VR・自動運転車・宇宙探査機への応用が期待される画像圧縮の新規格「JPEG XS」とは?
2018年4月7日からラスベガスで開催されている見本市National Association of Broadcasters(NAB) Showにおいて、画像・映像処理技術を扱うintoPIXが、Adobe Premiere Pro CC用のソフトウェアプラグインとして新規格「JPEG XS」のデモンストレーションを行いました。JPEG XSは、JPEG規格の開発者であるJoint Photographic Experts Group(JPEG)によって策定された新規格で、バーチャルリアリティ(VR)技術や自動運転技術への応用が期待されています。
intoPIX to Unveil Newest JPEG-XS Compression Tech at NAB Show 2018 in Las Vegas – A World First | Business Wire
https://www.businesswire.com/news/home/20180409005607/en/intoPIX-Unveil-Newest-JPEG-XS-Compression-Tech-NAB
A new JPEG format for virtual reality, drones and self-driving cars
https://actu.epfl.ch/news/a-new-jpeg-format-for-virtual-reality-drones-and-s/
1992年に開発が始まったJPEG規格は、ファイルをおよそ10分の1に不可逆圧縮しながらも1677万色を表現できます。元画像よりも圧倒的にファイルサイズを小さくしつつフルカラーを保つことができるため、JPEG規格はインターネットを中心に普及し、「今日では世界中のソーシャルメディアで一日100億~150億枚のJPEG画像が共有されている」といわれるほど、世界的な標準規格となりました。
JPEG規格が開発されてから30年近く経過して、通信技術やメモリ容量が大きく向上したため、JPEG規格の研究グループJoint Photographic Experts Group(JPEG)は、JPEG規格を複数の新しい規格に再編しました。そのうちの1つで、2015年に標準化が開始された規格であるJPEG XSは非圧縮画像や動画の転送を念頭に置き、低遅延かつ軽量にコーディングができることを想定していました。JPEG XSの圧縮率は6分の1となっていて、JPEGよりも低いものですが、その分画質は向上し、より効率的で高速な処理が可能になるといわれています。intoPIXによる圧縮技術が完成したことで、JPEG XSの標準化は最終段階に移行したといえます。
スイス連邦工科大学ローザンヌ校の教授で、JPEGのメンバーでもあるTouradj Ebrahimi氏は「JPEG XSで画像を圧縮しても画質はまったく損なわれません。元の画像・映像と圧縮されたものは専門家が見比べても区別できないでしょう」と語ります。
Ebrahimi氏によると、JPEG XSは画質の劣化を抑えつつ高速で効率的な処理が可能となっているため、ドローンや自動運転の画像認識に応用できると考えられています。また、処理による電力消費が抑えられるため、欧州宇宙機関(ESA)からは宇宙探査技術へのJPEG XSの応用も期待されているとのこと。さらに、JPEG XSをVR技術に応用した場合、ユーザーの頭の動きに応じて素早く画像や動画を表示することができるため、頭の動きとヘッドセット内の光景がズレるために起こる「VR酔い」を解消できる可能性も示唆されています。
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