「ブレードランナー 2049」に出てきたロサンゼルスの町並みはミニチュアで作られていた
映画「ブレードランナー 2049」の舞台は前作「ブレードランナー」と同じくロサンゼルス。ごみごみとした町並みはそのまま健在で、予告編などからも前作への強いリスペクトを感じますが、単に「雰囲気を真似した」だけではなく、町並みをCG合成するのではなくミニチュアで作成するなどのこだわりが隠されていました。
Weta Workshop - Blade Runner 2049 Miniatures - YouTube
この映像はVFX制作会社のWeta WorkshopがYouTubeで公開しているものです。
最初に映像に登場したのはアレックス・フンケ氏。1990年の「トータル・リコール」で視覚効果によりアカデミー賞特別業績賞を受賞した人物です。「ブレードランナー」は「ビジュアルアート」という側面から見て映画史で極めて大きな役割を果たした作品なので、その続編である「ブレードランナー 2049」でミニチュアを用いてロサンゼルスを表現するという点はとても興味深いものだったと語っています。
まずは、主人公・Kの勤務先であるL.A.P.D(ロサンゼルス市警)の建物について。
作中で30年という時間が流れてロサンゼルスには多くのビルが建ち、その中でも特に大きい建物がロサンゼルス市警であるという前提でデザインが行われました。
デザインが大まかに固まったらプリビズで確認作業を行い、デザインにOKが出た時点で3Dモデラーによって、建物の3Dモデルが作られます。この3Dモデルはパーツが細かく分割されていて……
3Dプリンターでパーツを印刷。
そこからミニチュアを組み立てていきます。
Kの住居の外観。換気扇や室外機などが取り付けられ、落書きまで書き込まれています。
「ミニチュア」といってもかなり巨大なので、運ぶときは二人がかりだったりします。
ミニチュアの中には照明や航空障害灯の表現のために光ファイバーケーブルが通されています。
続いては、ごみの山のシーン。
鉄骨のような大きなものから、細かくてなんだかわからないものまで、ありとあらゆる種類のごみが散乱していて、CG作成はさぞ大変だっただろうと思っていたら、これもミニチュアで作られていました。
古ぼけた塗装になるように色を重ねています。
こちらはたるんだ電線の取り付け中。
このミニチュアワールドをクレーンカメラで通過すると……
まるでゴミの山の中を飛び抜けているような映像になります。
最後は「ウォレス・タワー」。レプリカントの製造を行っているウォレス社の建物です。
大きさは作中の設定で高さ3.5kmほど。緑色の板はミニチュアの表面に張られるパネルで、ノギスで示されたわずかな長さが人間の身長に相当するとのこと。
そのため、特に巨大なミニチュアが作られました。塗装作業を見ていても、とてもミニチュアの壁面を塗っているとは思えません。
アップにするとこんな感じ。目地の1つが人間ほどの大きさに相当します。
ずっと雨が降っている薄暗いロサンゼルスの町並みは、実はニュージーランド・ウェリントンにあるWeta Workshopのスタジオの中にあったというわけです。
背景となっているロサンゼルス市警の建物がミニチュアだとはとても思えませんが、「ブレードランナー」の大ファンだというWeta Workshopのスタッフたちの腕がそれだけすごいということです。
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