サイエンス

まぶしい炎の向こう側を青色光で透かして見る技術が開発、火災研究の進歩に期待


アメリカ国立標準技術研究所(NIST)・火災研究部門の研究グループは、青い光とフィルターを利用することで、激しい炎に包まれているサンプルを視覚的に観察することに成功しました。

NIST Unblinded Me with Science: New Application of Blue Light Sees Through Fire | NIST
https://www.nist.gov/news-events/news/2018/07/nist-unblinded-me-science-new-application-blue-light-sees-through-fire


アメリカ、特に西海岸部では、乾燥した気候によって毎年のように山火事が自然発生します。2017年12月にはカリフォルニア州のロサンゼルスで大規模な山火事が発生し、多くの被害が報告されました。そのため、アメリカでは火災の研究が盛んに行われています。

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火災の研究には「火がどのように広がって物を燃やすか」を観察する必要があります。しかし、ススや煙、そして炎が発する強い光、そして熱気が生み出す熱勾配によって、可視光線による観察は難しいものがありました。今まではススや煙を出さないガスの火をテストで使用していましたが、明るさや光の屈折をどうにかしてよく把握するためにカメラを近づけようとしても、従来のセンサーではその高温で壊れてしまう可能性があるため、これまで大規模な試験火災から詳細な視覚的データをリアルタイムで得ることはできませんでした

1000度以上という高温で材料を加工するガラス・鉄鋼メーカーは、従来より青色光レーザーを利用して、赤く光るほど熱せられた材料の特性を計測しています。NISTの研究チームはこの発想を応用し、青色光を利用することで、火災研究で燃えている材料サンプルを視覚的に捉えることができるのではないかと考えました。

研究チームは、ガスの炎の後ろに観察対象となるターゲットを置き、「白色光だけで照らして普通のカメラで撮影」「青色光だけで照らして普通のカメラで撮影」「青色光を照らして光学フィルターを装着したカメラで撮影」の3パターンをテストしました。その結果、青色光と光学フィルターを用いた方法で、炎の光による影響を10000分の1に減少させて、きわめて詳細な画像を撮影することに成功しました。


またNISTは、着火した木材のサンプルを白色光・青色光下で撮影し、以下のムービーで公開しています。以下のムービーの左が通常の白色光を当てて撮影した様子、右が青色光を当てて光学フィルターを通して撮影した様子です。



白色光下での撮影では、炎が邪魔で木材の表面を見ることができません。一方で青色光下での撮影では、木材のどの部分が炭化しているのかを観察することができます。


この技術によって、例えば火事では家がどのように焼けてしまうのかをリアルタイムで観測できるようになるため、火災研究のさらなる進歩が期待されます。またNISTでは、ススや煙に覆われていても火炎で変形・溶解していく立体物の体積変化と動きをレーザーによって測定するシステムも開発中とのことです。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1i_yk

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