旧ソ連で唯一「発禁処分」を受けていた幻のアニメーション作品「Glass Harmonica」
鉄のカーテンに覆われていた旧ソ連の社会では、政府による弾圧的な検閲が行われていました。文学や音楽などの芸術は政府によって厳しく統制され、政府の意向を押しつけるプロパガンダとして利用されていたといわれています。そんな中、アニメーション作品は比較的に規制の網が緩く、非常に幅広い作品が作られたといわれています。しかし、そんな状況において、唯一の発禁処分を受けていた作品が「Glass Harmonica」です。
Watch the Surrealist Glass Harmonica, the Only Animated Film Ever Banned by Soviet Censors, (1968) | Open Culture
http://www.openculture.com/2016/09/watch-the-surrealist-glass-harmonica-the-only-animated-film-ever-banned-by-soviet-censors-1968.html
このアニメーションは、Glass Harmonica(日本語でアルモニカとも)と呼ばれる楽器を手にした男性と、民衆の反応、そして体制側と思われる黒づくめの男などが登場する作品。以下のストーリーを見ると、政府が発禁処分にしたくなった気持ちが理解できるかも。なお、約20分の作品ですが、セリフのない映画なので見ているだけでストーリーを追うことができます。
Glass harmonica (Subtitled) - Стеклянная гармоника - Steklyannaya garmonika - YouTube
アニメーションの冒頭には「この作品に登場するのは架空のキャラクターですが、作者は観客に対して現代のブルジョワ階級における限りない欲望や警察権力の恐怖、人類の分断や残忍さを思い起こさせようとしています」というキャプション。
「むかしむかし、ある職人が魔法の楽器を作りました。その楽器の名は……」
「Glass Harmonica」
「この楽器の音色は人々に意識高い考えと洗練された行動を呼び起こしました」
「ある日、楽器を作った職人はある街にやって来ました。そこの民衆は全て……」
「『黄色い悪魔』の奴隷なのです」
月に照らされる、色のない街並み。
時計台のもとに男が登場。
この人物こそが、Glass Harmonicaを作った職人。
不気味な太鼓が鳴らされると……
人々が広場に集まりました。その顔はどれも無表情。
しかし、職人がGlass Harmonicaを奏でると……
人々はうっとり。抑圧されていた奴隷生活の中に美しい音色が訪れたということでしょうか。
そこに、黒いスーツと帽子の男が登場。肩をポンとつかまれて……
連行されていく職人
Glass Harmonicaは破壊されてしまいました
街のひろばにあった時計台も……
民衆が自らの手で破壊してしまいます。
まったく表情のない男が手をあげると、その手には金色の何かが。
これが「黄色の悪魔」、つまり「お金」ということになるのかも。
抑圧の時代が再び訪れますが、自由を求めるように羽ばたく蝶々。
すると、再びGlass Harmonicaを持った男が登場。しかし、最初の職人とは明らかに別の人物。
男の演奏を聴くと、醜い姿だった民衆が……
見違えるように立派に。
男の登場により、民衆の生活は再び輝きを取り戻します。
そこへ、あの黒ずくめの男が登場。
固まってしまう民衆
男は連行されます。こうして、再び暗黒の時代が到来。
しかし今度は様子が違います。輝きを失った民衆でしたが、今度は自分たちで時計台を修復して……
人間らしい社会を取り戻したのでした。
このように、アニメーション作品「Glass Harmonica」は支配体制に立ち向かう様子を描いたと思われる作品であり、支配者側からすれば都合の悪い作品であることは明らかです。
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