Microsoft Wordを作ったリチャード・ブロディが当時のMicrosoftを振り返る

元Microsoft技術者で、のちにポーカーのプロプレイヤーに転身したリチャード・ブロディ氏が、自身のブログでMicrosoftに入社した経緯や、当時のミッション、Microsoft Wordが生まれた背景などを語っています。

Microsoft: The Early Days
http://www.memecentral.com/mylife.htm

1981年5月、ブロディ氏はXerox PARCの上司だったチャールズ・シモニー氏の後を追って、Microsoftの77番目の社員になりました。ブロディ氏が加わった「アプリケーション部門」はまだ部署として独立しておらず、チームメンバーはブロディ氏とシモニー氏の二人だけだったそうです。この二人を除く当時のMicrosoftの社員は、ビル・ゲイツ氏の輝かしいビジョンの下で、Unixの一種である「Xenix」や新しいOS「MS-DOS」やBasicやFortranで書かれた伝統的なソフトウェアの開発に取り組んでいたそうです。

当時のゲイツ氏。

このような状況の中、ブロディ氏とシモニー氏に与えられた使命は「パーソナルコンピューター用のビジネスアプリケーションという新興市場への進出」だったとのこと。当時はまだパーソナルコンピューター市場にIBMが参入する前で、パーソナルコンピューターとはApple Computerを意味していました。1年半後にIBMが参入すると、パーソナルコンピューターは「PC」と省略して呼ばれる一般的な用語として定着していくことになったそうです。

ブロディ氏の上司にあたるシモニー氏の使命は、世界初のスプレッドシート(表計算)プログラムであるVisiCalcと戦えるソフトウェアを開発することでした。シモニー氏はのちにVisiCalcやLotus 1-2-3を打ち負かすことになる「Microsoft Excel」を作り出すことになりますが、その仕事のために重要な「pコードマシン」というプログラムをブロディ氏は書いていたとのこと。

左がシモニー氏で右がブロディ氏。

シモニー氏は「Revenue Bomb(収入爆弾)」と呼ばれる戦略を考案しました。これは、横軸にMicrosoft製品を、縦軸に多くのメーカーから販売されている数多くのパーソナルコンピューターをリストアップして、漏れのない販売戦略を練るというもの。「CS」と名付けられ10年来Microsoftで開発されてきたpコードマシンのおかげで、マシンごとに異なるバージョンのソフトウェア製品をMicrosoftは簡単に制作できたそうです。

当時、乱立していたパーソナルコンピューターアーキテクチャが、たった数年後にはMacとIBM互換機の2種類に集約されると考える人はおらず、それはMicrosoftも同じだったとのこと。CSはMacとIBM互換機の両方に対してもアプリケーションを同時に開発できる点で、長年にわたってMicrosoftに優位性を与えることになりました。

Microsoftに入社した最初の夏にCSを書いていたブロディ氏でしたが、翌年の夏には秘密の新しいプロジェクトに取り掛かったとのこと。それは、ビジネスソフト市場でのエントリー向けの安価なワープロソフトの開発でした。MicrosoftではソフトのUIを統一することで、表計算ソフト「Microsoft Multiplan」のユーザーが、新しいワープロソフトを苦労することなく理解して使いこなせるようになると考えていました。ビジネスソフトのUIを統一することで、Microsoft製品を使うユーザーを囲い込もうという戦略でした。

そこでブロディ氏に与えられた使命は「表計算ソフトのUIを使った世界初のワープロソフトを開発すること」になったとのこと。こうして誕生したのが「Microsoft Word」です。今なおワープロソフトとして最も広く普及するWordは1983年に誕生しましたが、そのころにはブロディ氏やシモニー氏が率いるアプリケーション部門は30人以上のプログラマーにマーケティング担当者も付けられる大所帯になっていたそうです。