉄とバスを合わせた2018年の街の収入は予測よりも5480万ドル(約61億円)少なく、今後、市の交通機関にかける予算が圧迫される可能性も考えられます。
そんななか、2018年7月初頭にはニューヨーク市のタクシーを規制する団体「The Taxi and Limousine Commission(TLC)」が、Uber・Lyft・Juno・Viaという配車サービス4社のドライバーの最低賃金を17.22ドル(約1900円)にすることを提案。これは「各社がドライバーの数を減らして競争を減らせば、それぞれのドライバーに対する賃金を上げる」ということが最新の報告書で示されていることに由来します。最低賃金を上げるためには配車サービスの利用料を上げるか、各社の取り分を減らす必要があり、ドライバーの保護と渋滞の緩和を同時に行えるアプローチだとみられています。なお、ドライバーが個人事業主の場合、税抜後の最低賃金は15ドル(約1700円)となります。
NYC considers new pay rules for rideshare app drivers
https://nypost.com/2018/07/02/nyc-considers-new-pay-rules-for-rideshare-app-drivers/
配車サービスによってもたらされる競争を減らそうとする市の取り組みはこれだけにとどまらず、アプリベースの配車サービスを登録する新しいカテゴリの創設や、最大1年間は配車サービスに登録できるできる車を原則的に認めないようにするといったことをTLCは検討しています。
これに対し、もちろんUberやLyftといった会社は「性急すぎる」と反発。そして、市議会が改正法案のカギとなる部分を削除するならば、TLCの免許のもとに運行されているメダリオン・タクシーを援助するために100万ドル(約1億1000万円)の援助を行うと提案しました。しかし、市議会側はこの提案を拒否。
Lyftのパブリックポリシー部門副社長のJoseph Okpaku氏は「市のリーダーは『苦闘するタクシードライバーの援助が最優先事項だ』と繰り返し述べていたので、個人タクシーのドライバーに対する100万ドルの直接的な援助を拒否されたことに当惑しています。彼らは裕福なメダリオン・オーナーを優先しています」と語りました。Lyftが提案した100万ドルの支援は、企業ではなく個人や家族でドライバーとして働いているメダリオン・オーナー1500~2500人をサポートできるよう、ざっくりと計算された額とのこと。
市の広報は「当局は、市議会のアプローチが街の渋滞を解決し、ドライバーが家族を支えることを援助する最も全体論的な方法だと考えています」と語っており、市議会も「当初から、議会は法案について全ての利害関係者と問題に取り組んできました。これらの意見交換は非常に生産的なもので、実施予定の提案についても周知してきています。我々は公共の場では交渉しませんが、可決を行おうとしている法案がドライバーを助け、渋滞を解決し、産業に公平性をもたらすことに自信を持っています」と語っています。また、「Lyftなどの配車サービスを提供する企業が、困難に直面しているドライバーを支援する非営利の基金を創設するのは大歓迎です。それを行うのに市議会の許可は必要ありません」とも付け加えています。
なお、法案の可決は2018年8月の第2週に行われる予定となっています。
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