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戦国時代だったテキストエディタ界をVisual Studio Codeが天下統一しつつある


テキスト編集だけでなく、表計算やイラスト作成など、何かの目的を達成しようとした際には「どのツールを選ぶのか」が問題になってきます。テキストエディタの世界でVisual Studio Codeがその地位を不動のものにしつつある点について、ロビン・クリーンさんがデータをまとめています。

The Era of Visual Studio Code | Roben Kleene
https://blog.robenkleene.com/2020/09/21/the-era-of-visual-studio-code/


ツール選びの一つの考え方は、「一番寿命が長いツールを選ぶ」というものです。どんなに慣れ親しんだツールであっても、開発が終了してしまうと新たなツールの使い方をまた最初から学びなおす必要があり、そうした苦労を避けるには人気があって長く使われているツールを選びたいところ。表計算やイラスト作成の分野を見てみると、Microsoft ExcelやAdobe Illustratorはどちらも1987年にリリースされて以来、長い間人気を保ってきています。


一方でテキスト編集の分野では、最も古いものが人気があるとは限りません。例えばStack Overflowの調査で2015年から2017年にかけてMacで一番人気に輝いたテキストエディタのSublime Textのリリースは2008年とかなり新しく、またSublime Text以外にもTextMateやAtomなど、様々なテキストエディタが登場しては勢いよく普及していきました。しかし、そういったテキストエディタが群雄割拠していた時代もVisual Studio Codeの登場で終わりつつあるとクリーンさんは分析しています。

下記のStack Overflowの調査結果を見ると、Visual Studio Codeは急速に人気を伸ばしていることが分かります。人気が年々伸びているだけでなく、他のテキストエディタでは超えられなかった40%ラインを飛び越えて50%まで到達しており、一歩抜きんでた存在と言えそう。


また、クリーンさんはVisual Studio Codeがテキストエディタの進化の最終地点だと述べています。初期の「Emacs」「Vi」などのテキストエディタは、現在のユーザーインターフェースの慣習が定まる前である1976年にリリースされたため、コピーやペースト、アンドゥなどの機能を利用するのに独自の方法を使うなど、新たに使い始めるにはハードルが高い状態です。その後、2004年にTextMateがリリースされ、略語スニペットやペア文字の自動入力、ファイル名のあいまい検索、拡張機能など多くの機能をもたらしました。2008年にはSublime Textが登場し、ミニマップや複数カーソル、クロスプラットフォームなどの特徴を実現。拡張機能の面でもより高度な拡張が可能になったほか、パッケージ管理も行えるようになっていました。

2014年にGitHubからリリースされたAtomでは、パッケージマネージャーが最初から組み込まれており、インライン画像を備えたReadmeを表示するなどアプリストアのように拡張機能を利用できるようになっており、また、拡張機能をHTML・CSS・JavaScriptという非常に広く知られた言語で作成可能だったため、参入障壁はかなり低いものとなっていました。残念ながらAtomはパフォーマンス上の問題を抱えていたため、王者と言えるほどの地位を築くことはできませんでした。


そして2015年にMicrosoftがVisual Studio Codeをリリースしました。Visual Studio Codeでは、GitHubがAtomと同時にリリースしたElectronが利用されており、Atomと同様にHTML・CSS・JavaScriptで拡張機能を作成可能で、また拡張機能からNode.jsへのフルアクセスが可能なため通常のアプリケーションで行える全てのことが拡張機能でも行えるようになりました。TextMate以降進化してきた拡張機能はVisual Studio Codeでほぼ完成形に到達しており、これ以上飛躍することはなく、新たなテキストエディタに取って代わられる可能性は無いとクリーンさんは評価しています。

さらに、Visual Studio Codeはデスクトップ版だけでなく、ウェブアプリとして機能するように移植が行われています。クリーンさんによると、こうした移植には多大な労力が必要であり、逆に言うと移植されるほどの価値があることの証明になるとのこと。例えばEmacsやVimがターミナルアプリからGUIバージョンに移植されたり、またPhotoshopやExcelがモバイルアプリに移植されているのはそれほどの価値があったからです。

最後に、Visual Studio Codeはオープンソースであり、活発に開発が行われていることも人気がある理由だとクリーンさんは述べています。TextMateやSublime Textは個人開発のアプリだったため、しばしばユーザーがリリーススケジュールに不満を持っていました。下記はVisual Studio Codeのコミットグラフですが、持続的に開発が行われていることが確認できます。


2004年のTextMateの登場以来、数年ごとに流行が移り変わっていたテキストエディタですが、上記のようにVisual Studio Codeが人気を固めつつあり、今後長い期間にわたって王者の地位にとどまると考えられます。クリーンさんは、こうした証拠を踏まえて、Visual Studio Codeの学習コストはキャリアの中で十分見返りが期待できるようになったと結論付けています。

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in ソフトウェア, Posted by log1d_ts

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