メモ

アメフトプロリーグ・NFLでの「相手をケガをさせたら賞金」という不祥事はどんなものだったのか

by Nathan Rupert

2018年5月6日に行われた日本大学と関西学院大学のアメリカンフットボール部による定期戦で、日大の選手が関学大の選手に反則タックルを行い負傷させる事態が発生。日大選手が監督・コーチから「1プレー目からQBを潰してこい」と指示を受けていたとして、大きな騒動になっています。

アメフトの本場・アメリカのプロリーグであるNFLでは、これより悪質な「相手チームの選手をケガさせれば賞金を出す」という不祥事が判明したことがありました。

Saints Bounty Scandal - NFL Topics - ESPN
http://www.espn.com/nfl/topics/_/page/new-orleans-saints-bounty-scandal

New Orleans Saints bounty scandal - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/New_Orleans_Saints_bounty_scandal

バウンティゲート」とも呼ばれるこのスキャンダルを起こしたのは、ニューオーリンズに本拠地を置くニューオーリンズ・セインツです。セインツは1967年に創設されてから数十年におよぶ低迷期を経験した後、2000年代になると次第に地区優勝を数度経験するチームとなり、2009年にはNFLの優勝決定戦であるスーパーボウルで勝利し、初制覇を果たしました。


セインツがスーパーボウルで優勝した年のNFCチャンピオンシップゲームで、セインツはミネソタ・バイキングスとの試合を制してスーパーボウルへの出場を決めました。ところが、この試合の後にバイキングスの選手やコーチたちは、セインツのディフェンス選手らがバイキングスのQBを務めていたブレット・ファーヴ選手を「故意に負傷させようとしていた」と主張しました。

バイキングスの主張によれば、セインツのディフェンスは少なくとも13回にわたって危険なタックルを繰り返しており、ファーヴ選手を負傷で一時退場に追い込んだとのこと。また、セインツはバイキングスとNFCチャンピオンシップゲームを行う1週間前、アリゾナ・カージナルス戦でもQBのカート・ワーナー選手に対して故意に退場させようとするタックルを行っていたと、バイキングスは疑惑の目を向けていたそうです。

by Tom Pumphret

即座にセインツに対して処罰が下されることはなかったものの、スーパーボウル後のオフシーズンに、匿名の選手からNFLの役員に対して「セインツはディフェンスコーチのグレッグ・ウィリアムズ氏が賞金制度を運営し、ワーナー選手やファーヴ選手はそのターゲットになっていた」というタレコミが入ります。NFLのセキュリティ部門が調査を行った当初、セインツの選手や関係者は賞金制度の存在を否定したため、捜査は難航しました。

しかし2012年3月、NFLはセインツで試合中のプレイに対して賞金を与える制度が存在した証拠を掴んだと発表しました。賞金制度は2009年にウィリアムズ氏がセインツに雇われてから誕生していて、関わった選手の数は20人を超え、チーム関係者も多数が制度の存在を知っていました。ヘッドコーチのショーン・ペイトン氏は、賞金制度の存在を隠そうとしていたとのこと。

賞金制度の原資となっていたのは、試合中のミスに応じて課せられた罰金で、「よいプレイ」があると賞金が支払われました。「よいプレイ」の中には「相手選手が担架で運ばれるようなプレイ」「相手選手が完全に退場するようなプレイ」など、相手を故意にケガさせるようなものが含まれていました。

by Manuel Alende Maceira

この賞金制度はスーパーボウルで優勝した年のプレーオフだけではなく、2011年のレギュラーシーズンでも存在していて、グリーンベイ・パッカーズカロライナ・パンサーズのQBが「標的」になっていたとのこと。一方、「セインツが試合中に負傷退場を狙った危険なプレイをしてくる」ということは対戦するチームの間でも知られたことであり、タンパベイ・バッカニアーズのチーム関係者は、セインツとの試合前に「脇の下、特に膝周辺を防護するように」と選手に指示していたそうです。

「相手選手をケガさせた選手に賞金を出していた」というスキャンダルは、メディアによって大きく批判されました。地元の新聞であるタイムズ・ピカユーンは「近年最も成功したスポーツチームにおける大きな汚点だ」と述べ、ESPNのコラムニストであるグレッグ・イースターブルック氏は「セインツの行動はスポーツの安全性を脅かす」と語っています。

NFLのコミッショナーを務めていたロジャー・グッデル氏は事態を重く見て、賞金制度を運営したウィリアムズ氏に対して無期限の出場停止処分、事態を隠そうとしたペイトン氏に対しても1年間の出場禁止処分を科しました。北米プロスポーツ史でも類を見ないほど厳しいこの処分は、「NFLは決して選手をケガさせるような賞金制度の存在を認めない」という、NFLの意思を強く反映したものだったとのこと。

by Angie Garrett

また、スキャンダルとして取り沙汰されたのはセインツだったものの、賞金制度は他のチームにも存在していたとされ、給料とは別に「ボーナス」という形で選手に報酬を払う習慣が根強いチームもあったとされています。長年にわたるこの習慣を快く思っていなかったNFLは、セインツに対して非常に厳しい処罰を科すことにより「賞金制度に対しては厳格に対処する」という姿勢を明らかにしました。それから6年、今のところNFLでは同種の賞金制度の存在は確認されていません。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
アメフト選手の脳しんとうを防ぐ「安全なヘルメット」の開発に向けてNFLがヘルメット開発用FEモデルを公開 - GIGAZINE

脳はアメフトをプレイすることでここまで変わってしまう - GIGAZINE

「チアリーダーはスウェットで出歩くべからず」などNFLチームのチアリーダーに定められた厳しいルールの数々 - GIGAZINE

スポーツファンが応援するチームを自分自身と混同してしまう心理とは? - GIGAZINE

チアリーダーの顔面にアメフト選手が激突してしまうムービー - GIGAZINE

in メモ, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.