デザイン

私たちが普段着用している下着はどのように進化してきたのか?


大昔の人類は裸で過ごしていましたが、文明を手にするにつれて、服を身につけるようになりました。服は各民族の文化を反映し、時代を経てさまざまな進化を遂げてきました。そんな服の中でも最も基本的な「下着」の歴史について、シドニー工科大学のファッション・テキスタイルデザイン講師を務めるアラナ・クリフトン=カニンガム氏がまとめています。

A brief history of briefs – and how technology is transforming underpants
https://theconversation.com/a-brief-history-of-briefs-and-how-technology-is-transforming-underpants-97674


最も古い下着は、古代エジプトにみることができます。古代エジプト人は綿や亜麻で作られた「シェンティ」と呼ばれる布を腰に巻き、革のベルトで固定し、股間に垂れ布をあてがっていました。紀元前2700~2200年頃の古王国時代では下着と上着の区別もはっきりしておらず、男女も階級も関係なくほとんどシェンティのみで過ごしていたようです。しかし、文明が進化し、さまざまな民族との交流を重ねるうちに、上流階級はシェンティを履いた上から数枚の衣服を重ね着するようになったといわれています。


中世ヨーロッパでは、膝下まで丈のあるシャツを着て、シャツの腰から下の部分をズボンの中で巻き付けて下着の代用とされていました。しかし、15世紀頃から、柔らかな綿の布を下半身に巻き付けて、ヒモで腰と太ももに固定する「ブレー」と呼ばれるスタイルが男女問わず一般的なものとなりました。ブレーには、男性がわざわざ布を解かなくても用を足せるようにボタンやヒモで留められる「窓」も設けられていました。ブレーの丈は当初膝下までありましたが、時代が進むにつれて短くなっていき、現在のボクサーブリーフのような形に変化していきます。以下の絵画は実際にブレーを着用して農作業に従事する男性を描いています。


さらに、14世紀からは股間の部分にパッドなどを詰める「コッドピース」が流行しました。コッドピースは男性器を隠すよりもむしろ、性的エネルギーの象徴として男性器を強調する意味合いが強かったといわれています。実際に神聖ローマ帝国の皇帝だったカール五世の肖像画には、コッドピースをつけているために股間が大きく強調されている様子が描かれています。


一方、上流階級の女性は、15世紀には既に現代のブラジャーやパンティーと同じような形状の下着を着用し、その上からさらにコルセットやペティコートなどを重ねて着用していたといわれています。しかし、18世紀後半に起こった産業革命によって社会が大きく変化し、女性も工場や鉱山で働くようになってからは、体をきつく締め上げるコルセットよりも体の自由を奪わない伸縮性のある下着が徐々に求められるようになりました。


19世紀初頭から中頃にかけて、女性や子どもは「パンタレット」と呼ばれる、足全体をすっぽりと覆う下着を履くようになりました。また、当時の男性用ズボンは膝上までという長さが当たり前だったのですが、19世紀に入って足首まである長いズボンが主流となってからは、男性も足首まである下着を履くようになり、やがて男女ともに首元から足首までをすっぽりと覆う下着が主流となりました。当時の一般的な下着は主に綿で作られていて、裕福な人はシルクで下着を仕立てていたとのことです。


20世紀以降の下着の歴史は、合成繊維の歴史といっても過言ではありません。下着が現代のような伸縮性を得たのは、1930年頃から天然ゴムが素材として使われるようになってからのことです。それまでは下着は「腰で固定して垂れ下げる」ものだったのが「下半身に密着して支える」というものに変わっていきます。さらに1938年に合成繊維であるナイロンが発明され、軽量で洗濯のしやすい下着が誕生しました。1945年には、現代にも見られるような男性用ブリーフやトランクスが登場しました。

21世紀になって、下着はさらに多様的な進化を遂げています。例えばアメリカのファッションテクノロジー企業であるWearable-Xは、コンドームメーカーと提携しスマートフォンアプリを通じて世界のどこからでも振動を転送できる「Fundawear」を開発しています。Fundawearが一体どういう下着なのかは、以下のムービーを見るとよくわかります。

Durex Fundawear -- Touch over the Internet [OFFICIAL] - YouTube


デザインだけではなく、素材の進化・布地へのコーティング技術の発達・他分野技術の応用によって、下着は「単に身につけるだけのもの」から、「身につけた者の生活にフィードバックを与える存在」になりつつあります。実際に医療の現場では、繊維ベースの電気化学センサーを下着に印刷するという技術も開発されています。科学技術の発達によって、下着は新しいデザインだけではなく、50年前には想像もされていなかったレベルで多種多様な機能を得るようになったといえます。

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in 動画,   デザイン, Posted by log1i_yk

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