SIMカードをSoCに統合する「iSIM」をARMが発表、スマートデバイスの省スペース化が加速
複雑な電子機器をより小型化するには、端末内部のスペースが1ミリ単位で重要になってきます。しかし、スマートフォンなどインターネット通信を行う端末に必須なSIMカードおよびそのスロットは、ハードウェアメーカーにとって長らく省スペース化の大きな障害となっていました。そんな中、イギリスの半導体設計の「ARM」が、SoC上にSIMカードを組み込む「iSIM」と呼ばれるコンポーネントを開発していることを発表しています。
Arm Introduces ‘iSim’ And 'Kigen' Solutions For Cellular IoT Connectivity
http://www.tomshardware.com/news/arm-isim-kigen-cellular-iot-connectivity,36557.html
SIM cards could soon be built into processors to save even more space - The Verge
https://www.theverge.com/circuitbreaker/2018/2/21/17030040/isim-arm-iot-sim-card-cellular-mwc-2018
現在広く普及しているSIM規格は、標準SIMが25×15mm、マイクロSIMが15×12mm、nano SIMが12.3×8.8mmというサイズです。それに対してiSIMは、「1平方ミリメートル以下になる」とARMは説明しています。また、iSIMはSoCと統合されているので専用のスロットを用意する必要もありません。端末がiSIMを採用すればスペースを大きく節約できるだけでなく、コストの節約にもなるとARMは主張しています。これがどういうことかというと、SIMカードごとに数十円の費用を支払う必要がなくなり、メーカー側はiSIMごとに数円を支払うだけでよくなるとのことです。
iSIMは独自のKigen OSを採用しており、このOSは既存のエリアから隔絶された状態でセキュア処理を実行する「CryptoIsland」上で動作する低フットプリントOSです。このOSにより、SIM・マイクロコントローラー・無線モデムがSoCに組み込み可能になる、つまりは3つのコンポーネントをSoCにまとめて統合可能になるとのこと。
iSIMは携帯通信サービスを必要とするワイヤレスセンサーのような小型のIoT向けに導入される見込みで、すべてのSIMカードがiSIMに置き換えられるものとは考えられていません。ARMの目標はIoTなどSIMカードを必要とする製品のコストを可能な限り引き下げることであり、今後より増加するIoTデバイスをより賢く作り、管理することが目的です。
iSIMに搭載されるKigen OSのリモートプロビジョニングサーバーソリューションを用いれば、デバイスメーカーは最大10億個のiSIM搭載端末を一度に管理することが可能となります。Kigenサーバーはモバイルネットワーク事業者やIoTサービスプロバイダー、モジュールメーカー、その他のエンタープライズサービスと統合することが可能なため、企業はKigenサーバーを用いて管理しているすべてのIoTデバイスにOTAアップデートを配信することも可能となります。
スマートフォンメーカーがiSIMを導入するかどうかについては、記事作成時点では不明瞭な部分があります。スマートフォンではすでにnano SIMの代替技術となる小型のeSIM(6×5mm)が導入されていますが、業界全体でみればすべての端末がサポートしているわけではなく、普及は遅れているといえます。それでも多くのスマートフォンやタブレットがeSIMを採用しており、Googleの最新スマートフォンである「Pixel 2」もeSIMに対応しています。
ARMはiSIMが通信事業者に歓迎される技術とは考えていないようですが、この技術は必要十分な技術要件を満たしています。なお、iSIM搭載チップの登場は2018年末が予定されており、2018年2月26日開催予定のMobile World CongressでもiSIMの技術詳細について講演する予定です。
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