「孤独」を感じるかどうかには遺伝子が関係している可能性があるとの研究結果
by sasint
孤独な人が風邪をひくと症状が悪化するということが研究で示されているように、孤独は人の健康状態と大きく関わってきます。そんななか、「人がどのくらい孤独を感じるのかは、部分的には遺伝子によって決定される」ということが新たな調査結果で示されました。この研究では肥満と孤独に同じ遺伝子が関係している可能性も示されており、今後の病気の治療についての重要な示唆を含んでいます。
Elucidating the genetic basis of social interaction and isolation | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-018-04930-1
Obesity epidemic could fuel loneliness, as scientists find a genetic link
https://www.telegraph.co.uk/science/2018/07/03/obesity-epidemic-could-fuel-loneliness-scientists-find-genetic/
Your Feelings of Loneliness Could Be in Your Genes, New Study Reveals
https://www.sciencealert.com/loneliness-social-isolation-could-be-written-into-genes
新たな研究では、イギリスのバイオタンク「UK Biobank」に登録されている被験者48万7647人分の遺伝子変異について調査が行われ、孤独と関係する遺伝子領域15箇所が特定されました。これまでにも孤独が遺伝子と関連していることが研究で示されることはあったものの、実際に遺伝子領域を特定した研究はこれが初めてのもの。
研究チームは肥満と孤独が関連している証拠も発見しており、一方が他方を助長する可能性が考えられます。肥満と孤独には同じ遺伝子が関係しているとみられており、どちらか一方を解決するのではなく、両方一緒に取り組むのがよりよい解決策になる可能性があります。
研究を行ったケンブリッジ大学のJohn Perry氏は「私たちは、孤独が純粋に環境や人生経験によってもたらされると思いがちですが、この研究は遺伝子が関係していることを示しています」「常に遺伝子と環境は複雑に混ざりあっていますが、集団レベルで見れば、肥満の問題に取り組むことは孤独の問題を解決すことにもなりえます」と述べています。
by Tony Alter
今回の研究では被験者が「孤独感」や「他人との関わりの頻度」について答えたアンケート結果が用いられました。アンケートを使った調査方法は因果関係の証明方法としては弱いと考えられていますが、集められたデータからは「強い関連性」が見られたとのこと。また、被験者は日頃の活動についても尋ねられたところ、「パブを好むかどうか」に関連する13の遺伝子領域や、「ジムを好むこと」に関係する6の遺伝子領域の変異が確認されました。また「宗教を好むこと」に関する18の遺伝子領域に変異があることなども判明しました。うつ・肥満・心血管の健康といった分野に重複があることもわかっており、これらが一緒になることで、孤独のリスクが増加することも考えられます。
この研究結果を前提に考えると、似たような状況に置かれた2人の人物について、一方は孤独を感じているのにもう一方は感じていない、という場合、遺伝子の違いがあることが考えられます。
by TaniaVdB
ただし、遺伝子要因・非遺伝子要因は深く関わりあっており、「孤独遺伝子がある」「孤独は完全に遺伝性」といった言い方はできない、という点を研究者らは強調しています。
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