ハードウェア

自動運転車を「信号機」として利用するサイバー信号機が開発される


自動運転車の開発が急速に進んでいますが、急に事故が発生して通行できる範囲が狭まった場合など、一時的に変化した道路状況への対応が大きな課題として残っています。そんな中、アメリカの研究者が、自動運転車と無線通信機を使って自動運転車自身を交通信号機にする「サイバー信号機(Cyber Traffic Light)」システムを考案しています。

無線通信を利用した交通信号機を実現 ~ 自動運転車の実用に向けて ~ - Shunsuke Aoki/ 青木俊介
https://sites.google.com/site/cmuaokijp/research/cybertrafficlight

自動運転では、高精細な地図情報の利用や、高精度のセンサーからの情報を機械学習技術を通じて理解することで道路状況を適切に把握することが求められていますが、現実には地図情報がない交差点や突発的な事故によってデータがないケースも多く、公道での自動運転車の運用の障壁となっています。自動運転技術を研究するカーネギーメロン大学の青木俊介さんは、無線通信を使って一時的に目に見えない信号機(サイバー信号機)を作り出すことで、複数の自動運転車を安全に走行させる手法の開発に成功しました。


サイバー信号機は自動運転車に搭載した無線通信機を用いることで、「自動運転車自身が交通信号機として機能する」とのこと。以下のシミュレーションムービーを見れば、サイバー信号機の機能を理解できます。

Cyber Traffic Light for Dynamic Intersection - YouTube


赤い自動車の前方に一時的に通行できない区間が赤いポールで示されています。


片側一車線の道路では、このような場合、反対車線の自動車が途切れるタイミングを待って、走行禁止区間を回避する必要があります。


同じ状況で、反対車線の自動車が通り過ぎるのを待つ2台の自動車がいる状況で……


サイバー信号機が機能すると、無線信号を受け取った緑色の自動運転車はその場で一時停止して、後続車両も停車せざるを得ない状況を作ります。


その間に、赤色の自動車は通行不能ゾーンを迂回しつつ、前方に進みます。停止した先頭の自動運転車は、あたかも赤信号のように後続車を強制的に停車させたというわけです。


赤い2台の自動車が通過したのを確認すると、再び自動運転車は発進しました。


サイバー信号機は、無線通信から情報を受け取ることで正確なトラフィック状況を判断できる自動運転車を信号機代わりにすることで、交通整理をすることができます。自動運転車が一時停止することで半強制的に後続車両を停車させるので、後続車両は必ずしも自動運転車と通信できる必要はなく、人間のドライバーがハンドルを握る一般車両でもOKというのがミソです。事故や道路工事などだけでなく、暴風雨などで自動運転車の各種センサーの信頼性が低下している状況下でも安全性を確保できる手法として期待されています。

青木さんの所属するReal-Time and Multimedia Laboratoryは自動運転車のシミュレーターAutoSimで安全性を確認し、すでにニューヨーク州立大学キャンパス内で自動運転車を用いた実証実験に成功したとのこと。2018年4月13日にポルトガルで開催されるInternational Conference on Cyber-Physical Systems(ICCPS 2018)で、サイバー信号機の詳細な研究発表が行われる予定です。

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in ソフトウェア,   ハードウェア,   乗り物,   動画, Posted by darkhorse_log

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