「スーパーコンピューター」を宇宙ステーションへ打ち上げる計画をSpaceXが実施へ
By NASA's Marshall Space Flight Center
SpaceXは2017年8月14日、新たにFalcon 9ロケットを打ち上げる予定です。今回のミッションで国際宇宙ステーション(ISS)へと運ばれる貨物の中には、これまでで最も演算能力が高いコンピューターが含まれています。
SpaceX to launch most powerful computer ever sent to space station - Aug. 12, 2017
http://money.cnn.com/2017/08/12/technology/future/spacex-nasa-supercomputer/index.html
アメリカ現地時間の8月14日12時31分に打ち上げが実施されるCRS-12ミッションは、SpaceXのドラゴン宇宙船を使って貨物の補給を実施する予定となっています。ドラゴン宇宙船は約2日後となる8月16日の午前7時ごろにISSへと到達し、NASAとESA(欧州宇宙機関)の宇宙飛行士がISSのアームを操作してドッキングすることになっています。
By NIH Image Gallery
この時の貨物に含まれているのが、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)が販売しているスーパーコンピューターです。「Spaceborne Computer」と呼ばれているこのスーパーコンピューターは、一般的に販売されているPCの30~100倍の処理能力を備えており、宇宙で得られたさまざまな観測や実験のデータを現地で処理するために使われる予定です。
打ち上げられる機材はこんな感じ。スーパーコンピューターとはいうものの実際には「サーバー」に近いもので、ISSの船内にあるノートPCなどからデータを受け取り、内部で処理をおこなって必要なデータを解析するために使われることになっています。
最先端の研究が行われているISSですが、実際に宇宙飛行士が使用しているコンピューターは地球上で一般の人が使っているものと基本的にほぼ同一で、むしろ数世代古いものが使われていることが多いとのこと。これは、宇宙の無重力環境で、しかも多くの宇宙線が降り注ぐという、電子機器にとって過酷な環境でも確実に動作することを確認してから打ち上げられているため。仮に最先端の機材の導入が決められたとしても、地上で検証を行っているうちに「すこし時代遅れ」なスペックのものになってしまうことが避けられないという状況があります。
そのため、たとえ実験や観測などで多くのデータが得られたとしてもISSの船内で処理を行って解析をすることは難しいという状況があるとのこと。船内で処理ができないために、現状ではISSと地球を結ぶ無線回線で大量のデータを送り、地上の科学者がそのデータを解析して研究に役立てているのですが、写真データ1枚だけでも数GBに達するというデータを送信しなければならないため、多くの通信帯域を消費してしまっています。
その状況を改善するために打ち上げられるのが、今回のスーパーコンピューターというわけです。ただし打ち上げられてすぐに本格的な稼働が始まるわけではなく、まずは電源を投入して無事に起動するかどうかをチェック。その後、約2時間半をかけて全体が問題なく動作しているかを確認します。各部の動作が確認されたら、やっと実際の処理が始まるのですが、まずは1年間のスパンで動作を検証しながら、問題が起こらないかを確認することになっています。先述の通り、地球のような空気層を周囲に持たないISSには、高いエネルギーを帯びた宇宙線が次々と降り注いでいる状況であり、これがコンピューターの動作に影響を及ぼし、機器を破壊してしまうこともあります。そのような環境でも無事に動作できるかどうかを十分な時間をかけて確認するという、宇宙開発ならではの緻密な確認作業プログラムが組まれているとのこと。
スーパーコンピューターが無事に動作することが確認されると、その後はより多くの機材をISSへと運ぶことで研究に役立てられるほか、今後予定されている火星探査の際にも同様の装置が導入されることになるとのこと。地球から遠く離れた火星に向かう際、宇宙船と地球を結ぶ通信環境は常にベストな状態とは限らず、しかもあまりに遠くなるために通信電波が届くまでのタイムラグが生じます。そのため、宇宙船内で起こったことは基本的にその場で全て解決する必要が生じることになりますが、その時に必要になってくるのが、今回のような処理能力の高いコンピューターというわけ。今後の宇宙開発のために役立てられるかも知れないコンピューターの検証が、まもなく行われようとしています。
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