スマートフォンやノートPCの使用が教室で「許可されている」だけで生徒の成績が悪くなる
by Tirachard Kumtanom
近年では学校の授業で調べ物をする時にスマートフォンやタブレット、ノートPCなどの電子機器を利用したり、スマートフォンで学習用アプリを使用して学習したりする人もいます。そんな中、「学校の授業でスマートフォンやノートPCの使用が『許可されている』だけで、生徒の成績が下がってしまう」という研究結果が発表されました。
Dividing attention in the classroom reduces exam performance: Educational Psychology: Vol 0, No 0
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/01443410.2018.1489046
Even Just The Presence of a Phone or Laptop in Class Can Push Down Grades, Study Finds
https://www.sciencealert.com/phones-in-lectures-can-hurt-grades-even-when-not-used
ニュージャージー州にあるラトガース大学の心理学者らは、同じ講師によって同じ方法で講義が行われた2つのクラスについて、片方で「電子機器の使用を許可」、もう片方で「電子機器の使用は禁止」というルールを設定しました。講義を受講した118人の生徒のうち、白人が39%、アジア人が31%、ラテン系が13%、アフリカ系が6%、混血が4%で、残りの7%は「その他」という人種構成だったとのこと。
電子機器の使用が許可されたクラスでは、生徒が講義中に自由にスマートフォンやノートPC、タブレットなどの電子機器を使用することが許されていたそうです。一方で、電子機器の使用が禁止されたクラスでは、厳格に生徒が電子機器を使わないようにチェックされており、講義中に生徒がこっそり電子機器を使っていないか、手元を確認して注意する監視員が用意されていました。「最初の3週間が過ぎると、誰もこっそりと電子機器を触ろうとしなくなりました」と研究者らは述べています。
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2つのクラスでは、講義ごとに前の講義で行った内容についての理解度をチェックするテストと、学期中に3回の定期テスト、そして学期末に期末テストを行いました。その結果、講義ごとに行った理解度テストでは、電子機器の使用が許可されているクラスも禁止されているクラスも、それほどテストの結果に差はありませんでした。
ところが、3回の定期テストや期末テストになると、電子機器の使用が許可されているクラスよりも、禁止されているクラスのほうが成績が高くなる傾向になりました。また、定期テストよりも期末テストのほうが2つのクラス間の差がさらに大きくなっていることから、授業中に電子機器が使えない期間が長くなるほど、両グループの成績の差が大きくなるという結果が示されました。
また、電子機器の使用が許可されているクラスについては、「実際に講義中に電子機器を使ったのか?」という点についても調査が行われました。その結果、半数以上が「講義の半分以上で電子機器を使った」と答えましたが、「電子機器を全く使わなかった」と答えた学生も6人いたとのこと。
電子機器の使用が許可されているにもかかわらず、講義中に電子機器を使わなかった学生は、講義ごとの理解度テストでかなりの好成績を収めていました。ところが期末テストになると、電子機器の使用が許可されていたクラスの学生は、使用が禁止されていたクラスの学生に、成績で大きな差をつけられてしまったのです。
今回の結果は「電子機器を触ることができる」という状況だけで、生徒の集中力が落ちて成績が下がってしまう可能性を示しました。しかし、研究チームは今回の実験はあくまでも少規模なものにすぎないとしており、今後さらなる研究が必要だと述べています。
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