インディアンの彫刻「ペトログリフ」にカレンダーの役割があったことが判明
岩石に絵を描くペトログリフは、世界中に存在していたことでも知られる文化であり、大昔の人々の生活を知る上でも重要な資料の1つとされています。アメリカの先住民であるインディアンの中にもペトログリフを描く文化を持つ民族がおり、このペトログリフの中には、農作物や宗教的なお祝い事の時期を正確に示すカレンダーが存在していることが明らかになりました。
BBC - Travel - Arizona’s mysterious clock of ancient times
http://www.bbc.com/travel/story/20180516-arizonas-mysterious-clock-of-ancient-times
アリゾナ州のV Bar V ヘリテージ サイト内には数多くのペトログリフが存在しており、その中の1つに動物や植物などの絵が描かれ、その上部の亀裂に2つの石が差し込まれたものがあります。研究者のケネス・ゾール氏は2005年にペトログリフの頭上にある2つの石に太陽の光があたることで、何らかの影のパターンが映し出されていることを発見しました。
ゾール氏は、この発見をアメリカ林野部の考古学者に伝えました。すると、林野部の考古学者はペトログリフを描いた人々が季節を把握していたのか調べるため、「1年間観察してから結果を伝えてほしい」とゾール氏に伝え、ペトログリフの観察を指示しました。
ゾール氏がペトログリフの観察を開始すると、6月21日の夏至にペトログリフの影が6つの絵を指し示し、12月の冬至には太陽光が2つの岩の間の隙間を通って、直接ペトログリフ全体を照らすことがわかりました。太陽光が差すことによってできた影の形に規則性が見られたことから、このペトログリフは古代の人々のカレンダーとしての役割があるのではないかとゾール氏は考えたそうです。
このペトログリフを描いたとされるシナワ族は7世紀~15世紀にかけて、トウモロコシ、綿花、カボチャ、豆を栽培していたとされています。このカレンダーが、農業に起因している可能性が高いと考えたゾール氏は、シナワ族の子孫であるホピ族にカレンダーについて話をしました。すると、このペトログリフは宗教的なお祝い事や農作業における重要なイベントと強い関連性があることがわかりました。
ホピ族が最初に種まきを行う4月21日には、ペトログリフの影がトウモロコシの茎のような絵に触れます。これ以外にも、ホピ族は宗教的な行事として16日間の祈とうと瞑想(めいそう)を行いますが、その最終日である7月8日になると、太陽は踊っているように見える人の輪郭をペトログリフに描いていたことも確認されています。この強い関連性から、このペトログリフはシナワ族のカレンダーであるとゾール氏は確信。また、この発見を受けたアリゾナ考古学会は、このペトログリフのことを「神のために儀式の時間を教えてくれるタイムマシンだ」と表現しています。
ホピ族のフロイド・ロマクイヴァヤ氏は「先祖がこのペトログリフを残してくれたことに誇りを感じています。私たちには毎月異なる儀式があり、いろんなことを行います。それが私たちのカレンダーであり、ペトログリフは私たちを導くものです」と語っています。
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