インタビュー

重力を操るアイデアはどのようにして生まれたのか、「GRAVITY DAZE 2」の外山圭一郎と作曲家の田中公平インタビュー


重力を自在に操るという斬新なゲームシステムを採用し、それまでにはなかったクリエイティブなアプローチが評価され第16回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門優秀賞や日本ゲーム大賞2012年間作品部門大賞などを受賞した2012年発売のPlayStation Vita向けゲーム「GRAVITY DAZE」の続編「GRAVITY DAZE 2/重力的眩暈完結編:上層への帰還の果て、彼女の内宇宙に収斂した選択」がPlayStation 4向けに2016年12月1日に発売されます。

そのGRAVITY DAZE 2のディレクターの外山圭一郎氏、作曲家の田中公平氏にインタビューを行い、GRAVITY DAZE 2について根掘り葉掘り聞いてきました。

GRAVITY DAZE 2 | プレイステーション オフィシャルサイト
http://www.jp.playstation.com/scej/title/gravitydaze/2/

「GRAVITY DAZE 2」がどのようなゲームなのかは、以下のムービーを見るとわかります。

『GRAVITY DAZE 2』 発売日決定トレーラー - YouTube


GIGAZINE(以下、G):
まずは、12月1日に発売されるGRAVITY DAZE 2がどのようなゲームになっているかを簡単に紹介してください。

外山圭一郎氏(以下、外山):
GRAVITY DAZE 2は、重力を操作することができる不思議な能力を持つキトゥンという少女が、重力を操って空を駆け回りながら、コミックのような世界観をベースとした現実とは全く別の世界を冒険していくというゲームになります。


G:
2012年に発売されたPS Vita向けの「GRAVITY DAZE」は重力操作というそれまでのゲームにはない要素があって、非常に新規性が高いタイトルでした。今回は続編ということですが、新規性につながるユーザーが感じる「新鮮さ」という部分については、ゲーム内のどのような部分で表現しているのでしょうか?

外山:
物理演算やライティングといったPS4の演算能力を生かしてリアリティを追求しつつも、前作のコンセプトをそのままに数段進化した表現をストレートに見せていますね。

G:
PS4の能力の高さを生かしてこそ表現できた部分はありますか?

外山:
PS4の能力を生かした表現はゲーム内にたくさんでてきますが、特に「破片」の描写が素晴らしくなっています。破壊されたモノがバラバラの破片になり、キトゥンが操作している重力に巻き込まれることで、本来であれば真下に落ちていくのに横に流れていく、こういったダイナミックな映像は他の映像媒体では体験できないアクションになっていると思います。

G:
開発において続編ならではの楽しさや、おもしろさというのは何でしょうか。

外山:
前作のときは試行錯誤の中で開発を進めていたこともあって、「もっとこういうことができたな」というのがたくさんあったんですね。今作では前作でやりたかったけどできなかったことをたくさんフォローアップできたのですごく楽しめました。

G:
ふむふむ。

外山:
その反面、続編を作るときは今作から初めてプレイする人のことも考えて作らないといけません。「GRAVITY DAZE 2」の場合だと、ゲーム性を前作よりももっと奥深いものにしつつ、プレイヤーの入り口となる間口をより広くして、前作以上にとっつきやすく作っています。

G:
では、「GRAVITY DAZE 2」は前作をプレイしていなくても問題なくストーリーやゲーム性についていけるようになっているのでしょうか?

外山:
はい、そこはものすごく気をつけて作った部分なので大丈夫だと思います。ただし、ストーリーに謎解き編みたいな要素があるので、前作をプレイしていただけると、より楽しめるようになっているかなと。

G:
田中さんにとっても続編の作曲ということになります。作曲の場合だと、どのようなことを心がけて続編に望むのでしょうか?

田中公平氏(以下、田中):
GRAVITY DAZEの世界ってものすごく独特なんですね。私がGRAVITY DAZEで一番好きなのは作品の「色味」なんです。前作は少し曇った色味がGRAVITY DAZEの特徴を良く表現していて、すごくよかった。それが今回からは前作の特徴を残しつつも明るい色味になりましたよね。色味が深くなったという感じかな。作曲においても、GRAVITY DAZEの色味を意識しながら作っていきました。独特の世界観を曲に落とし込むというか、簡単に言うと、聴くだけでGRAVITY DAZEの世界を思い出すような曲を作るように心がけました。


G:
今回はゲーム中に使われる楽曲が70曲にも及ぶとお伺いしました。

田中:
すごい曲数ですよね。よく自分でもこんなに違う曲を書いてタイトルを付けたなと思います(笑)

外山:
もうゲーム音楽というジャンルを超えていますよね。これほどまでに幅の広い楽曲を取りそろえたサウンドトラックはないと思います。

田中:
確かに。1人で書いたと言っても信じてもらえないかもしれません。

G:
以前のインタビューで、GRAVITY DAZEのキモとなる重力というテーマは、オフィスからオフィスに移動するときにしていた妄想から着想したとお伺いしました。今回も外山さんの妄想からインスピレーションを得て、ゲームに反映させたという要素はありますか?

外山:
今は品川にオフィスがあるのですが、品川駅の改札を出てそのままジャンプしてオフィスまで飛んでいきたいな、という妄想を毎日していまして(笑) それが今作から登場する新しい重力アクションの「ルーナチューン」の基になっています。改札を出てルーナチューンを使ってオフィスまでヒューンとひとっ飛びでいけたら最高ですね。

重力が軽くなり重力ゲージを使用することなく移動速度が上がって大ジャンプが可能となる「ルーナチューン」は外山さんの妄想から生まれたアクション。


G:
今後のゲーム開発に生かすような最近の妄想についてお聞かせください。

外山:
いくつかキーワードになりそうな妄想はたくさんしているんですけど……まだまだ言えないところがありますね。世界の多層感と言うのでしょうか、GRAVITY DAZEもそうなんですけども、レイヤーとして世界を俯瞰するような、そういったテーマは今後も掘り下げていきたいと思っています。


G:
なるほど。次はお二方に質問します。アイデアをアウトプットするために、普段の生活で心がけていることはありますか?

外山:
そうですね、僕は最近時間がなかなかとれないということもあって、コミックを集中して読んでいます。映像作品は見始めると数時間くらい必要になってくるので、なかなか自分の時間軸で見られなくて。だから、電車の中でもサッと読めるコミックをタブレットで読んでいますね。

田中:
僕もあまり時間がある方ではないですが、自分が作曲させていただいたゲームをプレイしたりしますよ。GRAVITY DAZE 2は本当に楽しみなんだけど、ありがたいことにボリュームがものすごくあるそうなので、クリアするまでは詰めてプレイするかもしれませんね。やっぱり、プレイ期間が空いてしまうとまた操作方法を覚えなおさないといけなくなるから、ゲームをやるときは詰めてプレイした方が楽しいです。ボリュームが多いGRAVITY DAZE 2だと、2週間くらい毎日プレイすることになるんじゃないかな。

外山:
2週間じゃ終わらないかもです(笑)

G:
2週間で終わらないというのは相当ボリュームがありそうですね。次はGRAVITY DAZE 2の舞台となるジルガパララオについて聞かせてください。ジルガパララオはものすごく色鮮やかで、複雑でありつつも興味を引く構造の街になっていますが、これは実際にある街をモデルにしているのでしょうか?


外山:
僕としてはGRAVITY DAZEのプロモーションで行ったメキシコとかシンガポールの風景からインスピレーションを得ているのですが……GRAVITY DAZE 2の世界観を担当しているアーティストはベトナムに行って、そこの風景から多くのインスピレーションを得たと聞いています。

田中:
実はGRAVITY DAZE 2の音楽は、ベネズエラの音楽からアイデアを得ているものがあるんですよ。前作で評判が高かったオープニング曲も今作のどこかに登場するので、楽しみにしておいてください。

G:
今作の街、つまりマップの大きさは前作の約2.5倍になっていると聞きました。

外山:
PS VitaのGRAVITY DAZEのマップとは比べものにないくらい作り込んでいるので、単純な広さは2.5倍ですけども、体感的な広さはそれ以上になると思います。

田中:
私も2.5倍以上あると思います。

G:
マップを作る上で、ユーザーの想定外の行動に関しては、どこまで考えて対応するものなのでしょうか?ここまでマップが広大になると、想像していなかった場所に無理やり行ってしまうというようなことが起こりそうです。

外山:
ストーリーに支障をきたしてしまうような場所は行けないようにコントロールをしていますが、基本的にはいろんなところに行って探索して欲しいですね。今回はTwitterに投稿できる「カメラモード」を搭載していて、プレイヤーが「こんな場所で変なもの見つけた!」と投稿できるようにしています。特定の場所で特定の時間にしか発生しない現象なんていうのもあるので、プレイヤーのみなさんにはどんどん探索して欲しいと思っています。

G:
「生きている街」というのがコンセプトになっていますが、ユーザーが「この街は生きているんだ」と感じられるようにするためにしていることとは何でしょうか?

外山:
「生きている街」を感じてもらうために、とにかく止まった画面を見せないように心がけました。今回は街自体が動いたり、雲がずっと流れていたり……後はエリアによって雨が降る場所もあるんです。

G:
「GRAVITY DAZE 2」に出てくるキトゥンは、「GRAVITY DAZE」のころから成長して大きくなっていたりするのですか?

外山:
担当のデザイナーによれば少しむっちりしたらしいです(笑) PS VitaとPS4は画面サイズが違いますから、画面の中のバランスを考えて前作から少しだけムッチリというか、ふっくらさせましたね。

田中:
着せ替えも種類があるんだよね?

外山:
ええ、それはたくさん用意しております。

G:
今だとSNSだったり、製品のレビューだったり、ユーザーの作品に対する意見はインターネットですぐに見られます。お二方はユーザーレビューを見たりしますか?

田中:
僕はめちゃくちゃ見ますよ、エゴサーチもしますからね。前に一度、電車の中でエゴサーチしていたら、電車内の誰かが「田中がいる!」とつぶやいていてビックリしました(笑) 誰かなと思って思わず周囲を見渡しましたよ。


G:
外山さんもインターネットで作品の評価などをチェックしたりしますか?

外山:
見ますね!やっぱり作った作品に対して「おもしろかった!」「良かった!」って言ってくれるのは、生きがいと言っていいほどうれしいものです。

田中:
「なるほど、そういう視点もあったか!」みたいに自分では気づかなかったことを、ユーザーの意見から気づかされることもありますよね。僕はSNSの中でもTwitterを頻繁に見ていますね。

外山:
僕もTwitterは見ますよ。Twitterは自然な反応が多い気がします。

G:
Twitterやレビューで見たユーザーの意見をゲームに取り入れたりすることはあるのでしょうか?

外山:
意見をそのまま直接取り入れるというのはしませんが、「ユーザーさんはこういう方向性を望んでるんだな」っていうのを意識することはあります。

田中:
だから、ユーザーのみなさんは感想をツイートしてくださいね(笑)

G:
田中さんは「GRAVITY DAZE 2」が自分の名刺代わりになればいいな、と考えているそうですが。

田中:
アニメに関しては名刺になるような作品がたくさんあるのですが、ゲームに関しては「サクラ大戦」以降なかなかありません。実はインターネットで「Tanaka Kohei Music」と検索すると、一番上に出てくるのが「Gravity Rush(GRAVITY DAZEの英語版タイトル)」なんですよ。GRAVITY DAZEはゲーム性だけでなくゲーム音楽も海外の多くの人に認められてるんです。だから、今回の「GRAVITY DAZE 2」が海外で名刺としてお話できる作品になったらいいなと思っています。

G:
GRAVITY DAZEは海外にもファンが相当いるということですか?

外山:
そうなんです。海外だとヨーロッパで一番人気があると思いますね。

田中:
GRAVITY DAZEは日本のアニメとは少し異なる雰囲気を持っていて、それを好意的に捉えている人が海外に多いと思います。GRAVITY DAZEの色味やキトゥンのキャラクターなどの要素って、ものすごく欧米的なんです。二次元が好きな人でも三次元が好きな人でも、両方の人が楽しめるのがGRAVITY DAZEの強みですよね。

G:
最後にGIGAZINE読者にメッセージをお願いします。

外山:
「GRAVITY DAZE 2」のおもしろさや楽しさは、言葉で言ってもなかなか伝わらないものがあるので、実際にプレイしてみて確かめてもらいたいです。発売日の2016年12月1日までは約4カ月ほどありますが、プレイするのを楽しみにしていてください。

田中:
「GRAVITY DAZE 2」は本当にやるべき作品だと思います。僕は打ち合わせの段階から、ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジアが「GRAVITY DAZE 2」にかける強い意気込みを感じました。私も命をかけて作曲に取り組んだので、手に取っていただいたら必ず満足していただけると思っています。


G:
本日はありがとうございました。

2016日12月1日発売予定の「GRAVITY DAZE 2」は、記事作成現在PlayStation StoreAmazonで予約を受付中。初回限定版は通常版と同じ価格でアニメ作品のBlu-ray Discなど様々なアイテムが付いています。また、PlayStation Storeでダウンロード版を予約すると、通常価格から1000円オフで購入可能です。

タイトル:GRAVITY DAZE 2/重力的眩暈完結編:上層への帰還の果て、彼女の内宇宙に収斂した選択
フォーマット:PlayStation 4
発売日:2016年12月1日予定
プレイ人数:1人
価格:ディスク版 希望小売価格 6,900円+税
 ダウンロード版 販売価格 6,900円+税
ジャンル:アクションアドベンチャー
CERO:C(15才以上対象)

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「GRAVITY DAZE 2」の発売日&スタジオカラー制作のオリジナルアニメが発表されたイベントに潜入してきました - GIGAZINE

重力を操作し空を「飛ぶ」のではなく「落ちる」のが快感なPS4向けアクションゲーム「GRAVITY DAZE」プレイレビュー - GIGAZINE

未来の映像システム「PlayStation VR」の開発責任者・伊藤雅康氏インタビュー - GIGAZINE

瞬殺で予約受付が終了した「PlayStation VR」の体験会で現実世界に別れを告げ仮想空間に旅立ってきました - GIGAZINE

ソニーストア「PlayStation VR 特別体験会」で怪獣になって街を破壊しまくる「THE PLAYROOM VR」プレイレビュー、購入は「抽選」 - GIGAZINE

in インタビュー,   動画,   ゲーム, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.