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Kickstarterからスタートして年間1億円以上稼ぐようになったCMS「Ghost」が激動の5年間を振り返る


2013年10月にKickstarterのキャンペーンからスタートしたオープンソースのCMSプラットフォーム「Ghost」が、これまでの5年間を振り返っています。

After 5 years and $3M, here's everything we've learned from building Ghost
https://blog.ghost.org/5/

Ghostの月次収益(MRR)は8万200ドル(約890万円)、年間純収入は120万ドル(約1億3000万円)、5年間の総収益は300万ドル(約3億3000万円)で、なんとサービススタート1年目から順調に利益をあげているとのことです。オープンソースのプラットフォームということでGithub上にリポジトリが存在するのですが、これまでに得たスターの数は2万5000件にものぼります。実際にGhostを利用しているウェブサイトの数は約51万2000件で、主な顧客にはApple、Tinder、DuckDuckGo、Mozilla、OpenAI、OkCupid、Square、Vevo、DigitalOcean、Napster、CloudFlareなどが名を連ねており、他にも有名企業を顧客に抱えています。

Ghost - The Professional Publishing Platform


創業者のJohn O'Nolan氏は、「独立したクリエイターに力を与えるためのオープンソースのパブリッシュプラットフォームを構築したい」と考えてGhostをスタートさせたと語っています。初めは社会実験の一環と考えていたそうで、自分たちがしたいと感じる仕事を行い、働きたいと思う職場を作ることを目指したそうです。非営利団体としてスタートしたGhostは、オープンソースのMITライセンスのもと、すべてのコードを公開して開発を進めています。

そもそもGhostは非営利団体であるため会社に株式が存在しません。組織を現金化することもできず、提供している製品はオープンソースなので誰でも自由にコードを使うことが可能です。Ghostの目標は「最高の製品を作る」という1点のみで、持続可能なブログやウェブサイトを支えるための、従来のものよりもオープンなソフトウェアを構築しています。

O'Nolan氏は「Ghostで働くことで支払われる報酬は、ゲームをプレイすることで収入を得るというケースと同じようなものです」と語っています。また、O'Nolan氏は売ることのできない組織を作ったことで、組織自身への愛着が増し、「決して売りたくない会社を作ることにつながった」と述べました。

by Igor Ovsyannykov

1年目から利益をあげているというGhostですが、それでもスタートから最初の数年間はビジネスを持続可能なものにするためにかなり忙しい時間を過ごしたそうです。それでも収益が安定してきた2017年には、収益を第一の目標とすることをやめ、代わりに従業員の就業時間やパフォーマンスなどの健康指標に重きを置くことに決めました。もちろん2018年になっても収益には十分に注意を払っているそうですが、これは意志決定を促すものではないとのこと。意志決定はあくまでも当初の通り、「自分たちが行いたいこと」をベースに行っているそうです。

Ghostが作り出したのは自分たちが無制限に仕事をすることができる構造のビジネスと製品だそうで、投資家たちはリターンを生み出したりIPOのために資金調達することや、他企業の買収にばかり注目しますが、Ghostは非営利団体であるためそういった圧力とは無縁の存在です。

非営利団体であるにもかかわらず毎月安定した収入を得ているGhost。2017年5月から2018年5月までの月次収益を記した以下のグラフからは、安定して右肩上がりの成長を遂げていることがわかります。


過去5年間のGhostの事業を振り返り、O'Nolan氏は「利益を生むにしろ生まないにしろ、ビジネスを構築することは難しいものです。オープンソースにすることもさらに難しいことです。人々が気になるような製品を作り出すことも難しいことです。そして、ウェブサイトをホストすることは非常に難しいです」と語っています。それでも、オープンソースの製品や収益性の高いSaaSビジネス、主要なホスティングプラットフォームなど、Ghostの事業を通して得たいくつかの教訓をまとめています。

by Bethany Legg

◆プラットフォームとしての方向性を定める
Ghostは事業をスタートさせた際、すべてをできる限りシンプルでユーザー重視のものにすることを決めていました。初めはアプリケーションをクローズドソースのプラットフォームとして開発する予定だったそうですが、最終的にはオープンソースで開発することになり、それにより社会的に肯定的なビジネスモデルを構築することができたとしています。また、ほとんどのオープンソースのプラットフォームがひどいUIデザインであることから、「我々は素晴らしいUIデザインを持っている!これは両方の世界(クローズドソースとオープンソース)で最高のものでしょう!」とO'Nolan氏は記しています。

シンプルさを保つため、Ghostは分散型のプラットフォームではなく、集中型のプラットフォームとして作成されました。分散型のプラットフォームはユーザー側にも高い技術レベルと専門知識を求めるような複雑なソフトウェアになりがちで、平均的な技術者以外のユーザーにとっては使用が困難になるという問題点があります。また、分散型のプラットフォームは基本的にセットアップが複雑で、UXが集中型のプラットフォームに劣るケースが多い模様。それに対して、集中型プラットフォームは基本的に分散型プラットフォームに比べてパワーや柔軟性で劣るという欠点があります。


そこで、Ghostは分散型と集中型の一挙両得を狙い利便性と使いやすさを保つことを目指し、故意に製品の柔軟性を制限してシンプルなものにしようとしたそうです。しかし、ユーザーからのフィードバックで、一般ユーザーにとってはシンプルなものになっておらず、プロユーザーにとっては柔軟性に欠けるものになっていたことが明らかになり、利便性と使いやすさの両取りを狙った結果どちらも実現できていないという最悪のものに仕上がっていることに気付きます。

最終的に、Ghostは一般ユーザーが求めるようなソフトウェアとしてのシンプルさを捨て、ソフトウェアとしての機能性や柔軟性を求めるプロユーザーに向けた開発にシフトしたそうです。これが5年間の開発の中で最も賛辞を得るべき決断であり、厳しい競争の中を生き残ることができた理由であるとしています。

by Smart

◆Ghostのマーケティングにおける成功と失敗
Ghostのマーケティング戦略で最もベストなものは、「何度も何度も繰り返し実行すること」だそうです。そのため、少なくとも年に2回、Ghostはソフトウェアを大きく更新して公開しています。ほとんどの企業はこういった小まめな更新を行わないそうですが、Ghostは純粋に優れたウェブサイトを作れるようにすることだけに焦点を当ててソフトウェアのアップデートを続けてきたそう。そうすることで、信頼できる製品、素晴らしいサポートと強く顧客に印象づけることに成功したと、O'Nolan氏。

Ghostのマーケティングにおける最大の失敗は、ドキュメントとリソースだそうです。これを解決するためにGhostでは積極的に開発者の雇用を行っています。

また、もうひとつの成功事例として、「少数グループに正式リリースよりも一足先に最新版のソフトウェアを提供すること」を挙げています。例えば、Ghostは記事作成時点でアフィリエイトプログラムをテストしており、これを「Ghost(Pro)」としてリリースする計画を持っています。Ghost(Pro)では収益の30%を手数料としてユーザーに支払う予定だそうで、これをベータテストとして一部のユーザーに実験的に導入しているとのこと。

by rawpixel

◆分散チームを構築することは想像以上に簡単で困難
Ghostの開発チームは世界中に存在しています。いろんな国にいる開発陣が働いているのかをどうやって確認し、タスクマネジメントを行うのでしょうか。また、従業員にはどうやって給料を支払い、契約はどう結ぶのでしょうか。こういった疑問への回答は簡単で、「信用できる人を雇う」というもの。なお、こういったチームマネジメントのために利用されるべきツールにはSlack、Zoom、Githubを挙げています。

困難なこととしては、従業員の精神面をうかがい知ることを挙げており、実際に顔を突き合わせて仕事を行うわけではないからこその難しさが垣間見えます。遠隔地にチームメンバーが分散することの本当の課題は「ビジネス面というよりも人間面にある」とO'Nolan氏。

by NeONBRAND

◆オープンソースの開発はこれまで以上に壊れている
Ghostの開発ではGithubをリポジトリとして使用していますが、「Githubは本当に悲しいことになっている」とO'Nolan氏は指摘しています。Githubは、デザイン・アクセシビリティ・セキュリティ・国際化・パフォーマンス・SEOなど、さまざまな要素に問題を抱えているとのこと。

オープンソースにはユーザーが望むように構築することができる「開発者に与えられる自由」があるとO'Nolan氏は指摘しています。Ghostは基本的なソフトウェアを作りますが、ユーザーは自由に自身が望むようにソフトウェアを拡張・統合することが可能です。クローズドソースではこういったことはまずできません。オープンソースのプラットフォームの利点はまさにこの自由度にこそあるわけですが、GitHubはPostgresをサポートしていない点が問題であると指摘。

これはGitHubがトランザクション化されすぎている弊害であり、コラボレーションよりもサポートツールが多いこともこれによる問題であるとしています。


◆ジャーナリズム/テクノロジーのための非営利団体が資金調達する優れた手段は存在しない
過去5年間で得られた大きな驚きが、「ジャーナリズム/テクノロジーのための良質な資金調達手段は存在しない」ということだとO'Nolan氏。

プロジェクトがスタートした際は助成金などを受けることができるだろうと考えていたそうですが、そういった選択肢は一切存在しないことに気付いたそうです。Knight FoundationやMozilla Foundation、Ford Foundation、Google News Initiativesなどからのサポートの可能性も模索したそうですが、こういった組織は自分の国(主にアメリカ)のプロジェクトのみ支援するという形になっており、助成金を与えるための審査は想像以上に複雑だそうです。

Ghostは現時点では資金面に問題はないとしていますが、「野心は大きいもののリソースは限られている」と記しており、今後より大きなアイデアを実現するために巨額の資金が必要になる可能性もあるとしています。プロジェクトをスタートさせた際のようにKickstarterのようなクラウドファンディングで資金を集めることも選択肢のひとつであるとしつつ、何か他にアイデアがあれば「僕のTwitterに気軽に送って欲しい」と記しています。

John O'Nolan (@JohnONolan)さん | Twitter

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in メモ, Posted by logu_ii

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