地中海式ダイエットを成功させて健康になるために必要なものは実は「お金」と「教養」

By Leadership Programs

野菜とオリーブオイルを中心とした食事をとる「地中海式ダイエット」(地中海式食事法)は文字どおり地中海地域で昔から続けられてきた食事スタイルのことで、健康面に良い影響を与えるとして雑誌やテレビ、ネットなどで取り上げられています。しかしその実態を調査した研究によると、この食事法で実際に健康を手に入れた人の多くは、裕福で高い教育を受けた人に偏っているという事実が明らかになっています。

The Moli-Sani Project, a randomized,... | Iacoviello | Italian Journal of Public Health
http://ijphjournal.it/article/view/5886

The Mediterranean diet works for the wealthy and well-educated — Quartz
https://qz.com/1045037/the-mediterranean-diet-works-for-the-wealthy-and-well-educated/

この研究はイタリアの科学者チームが実施した「Moli-Sani Project」で実施されたもので、35歳以上の約1万9000人を対象に健康状態を調査しています。その結果、平均で15%の人で心臓血管の健康状態のリスクが改善されており、これは健康状態を表す尺度に直すと2段階の改善に相当するレベルとのこと。

しかし、詳細な調査を続けたところ、その効果には「格差」が存在していることが浮き彫りになってきています。対象者を裕福さと教育レベルの要素でブレイクダウンしたところ、中等教育以降の教育を受けた人の場合だと同様のリスクが57%も改善されたほか、年収が4万ユーロ(約520万円)以上の層だと改善率は実に61%にも達したことが明らかになっています。一方、社会経済的に低い位置にランクする人の間では、この効果は見られなかったとのこと。

論文執筆者の一人で伝染病学者のマリアローラ・ボナッチオ氏はその違いの理由について「地中海式食事法を適切に守ることだけで健康になれるというわけではありません。この方法で効果を得るためには、食材の量や回数よりも大事な要素があると考えられていますが、その一つは『食材の質』であると見られています」と取材に答えています。

By Meal Makeover Moms

地中海式食事法は、魚や酪農製品、肉の量を減らして、植物を中心とした食材を摂るというスタイルなのですが、規定がそれほど細かくないために、実際の食事内容には人によって大きな隔たりが存在しています。今回の調査でも、その内容は社会経済的な層によって違いが認められたとのことで、傾向としては受けてきた教育のレベルが高くなるほど、摂っている野菜の種類が増え、全粒穀物やオーガニックな野菜を多く食べていることが判明しています。

また、教育レベルが高いほどオリーブオイルなどに含まれる一価不飽和脂肪を多く含んだ食材や、カルシウム、ビタミンD、繊維質を多く含む食材を摂っていたことも明らかになっています。一方、収入が多い裕福な層は低所得者層に比べて、全粒粉パンや果物、ナッツ類、魚、そして肉を少なめに食べていることがわかっています。

By Porto Convention & Visitors Bureau

今回のイタリアでの調査だけでは、なぜ収入と教育レベルが健康状態に影響を与えるのかは不明なままですが、アメリカで実施された同様の調査でも、経済状態によって栄養素の摂取状況に際が生じていることが明らかになっているとのこと。

この結果についてボナッチオ氏は、「社会経済的に高い位置に属している人たちが、普段食べている食べ物が何であるかを気にかけていること、そしてより健康な食事スタイルを実現できるだけの物質的リソースを持っている、と考えることが理にかなっています」と語っています。