アート

YouTubeの自動再生で海外に「昔の日本の音楽」が発見されて100万再生を超える


YouTubeの自動再生機能により、日本で1983年にリリースされたレコードの楽曲が言語と時代の壁を超えて世界中に発信され、再生数が100万回を超えるというできごとが起こっています。

How YouTube autoplay gave a lost Japanese classic new life
http://www.dazeddigital.com/music/article/35465/1/midori-takada-through-the-looking-glass-interview

YouTubeの自動再生機能により広まった楽曲は、作曲家・打楽器演奏者の高田みどりさんが1981年にレコードでリリースした自身の初ソロアルバム「鏡の向こう側」に収録されているミニマル・ミュージックの楽曲です。

Midori Takada - Mr Henri Rousseau's Dream (Reel-2-Reel to Digital conversion) - YouTube


ことの始まりは2013年、日本を始め数々国々のレコードなどに収録されている古い楽曲をYouTubeにアップロードしていたブロガーのJackamo Brown氏が、この曲を無断で公開したことでした。YouTubeの自動再生機能の詳細なアルゴリズムは公表されていませんが、Jackamo Brown氏が多数のジャンルに渡って楽曲をアップロードしたためか、「鏡の向こう側」の音楽ジャンルであるミニマル・ミュージックに興味のないユーザーにも「おすすめ」として、この楽曲が表示されて再生されました。その後、Jackamo Brown氏がアップロードしたムービーは著作権侵害の申し立てを受けて削除されていますが、2016年11月6日時点で再生数が100万回を超えていた模様です。


この楽曲コレクターとYouTubeが起こした数奇な事態は、多数の再生回数にも関わらずしばらく進展がありませんでした。しかし、2017年に高田みどりさんが過去にリリースしたアルバム「鏡の向こう側」や「ルナ・クルーズ」などが、海外の2つの音楽レーベル、ニューヨークのPalto Flatsと、スイスのジュネーブにあるWRWTFWW recordによってCDとして再リリースされました。日本国内ではファーストアルバムの「鏡の向こう側」が音高品質のCDフォーマットBSCDで再リリースされています。これらの再リリースにより高田さんの音楽が確実に広がっていきました。

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高田さんは1951年東京生まれで、幼いころからピアノを習い、13歳から打楽器の演奏に取り組み始めます。その後、東京芸術大学へ入学し、在学中にミニマル・ミュージックの技法を磨くために海外を周り、プログレッシブ・ロックとフリージャズに出会います。1978年にはドイツのベルリンフィルハーモニー管弦楽団の打楽器奏者としてデビューします。

高田さんは、音楽レーベルPalto Flatsによるメールのインタビューで音楽について、「音楽は現実と非現実や、常識と常識への対抗、意識と無意識でもあります。私が以前作った音楽は、今では鏡に映った幻像を重ねたようなものです」とコメントしています。高田さんは、ベルリン管弦楽団時代について「時間と共に、私は西洋クラシック音楽とは別の伝統的な音楽が好きになり始めました」とコメントしています。

By Lorenzo Gaudenzi

その後、高田さんはダンスや演劇、パフォーマンスなどの別分野における芸術家と仕事を共にし、女性ボディビルダーのリサ・ライオン氏との仕事などを経て、音楽の勉強のためにフランスのパリで経験を積みます。高田さんは「音楽は単独で発展しません。常に多くのものから影響を受けています」とコメントしています。

当時の日本のではアフリカの音楽などの情報を得るのが難しかったので、伝統的な音楽に興味を持っていた高田さんは、プロの演奏家が来日した時に、伝統音楽を譜面で起こすためにレコーディングさせてもらえるように協力を仰ぎます。その要請をアフリカのガーナの木琴(gyil)の演奏家Kakraba Lobi氏、セネガルの音楽と共に詩・物語など伝える語り部であるグリオのLamine Kont氏、そして韓国の音楽家、池成子氏が受け入れました。

以下の画像の楽器がガーナの木琴(gyil)です。

By Behrouz Far

この出来事について高田さんは「これらの体験は私にとって、とても貴重なものでした。私は、彼らのような音楽家に会うことはもうないだろうと思います。彼らから多くのものをもらいました」と語っています。また、伝統的な韓国音楽のリズム構成が陰陽から多くの影響を受けているのに着目し、「このことを理解し始めると共に、私はバランスを保つ重要性を意識するようになりました」とのこと。

以下画像の楽器が池成子氏が演奏に使う韓国の楽器、カヤッコです。

By Tonio Vega

その後、ミニマル・ミュージックと伝統的なアフリカ音楽のドラム演奏を統合したミュージックのチーム「ムクワジュ・アンサンブル」として活動し、1981年にはジブリ作品など数々の映画音楽も手がけた久石譲氏のプロデュースにより、2枚のレコード「ムクワジュ」と「樹・モーション」をリリースしました。その楽曲は日本のミニマル・ミュージックの先駆的作品と評価されています。

しかし、その後にグループは経済的理由で活動を停止。高田さんは「メンバーの中には東京の外で職を持ったものもおり、グループとして活動することが困難になりました。その時、ソロ活動を考え始めました」とメールインタビューにつづっています。

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そして、1983年に高田さんが32歳のときに、ソロ活動の第一歩として「鏡の向こう側」のレコーディングを行います。東京都内のスタジオで2日かけて集中的なレコーディングを行い、打楽器、チャイム、レコーダー、リードオルガン、そしてピアノなどを使ってアルバムに収録されている4曲を作り上げました。レコーディングについて高田さんは「それぞれ楽曲の構図は私の頭の中にあり、絵画を塗り重ねるように音を重ねました。これには大量のエネルギーを集中して注ぎ込むことが必要でした。このアルバムを作った時代には、私の挑戦的な音楽は全く認められなかったと思います。海外から再リリースの提案された時、始めは驚きました」と説明しています。

By Justin De La Ornellas

鏡の向こう側を再リリースした海外の音楽レーベル、WRWTFWW recordの共同創立者Olivier Ducret氏は、アルバムに収録されている曲を初めて聴いたのは、週末に行われた1990年代初頭の楽曲をテーマにしたリスニングセッションとのこと。Ducret氏は「おぼろげな記憶ですが、聴いている間は夢のようで、楽曲は個性的で記憶に残りました」と回想します。

もう一方の海外の音楽レーベルのPalto Flatsに関しては、クラブの音楽シーンが関係します。2008年にイギリスの人気DJ Optimoが、無国籍なボーカル、エスニック・サウンドを生み出していた日本の音楽制作集団「マライア」が1983年リリースしたアルバム「うたかたの日々」をネット上でオススメとして紹介しました。その後、レコード楽曲のフェスティバル「Crate Diggers」で好評を得てクラブシーンで人気を集めたことから、「うたかたの日々」がアメリカのPalto Flatsにより再リリースされます。この一連の流れにより、80年代の無国籍的な楽曲のレコードを研究していたPalto Flatsのオーナー・Gorchov氏の目に「鏡の向こう側」が留まり、2015年に再リリースされることとなります。

By Andy Roberts

2016年のアルバムの再リリースに伴い、ロンドンやパリ、ベルリン、そして東京など世界各国をまわるコンサートツアーが行われ、各地でチケットが完売するなどの大成功を収めました。

以下のムービーがドイツで行われた映画祭での演奏の様子です。

Radio Azja: Midori Takada w Warszawie - YouTube


イギリスのメディアThe Guardianや音楽専門サイトのPitchforkで大きく取り上げられ、称賛を受けました。

Ambient pioneer Midori Takada: 'Everything on this earth has a sound' | Music | The Guardian


2017年11月にコンサートのためスイスのジュネーブで滞在した時には、スイス公共放送(RTS)の報道番組でWRWTFWW recordの創立者と共にインタビューを受けています。

【打楽器奏者・高田みどり】スイス公共放送が紹介 - YouTube


このインタビューの中で高田さんは、最初のアルバムが再販売されてコンサートを行っていることについて、「このことは本当に奇跡だと思います」とコメントしています。

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