2000年前のシルクロードで使われていた尻を拭く棒「ちゅう木(クソべら)」の発見で感染症の経路が判明
これまでに、古代の中国とヨーロッパで類似した病原菌が発見されていたのですが、原因となる病原菌がどのようにして遠く離れた場所へ伝わったのかを示す証拠は見つかっていませんでした。「インドから南下」「モンゴル・ロシアから北上」というルートで中国とヨーロッパに同じ病原菌が運ばれたという説が有力視されていたのですが、ケンブリッジ大学の研究チームが中国北部に位置するタクラマカン砂漠付近のシルクロード沿いでお尻を拭くために使われていた「ちゅう木(クソべら)」を発見したことから、古代のシルクロードを通じて病原菌が広がっていたことが判明しました。
Early evidence for travel with infectious diseases along the Silk Road: Intestinal parasites from 2000 year-old personal hygiene sticks in a latrine at Xuanquanzhi Relay Station in China
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352409X1630164X
Ancient faeces provides earliest evidence of infectious disease being carried on Silk Road | University of Cambridge
http://www.cam.ac.uk/research/news/ancient-faeces-provides-earliest-evidence-of-infectious-disease-being-carried-on-silk-road
ケンブリッジ大学考古学・人類学部のHui-Yuan Yeh氏を含む研究チームは、紀元前111年~109年ごろに漢王朝時代のシルクロードで使われていた古代の中継所を調査しました。中継所のトイレからは大便を拭き取るためのものと見られる、先端に布を巻き付けられた木の棒が発見されたのですが、研究チームがこの「携帯用ちゅう木」を顕微鏡検査法で調べたところ、回虫・ヒト鞭虫・サナダムシ・肝吸虫という4種の寄生虫の卵子が見つかったとのこと。
肝吸虫は腹痛・下痢・黄疸・肝臓がんなどを引き起こす寄生虫で、本来は主に水の多い湿原などのエリアに生息するため、中継所のあった乾燥した砂漠地帯の固有種にはなり得ないとのこと。現在の肝吸虫の流行エリアと照合しても、肝吸虫が多く生息する広東省からと中継所は2000km以上離れていることから、これらの寄生虫は別の地域から人間を介して運ばれてきたと考えられます。この発見は初めてシルクロードが中国~ヨーロッパ間の病原菌の感染経路だったことを示唆しているとのこと。
By fdecomite
当時、中継所は商人・探検家・兵士・官僚などが東アジアと中東/地中海の地域を行き来する時に使われていたことから、シルクロードが中国とヨーロッパの両方で発見されている腺ペスト・炭疽症・ハンセン病といった病原菌の感染経路にもなっていたのではないか、と研究者は予想しています。
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