レビュー

「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」の公式設定資料集「MASTER WORKS」が圧倒的情報量でもう一度冒険に出発したくなる読み応え


A4判416ページという大ボリュームに「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」の設定資料をこれでもかというくらいに詰め込みまくった公式設定資料集の「MASTER WORKS」が、2017年12月15日(金)に発売となりました。これはゼルダの伝説シリーズの30周年を記念した書籍の第3集となっており、第1集・第2集とは異なり「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」のみにフィーチャーした内容となっています。発売日がちょうどDLC第2弾の「英傑たちの詩」が配信開始となった次の週で、ゲームをクリアしてやりきった感あふれる中で読んでみたところ、速攻で再びハイラルの大地へ舞い戻りたくなる感動の出来栄えでした。

これがゼルダの伝説シリーズ30周年を記念書籍の第3集となる「MASTER WORKS」。


帯を取るとこんな感じ。真ん中にはシーカー族のシンボルマークがあります。


Nintendo Switchとサイズを比べるとこんな感じ。A4判なのでサイズ的にも大きめ。


厚さもかなりのもので、もはやアートブックというよりは図鑑か何かのようです。


掲載されている設定資料はかなり多岐にわたっており、リンクやゼルダ姫、英傑といったメインの登場人物だけでなく、ハイリア人やゴロン族などのNPCに関する情報から、魔物や動物などのゲーム中で登場する生き物、中央ハイラルやハテール地方といったゲーム上の土地まで、あらゆる情報がこれでもかというくらい掲載されています。キャラクターに限らず各要素がどのようにデザインされていったのかが、時にはデザイナーが描いたラフ画で、時にはプロデューサーやイラストレーターなどの言葉から、時にはバックグラウンドについて書かれたテキストで知ることができます。なお、CHAPTER.3 HISTORY以降はハイラルの歴史をひもといていく内容となっているので、ネタバレ成分も多め。よって、全クリ後にじっくり読むのがオススメです。なお、MASTER WORKSの目次は以下の通り。

◆CHAPTER.1 ARTWORKS
・Illustrations
・Character Art

◆CHAPTER.2 MAKING
・リンク
・ゼルダ姫
・ガノン
・英傑
・ハイリア人
・シーカー族
・ゾーラ族
・ゴロン族
・リト族
・ゲルド族
・各地の妖精たち
・魔物
・生き物
・武器・盾
・服・アクセサリー
・素材
・古代シーカー遺物
・中央ハイラル
・ハテール地方
・ラネール地方
・アッカレ地方
・オルディン地方
・へブラ地方
・ゲルド地方
・フィローネ地方
・点在する施設
・英傑たちの詩

◆CHAPTER.3 HISTORY
・ハイラルの地理と地図から見る歴史
・ハイラル史 ~年表と出来事~
・1万年前 ~伝承~
・約100年前 ~厄災対策~
・大厄災 ~滅亡~
・現代 ~勇者回生~
・年代不明遺跡 ~ハイラルの神秘~

◆KEY PERSON INTERVIEW 開発を終えて

カバーを外すと中にもシーカー族のシンボルマークがあります。


◆CHAPTER.1 ARTWORKS
CHAPTER.1ではゲームのタイトル画面で使用されているイラストや、パッケージイラスト、MASTER WORKSで初出となるイラスト、公式Twitterの告知用イラストなど、これまで公開されてきたイラストの数々が掲載されています。


ただイラストが掲載されているだけでなく、例えばゲームのタイトル画面にも使用されているリンクが崖を登るイラストならば、完成までの過程でさまざまな構図のものが検討されており、その中には初代「ゼルダの伝説」の構図(右下)と同じものも検討されていたことが明かされています。これは初めて「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」をプレイした際に、イラストレーターの和田拓さんが「初代と何か共通するようなエッセンスを感じたから」だそうです。こんな感じで見慣れたイラストのさまざまなパターンが見られるというのはとても得した気分になります。


初代リンクからマスターソードを受け取るリンクを描いたイラストは、週刊ファミ通で初出となったもの。雑誌に掲載されるイラストなので、ゲームに詳しくない人の目に留まったときに、今回の青い服のリンクでは「ゼルダの伝説と理解していただけないのでは?」ということで、初代リンクを一緒に描き、過去から現在へと引き継がれてきた思いを表現しているとのこと。


イラストによってはラフ案や制作過程が一緒に掲載されているものもあり、何かがひとつ違ったらこれらの構図が採用されていたのかもしれません。


日本ではあまり見かけない北米バンドルセット用のイラスト。広大な世界にリンクが立ち向かうようなイラストが多い中、北米向けに描かれたものはリンクと風のカースガノンが戦いを繰り広げるような構図となっており、よりアクション性と迫力が高いイラストと言えます。


◆CHAPTER.2 MAKING
CHAPTER.2では、キャラクター・生き物・武器・服・フィールドなどゲーム中に登場するあらゆる要素をどのように作り上げていったのかがわかる設定資料が山盛りになっています。

最初に登場するのは主人公のリンク。リンクの人物説明と、最終的に決定したデザインが始めに掲載されています。ただし、イラストはパッケージイラストなどのタッチとは異なり、独特の雰囲気をかもし出しています。


「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」では完成したヒーローではなくいろんな意味でニュートラルな感覚のキャラクターを目指してデザインが進められ、その中でシリーズのトレードマークである「緑色の服」と「緑色の帽子」を刷新しようということで、青色の服になっていったそうです。なお、青沼英二プロデューサーいわく「スタッフの誰かが『そうしよう!』と言ったわけでもなく『自然とそうなった』」とのことです。


検討稿の中には現代風の洋服に身を包み、バイクにまたがりギターを弾くというこれまでにないリンクの案も。「英傑たちの詩」で登場したマスターバイクは、このイラストがなかったら登場しなかったアイデアかもしれません。


また、時々ですが以下のようにページの端が青色になっている場所があり、ここにはキャラクターや生き物などのゲーム中では詳細に描かれてることのないバックグラウンドが記されています。例えばリンクならば、大厄災で記憶を失う前は退魔の剣に選ばれたことや家柄もあり、感情を表に出すことができず無口で無表情になってしまったこと、しかしゲーム中のリンクは回生の眠りから覚めて記憶が欠落してしまったおかげで、大厄災前よりも感情表現が豊かで言動が明るくなったことなどが記されており、ゲームをプレイする中で感じたちょっとした違和感や疑問を解決するヒントになってくれます。


ヒロインであるゼルダ姫のパートでは、リンクよりも洋服や装飾品、髪型、表情などについて事細かに設定が記されています。ゼルダ姫の髪型がどのようになっているのかまで描かれているので、髪の長い女性ならば実際に挑戦してみることも可能。


過去シリーズでもヒロインとして登場し続けてきたゼルダ姫。過去作ではどちらかというと「気品あふれる聖なる姫」であり近づきがたいイメージが強かったのですが、「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」では王女というよりも共感できる等身大の少女という側面に重きを置いてキャラクターを作り上げていったそうです。そんなゼルダ姫の検討稿には以下のような現代風のラフな洋服に身を包んだイラストも混じっていました。


さらに、冒険の中でリンクに力を貸してくれる英傑たちの設定資料もあります。初期の検討稿では「ゼルダの伝説 時のオカリナ」で登場したコキリ族に似たキャラクター(右下の緑色)などが描かれています。


制作が進む中で英傑はゾーラ族・ゴロン族・リト族・ゲルド族からひとりずつ登場するということに決まるわけですが、例えばゾーラ族の英傑ミファーにおいても、さまざまな案が練られていることがわかります。検討時はリュウグウノツカイやカサゴなどをデザインのモチーフにした案もあったそうですが、最終的にはイルカをモチーフにしたアイデアに落ち着いています。


ゴロン族の英傑ダルケルは、「ゼルダの伝説 時のオカリナ」で登場したダルニアをイメージしてデザインされているそうで、ダルニアがリンクを「キョーダイ」と呼んでいたことから、「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」のダルケルにリンクを「相棒」と呼ばせることに決めたそうです。


もちろん英傑だけでなく、ゲーム中に登場するさまざまなキャラクターの設定資料が見られます。例えばカブトムシが大好きなさすらいの行商人・テリーは、巨大なカブトムシ型のリュックサックのどこに何がくっついているのかや、会計用の会計皿がどんなデザインでどこに置いてあるのか、テリーを日差しから守ってくれる折りたたみ式の簡易テラスがどこからどんな風に設置されているのかなど、かなり細かなところまでチェック可能。


他にもハイリア人のモブキャラに至るまで、詳細な設定資料が掲載されています。ただし、掲載されているのは見た目の資料だけでなく、「ハイリア人には行動力や好奇心にあふれた者が多く、多種族の集落への観光に赴いたり、行商人としてさまざまな土地で商売をしたりと、魔物の巣食う地でも強く生きる者たちが各地に存在」といった風に、種族ごとの細かな設定も書かれています。


今回のシーカー族は「和」のテイストが強めでしたが、検討稿でも着物風の衣装に身を包んだものが多め。


ゲームの中では比較的珍しいリンクと同じくらいの年頃のキャラクター・パーヤ。パーヤもゼルダ姫と同じく髪型がどうなっているのかが描かれており、若い女性キャラクターは見た目がかわいらしいものでありながら、細かい部分のリアリティを持たせて描かれていることが伝わってきます。


ゴロン族における無と哀の表情


作中でリト族は弓矢に秀でた種族として描かれていますが、検討時には足で弓矢を扱うリト流弓術なるものが考案されていた模様。


「ゼルダの伝説 風のタクト」で登場したリト族からガラリとイメージの変わった今作でのリト族。これは種族間の特徴をより際立たせるために、鳥らしいシルエットを強調したかったことが一番の理由だそうです。


ゲーム中のいたる場所に登場するコログ族の妖精たちは、個体ごとにより異なる見た目のものも検討されており、これはこれでかなりキュート。


各地で登場する魔物の設定資料。オクタロックのパートでは、「夜は目が光る」「雨が降ると普段より凶暴になる」「擬態を見破って先制攻撃すると、びっくりしてピヨる」「そんなに賢くないのでプレイヤーを発見しても見失うとすぐ忘れる」など、設定が事細かに書かれており、任天堂にオクタロックマニアがいることがうかがい知れます。


さらに、フィールド上で登場するボスモンスターのヒノックスについては、キュートなラフ画でいろいろなアクションが検討されています。特に真ん中の橋の上に座って通行を邪魔するヒノックスが、縁側に座る太ったおじいちゃんみたいでキュート。


魔物だけでなく、ゲーム中で登場するさまざまな生き物の設定資料も公開されています。泉の使いである3匹の精霊は、龍として認識できる一方で既視感のないものを模索してデザインされたそうで、顔と体は犬やヤギなどの哺乳類、腕は鳥と人の要素を取り入れているとのこと。また、出会い方によっては恐ろしくも愛らしくも見えるように、できるだけいろいろな印象を持ってもらえるようなニュートラルなデザインを目指しているそうです。


ゲーム中で登場する武器・盾の数々も網羅されています。武器や盾はそれぞれ特徴的な形状をしながらも見た目で強さを判断できるようにデザインされているとのこと。確かに、錆びた装備→旅人の装備→兵士の装備→騎士の装備→王家の装備→近衛の装備、といった具合に装備品のグレードが上がるにつれ見た目がより華美になっていて、ゲーム中の記憶をたどっても見た目で簡単に装備の強さを判断できていたことが思い出されます。


ゲームスタート時のリンクの服装は、「コールドスリープする際にシーカー族に着せられたパンツという設定です」とのこと。


古代テクノロジーとしてリンクの冒険で多大な貢献をしてくれるシーカーストーンでは、バクダンやビタロック、マグネキャッチなどさまざまな機能が使えますが、これら以外にもトンボ型のドローンなどさまざまなアイデアが寄せられていたことがわかります。


また、ゲームプレイ時にふとよぎる「どうやってバクダンを使っているの?」などは、テキストでしっかり解説してくれていました。設定資料を見ていると、詳細に説明されていなくても「検討時のアイデアが最終的にこうなったというのか」とイメージできるものも多々あり、見ているだけで「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」がどのように作られてきたのかが感じられます。


ステージや土地の設定資料の中には、廃墟と化したハイラル城下町が廃墟になる前の姿も。


◆CHAPTER.3 HISTORY
そしてCHAPTER.3では、ハイラルの歴史を地図や年表にしてひもといていくことができる資料がてんこ盛りになっています。地図と組み合わさっているため、大厄災時の英傑たちの進行経路やハイラル城からの撤退ルートなどが視覚的にわかり、実際にゲームをプレイしているだけではわからないハイラルの歴史の一端に触れられるようになっています。


ハイラルの年表まで用意されており……


さらに、各種族ごとにどのような文献を残しているかまで記されています。これによると、ハイラル人・シーカー族・ゾーラ族は古くから世界や種族の歴史を書き残しているようですが、ゴロン族・リト族・ゲルド族は昔の情報が文献としてはほとんど残っていないようです。


その他、シーカー族からどのようにしてイーガ団が生まれたのかや……


100人以上いる古代シーカー族の導師たちの見た目の違いというかなりマニアックな情報までチェック可能。


そして、シーカーストーンやガーディアン、試練の祠などを代表とする古代の技術がどのような機能を持っており、太古の昔・100年前・現在でどのような使われ方の違いがあるのか、まで記されています。例えばハイラル城の周りに存在する4つの古代柱はガノンの怨念によりピンク色に発光し不穏な空気をかもし出していますが、その本来の機能はガーディアンの格納庫です。


他にも、「白銀」と呼ばれる魔物は、復活した勇者リンクに危機感を抱いた魔物自身や厄災ガノンの影響で凶暴化した姿であることなどが記されています。白銀の魔物の体表に見える紫色の模様はガノンの影響を受けた証だそうです。


◆KEY PERSON INTERVIEW 開発を終えて
さらに、巻末には「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」の藤林秀麿ディレクター、アートディレクターの滝澤智さん、イラストレーターの和田拓さん、青沼英二プロデューサーのインタビューも掲載されています。各人がそれぞれ異なる目線で「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」について語っており、開発現場での細かなこだわりから秘められた思いまで知ることができるので、一見の価値ありです。


MASTER WORKSの初回出荷分限定で、数量限定特典の「英傑たちのウツシエカード」が付いてきます。内容は「『英傑たちの詩』のクリア後に開封いただくとよりお楽しみいただける内容となっています」とのことで、クリアしていれば中身にピーンとくるはず。


なお、「MASTER WORKS」はAmazonで税込4968円で販売中です。

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in レビュー,   ゲーム,   デザイン, Posted by logu_ii

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