MicrosoftのAI翻訳は中→英ニュース翻訳を人間の翻訳者と同じ精度でこなせるレベルに到達
By Charlotte90T
Microsoftが開発している人工知能(AI)を使った翻訳技術のうち、中国語を英語に翻訳する技術のレベルが、人間の翻訳者と同等のレベルに達していることが明らかになりました。この結果は、複数の機関や専門家による内容のチェックを経て確認されているものです。
Microsoft reaches a historic milestone, using AI to match human performance in translating news from Chinese to English - The AI Blog
https://blogs.microsoft.com/ai/machine-translation-news-test-set-human-parity/
Achieving Human Parity on Automatic Chinese to English News Translation - Microsoft Research
https://www.microsoft.com/en-us/research/publication/achieving-human-parity-on-automatic-chinese-to-english-news-translation/
中国とアメリカにあるMicrosoftの研究所に所属する研究者らは2018年3月14日、彼らが開発してきた中英翻訳システムが人間の能力に匹敵する正確性と品質を備えていることが確認されたと発表しました。このシステムが行った翻訳は、翻訳品質を確認するためによく用いられるnewstest2017と呼ばれる一連のテストによる評価を受けており、その結果は2017年秋に開催された研究者会議「WMT17」で発表されていました。
Microsoftはその翻訳結果が正確で人間の翻訳者に比べても遜色ないことを確認するために、外部の翻訳評価者を起用してAIによる翻訳と2人の翻訳者が個別に作成した翻訳文との内容比較を実施し、AI翻訳の正確性と翻訳品質が人間のものに匹敵するレベルにあることが確認されています。
Microsoftで、音声・自然言語および機械翻訳関連の研究を率いるテクニカル・フェローのXuedong Huang氏はこの成果について、「機械翻訳で人間と同じ品質に達することは私たちが夢見てきたことでした。こんなに早く実現できるとは全く考えてもいませんでした」と語り、翻訳という最も難度の高い言語プロセッシングタスクにおける大きなマイルストーンであると述べています。Huang氏はまた、「言語の壁を取り去ってより良いコミュニケーションを実現しようとする目的追求は素晴らしいものです。とても実りあることです」とも語り、AIによる翻訳技術が大きな障壁を取り去ることへの期待を表明しています。
By Craig Sunter
機械翻訳のレベルを人間と同じにまで高める取り組みは過去何十年にわたって続けられており、その実現はまだまだ先のことと思われていました。今回は中国語のニュース文章を英語に翻訳する技術レベルの高さが確認されたわけですが、一方ではまだまだ残されている課題もあるとのこと。研究チームの一員であるMing Zhou氏は、今回の結果に興奮を隠せないとする一方で、リアルタイムのニュース翻訳を行う技術などまだまだクリアすべき山は残されていると述べています。
Microsoftの機械翻訳チームで共同研究責任者を務めるArul Menezes氏は、今後チームではもっと普通の用語を用いた一般ニュースに対する翻訳においても同等の品質を確保できるようにするための取り組みに着手しているといいます。Menezes氏によると、この研究によってもたらされる技術的ブレークスルーは、Microsoftが提供する翻訳サービスの品質にも反映されることが期待できるとのこと。今後はより自然に読み・聞きができる翻訳を多くの言語で実現し、構造が複雑な言語や専門性の高い用語についても人間と同等の翻訳品質を実現することを目指して研究が進められる模様です。
By Kelly Parker
・関連記事
Google翻訳は人間レベルの翻訳精度を目指して人工知能を活用 - GIGAZINE
逆翻訳を利用してAIをバイリンガルにする新しい翻訳技術が開発中 - GIGAZINE
より高い品質の翻訳を実現するGoogleの「Transformer」がRNNやCNNをしのぐレベルに - GIGAZINE
Google翻訳のAIは独自の「中間言語」を習得して「学習してない言語間の翻訳」すら可能な段階に突入 - GIGAZINE
英語は今後100年の間に「English」から「Panglish」へ変わる - GIGAZINE
翻訳の間違いから多くの人々の心を掴むことになった20世紀の「火星の運河」論争とは? - GIGAZINE
・関連コンテンツ