半世紀近い歴史を持つ喫茶店「ヘッケルン」のジャンボプリンを食べに行ってみた
東京・西新橋の一角に、およそ50年にわたって喫茶店をやってきた「ヘッケルン」があります。昔ながらの手作りの製法で提供される「ジャンボプリン」が名物だというので食べに行ってみたら、実は、本当の名物はジャンボプリンだけではなかったことに気づかされてしまいました。
ヘッケルン - 虎ノ門/喫茶店 [食べログ]
喫茶店「ヘッケルン」に到着。大通りから一歩入った路地にあるお店です。「ヘッケルン」という変わった店名はアメリカのマンガに出てきた主人公のカラスの名前から。
お店の前には、昔ながらの喫茶店の看板と、味わいのある「ジャンボプリン」や「モーニング」の看板。
お店はそれほど広くなく、こぢんまりとして独特の居心地の良さを感じます。もう45年以上経つというお店ですが、キレイに手入れされている様子で古さを感じるところがありません。カウンターの上に並べられたサイフォンや、天井から柔らかい光を降り注ぐライトが、昔懐かしい雰囲気を静かに漂わせています。
今回頼んだのは、「ジャンボプリン」(単品350円)とコーヒーがセットになったセットで、価格は600円。いまや600円だとコーヒーを飲むことすらできないことも増えてきましたが、ここでは大きめのプリンが一緒に食べられるという、うれしい驚き。
ちなみに、なぜ値段が変わっていないのかという理由について、マスターいわく「お客さんも長く来てくれている人が多いし、長く来てくれてるのが私も嬉しいし。だから値段を上げない。ここら辺ではお店が生き残るのは本当に大変なんだよ。向かいの店なんて、一年間に三回も入れ替わってる。次に来てみたら、もう違う店になってるかもしれないよ」とのこと。
これまた古きよき時代を感じてしまう、ガラスのデザートカップにのってきたプリン。ゼラチンを使わず、お客さんの入り具合に応じて、ちょうどおいしくなる時間を先読みして手作りされているというプリンで、上にはこちらも手作りのカラメルがのせられています。
プリンは蒸し器で作られており、マスターいわく「蒸し器でのプリン作りは最後の3分が命。いつフタを開けるかは、言葉では説明できないね。ウチは温度計も計量器も使わないから、全部が感覚。考えたらダメなんだよ。卵を割る動作もそう。手に持った瞬間に卵はもう割れてるの。サッカーのボールを蹴る時と一緒。あなたも蹴るときは、何も考えてないでしょ?」とのこと。
ちなみに大きさは、iPhone 7と比べるとこのぐらいで、大体通常のプリンの2.5倍の大きさ。とにかくデカさを競う「巨大プリン」を想像すると意外に小さく感じますが、食べてみると満足感はまさにジャンボ級でした。
ヘッケルンのマスターとおしゃべりしながらプリンを食べてみました。スプーンが「グッ」と沈み込む手応えからは、みっちりと詰まったしっかりとしたプリンであることが指に伝わってきます。
トロリとからみつくカラメルと一緒にプリンをたっぷりすくい、ほおばってみると、タマゴの風味が程よく香る味わい。甘すぎないプリンに、「これでもか」と甘いカラメルがねっとりと口の中をいっぱいにします。予想どおりしっかりした食べ応えのプリンで、ボリューム満点なのに次々に口の中に吸い込まれていくという、まさに絶品のプリン。まさに「古き良きプリン」という言い方がピッタリくるプリンで、味わい、食べ応えともに絶品。
サイフォンで淹れられたコーヒーは、しっかりした味で苦み・酸味ともに良く感じられる風味。プリンとカラメルの甘さにマッチして、口の中で程よくバランスを取ってくれる味わいでした。
プリンとコーヒーの味わいもさることながら、ヘッケルンの本当の「名物」はなんといってもマスターその人。初めてお店を訪れたにも関わらず、気さくに話しかけてくれ、楽しく会話できるという居心地の良さで素敵な時間を過ごすことができました。プリンとコーヒーの味に舌鼓を打ちつつ、お店をあとにするときには「おいしかった……」を通り越して「自分もこんな喫茶店やりたいわ……!」と思わせられてしまった、そんな後味ただようヘッケルンでした。
ちなみにお店の場所はこのあたり。各線・新橋駅からでも徒歩で10分ぐらいの距離でした。
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