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マッハ5超で飛ぶ超音速機の2030年までの実用化を目指してしのぎを削っているのはアメリカと中国


航空機がマッハ(音速)を超える速度で飛ぶためには多くの条件をクリアする必要があり、これまでにマッハ超えを果たした機体は超音速旅客機「コンコルド」を除けば世界各国の軍用機に限られている状態です。マッハ超えの際に生じる衝撃波による環境への悪影響や、高いコストなどで開発が限られてきた超音速航空機ですが、現在アメリカと中国がしのぎを削るようにその開発を進めているとのことです。

American and Chinese aircraft could be flying 4,000 miles per hour by 2030 | Popular Science
http://www.popsci.com/hypersonic-arms-race-china-united-states

アメリカのロッキード・マーティンが研究を進めているのが、最高速度マッハ6を発揮する軍用極超音速無人航空機の「SR-72」です。ロッキード・マーティンの中でも軍事関連の開発を行うSkunk works(スカンクワークス)と呼ばれる部門が研究しているもので、2030年までの初飛行を目指しているとのこと。


1960年代から80年代にかけて実戦配備されたSR-71に続く名称を持つSR-72は、通常離陸後にマッハ3まで加速するジェットエンジンに加え、極超音速域で推力を発生するのに適しているデュアルラムジェットエンジンを搭載する「TRCCエンジン」(Turbine Rocket Combined Cycle」というシステムを用いることで、高度3万メートルから10万メートルの間でマッハ6という極超音速飛行を可能にします。TRCCエンジンは、通常のジェット戦闘機に搭載した状態での飛行を2020年までに実現し、2030年までに機体を完成させて実戦配備の状態にすることが目指されています。

アメリカ陣営でもうひとつ極超音速航空機の実現を目指しているのが、DARPA(国防高等研究計画局)の援助を受けたボーイングが研究を進めているスペースプレーン「XS-1」です。


XS-1は翼を持つ飛行機とロケットを組み合わせた形式のスペースプレーンで、液体燃料を使って超音速飛行を行う第1段でペイロード(打ち上げ貨物)を高度3万メートルから10万メートルの高高度まで運び、第2段ロケットに点火してペイロードをさらに高い宇宙空間へと運び上げるというもの。最大で1.5トンというペイロードを打ち上げ可能で、第1段は飛行後に空港へと戻り、24時間以内に再打ち上げすることが可能になるという構想です。

一方、中国で宇宙開発を進めている国有企業・CASIC(Chinese Aerospace Science and Industry Corporation:中国航天科工集団)も同様の機体の開発を進めているとのこと。同組織が開発を進めているスペースクラフト「Teng Yun」はXS-1と同じような2段式打ち上げを実現する航空機ですが、大きく異なるのは第2段ロケットが再利用可能になっていることで、2トンまで貨物または5人の宇宙飛行士を打ち上げることが可能になるとされています。


打ち上げ時のイメージ画像では、大きな第1段の上に小型の第2段ロケットをのせた状態で打ち上げられる様子がわかります。また、第1段のみを使うことで、10~15トン程度のペイロードを運ぶことも可能で、軍事的な目的に用いることももちろん可能なものとなっているとのこと。


中国でもうひとつ、同様の研究を進めているのが、こちらも国有企業であるCASC(China Aerospace Science and Technology Corporation:中国航天科技集団公司)です。CASCは2016年8月、極超音速飛行機に関するエンジン技術「TRRE (turbo-aided rocket-augmented ram/scramjet engine)」を2020年までに完成させ、2030年までに実物大の機体での飛行を実現させる計画を発表しています。


CASICの「Teng Yun」やボーイングのXS-1と同じく、CASCでは再利用型の打ち上げロケットを計画中とのこと。ロケットエンジンを用いた部分的再利用可能ロケット、ロケットエンジンを用いた完全再利用可能ロケット、そしてTRREエンジンを使った完全再利用可能ロケットの開発を段階的に進めていく計画になっている模様。


この開発により、CASCは人や貨物を宇宙空間へと運ぶ技術の確立を目指しているほか、第2段に乗客を乗せた宇宙観光飛行も視野に入れているとのことです。

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in 乗り物, Posted by darkhorse_log

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