「チケット転売問題」はなぜ起きるのか、サンフランシスコ・オペラのケース
By Chris Locke
1923年創業の由緒正しい劇場「サンフランシスコ・オペラ」では多くの著名な音楽家が公演を行っているのですが、Box Office Ticketsなどのチケット転売サイトの影響により、公演チケットが定価の約2倍近くに高騰するという問題が起きています。日本ではチケット転売問題に多くのアーティストが賛同するという動きが見られましたが、なぜアメリカではチケットの転売問題が継続しているのか、価格最適化ソフトウェアを提供するPerfect Priceのブログで考察が書かれています。
The problem with San Francisco Opera ticket prices
http://www.perfectprice.io/blog/opera-pricing-strategy-problems
◆サンフランシスコ・オペラの現状
Box Office Ticketsは自社ウェブサイトについて「アメリカ・カナダにおいて1000以上の劇場を取り扱うトップクラスのチケット提供サイト」と説明しています。Box Office Ticketsではサンフランシスコ・オペラ(SFオペラ)のチケットも取り扱っているのですが、定価で販売しているわけではなく、簡単に言えば「安く買って高く売る」ことで利益を得ています。Perfect Priceによると、このビジネススタイルはフラッシュ取引に酷似しているとのこと。
例えば、SFオペラのウェブサイトから「Dream of the Red Chamber」という公演のチケットを購入すると、1枚あたり170ドル(約1万7700円)と、手数料として12ドル(約1250円)という価格が付けられています。
同じ座席のチケットをBox Office Ticketsで購入すると、チケットが1枚あたり265ドル(約2万7600円)、手数料が74.2ドル(約7730円)という高額な値段設定になっているのがわかります。ほとんどのチケット転売会社は48.6%もの粗利益を設定しているのですが、Box Office Ticketsなどにチケットを卸しているダフ屋が劇場からチケットを買い占めているため、顧客がチケットを入手するには定価の約2倍の金額を出さざるを得ないようになっています。
◆価格変動設定(ダイナミック・プライシング)の失敗
ダイナミック・プライシングとは需要状況に応じて価格を変動させることで需要の調整を図る手法のことですが、SFオペラでは公演ごとに値段が大きく変動することはありません。一方で、人気の著名人の公演に人気が集中するなど、市場が変動的であるにもかかわらず価格設定が変動しないため、需要と供給のバランスが釣り合っていない状況が生まれています。そのためBox Office Ticketsのような転売サイトが介入し、需要に応じて約2倍もの価格設定ができるようになっているわけです。
◆チケットの高額転売が行われる仕組み
最初にダフ屋が劇場やスポーツチームから大量のチケットを購入する代わりに、ダフ屋は定価以下でチケットを仕入れることができます。アメリカの主な劇場やスポーツチームはほとんどがダフ屋にチケットを販売しているのですが、これは顧客が高額なチケット代金を現金で持ち歩くことで強盗などに狙われるリスクを回避する意味合いもあるとのこと。
また、ダフ屋を通じてBox Office Ticketsでチケットが販売されると、顧客はローンなどでチケットを購入できるという利点も発生するほか、劇場・スポーツチーム・アーティストはダフ屋にチケットを販売してまとまった資金を得ることができるため、半ば黙認されているという見方もあります。一方で、Box Office Ticketsのような転売サイトは暴利をむさぼっているわけではなく、高額転売によって得た利益を使ってGoogleに広告を出すことで適正なユーザーにターゲティング広告を出しており、需要を予測して正しい値段を付ける努力を行っているとのこと。
◆チケットの転売は違法なのか?
アメリカでは州によって法律が異なるものの、少なくともSFオペラがあるカリフォルニア州でチケットの転売は禁じられていないため、Box Office Ticketsなどのウェブサイトは合法的なビジネスとしてチケットを販売していることになります。Perfect Priceによるとチケット転売の違法化は劇場にいい影響を与えることはなく、悪影響は消費者にまで及ぶとも考えられるとのこと。Perfect Priceは法律でチケット転売を取り締まるのではなく、劇場側が正しくダイナミック・プライシングを行うことで、これらの問題は解決できる、と記しています。
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