人間が考えている以上に魚は賢い
By Thilo Hilberer
魚は小さな脳にもかかわらず物の形や色を識別でき、飼い主の顔を認識していることが最新の研究で分かっています。たいていの人は、魚をそれほど賢くないと考えがちですが、研究によると人間と同じように物を見分け、人間に負けず劣らずの記憶力と集中力を持つことが分かっているそうです。人間の想像以上に賢い魚の性質について、科学を分かりやすいイラストで解説するムービーを多数公開しているAsapSCIENCEがまとめています。
Are You More Forgetful Than A Fish? - YouTube
映画「ファインディング・ドリー」の主人公のドリーが健忘症であるせいか、魚は記憶力が悪いと考えている人は多いものです。しかし、魚は人間に負けず劣らず賢いことが分かっています。
下の図は静止画ですが、錯覚によって人間の目には動いているように見えます。
そして、魚にも同じように見えていることが分かっています。
進化の過程で魚と人間は約4億5000万年前に別の種として分かれました。
とはいえ、水中と陸上という環境は異なるものの、魚も人間も獲物を捕らえたり襲ってくる敵から身を守ったりする必要があるという境遇の下、進化する必要があったのは同じです。そこで、研究者は魚も人間と同じように錯覚するのではないかという仮説を立てました。
下の絵では、右の赤丸の方が大きく見えるはず。
しかし、これも錯覚による効果で、実際には赤丸の大きさは同じです。
ある研究者が魚に大きな赤丸を選ぶように訓練しました。
そして、同じ絵を見せたところ、魚は同じサイズの赤丸なのに、右の赤丸を選びました。つまり、魚も錯覚するのが分かったというわけです。
魚の物の見え方が人間と同じだけでなく、集中力についても人間と同等であることが知られています。人間の集中できる時間を調べた実験では、2000年頃は12秒だったものが、2016年時点では8秒まで低下していることが分かっています。なお、この能力の低下の原因はスマートフォンやPCなどのインターネット端末にあると考えられているとのこと。
これに対してゴールドフィッシュの集中力の持続時間は、なんと人間を上回る9秒だとのこと。
また、魚は記憶力に関しても優秀であることが実験で分かっています。まず、シクリッドをいけすに放して……
ある特定の場所からのみエサを与えるということを3日間繰り返します。
その後別の水槽で12日間飼った後……
再び元のいけすに放つと、シクリッドはエサを与えられていた場所を覚えていたそうです。
研究では、ゴールドフィッシュは最低3カ月の記憶力を持っていることが判明。物の形・色・音を区別するだけでなく、迷路の道順まで記憶できるとのこと。前述の通り、飼い主の顔を判別することも分かっています。
さらに魚は非常に記憶力が良いので、一度、釣り針によって釣り上げられたあとは、釣り針を危険なものと認識して避けるようになるそうです。
しかし、「痛み」に関しては魚と人間で大きく異なることも分かっています。人間は傷を負ったときに……
侵害受容器が刺激を受け取ると、脳の大脳新皮質に信号が送られます。このようなメカニズムによって人間は「痛み」を感じられます。
しかし、多くの魚には侵害受容器がなく、そしてすべての魚には大脳新皮質がないので、痛みを感じる方法は人間と同じではありません。
ちなみに、映画「ファインディング・ニモ」が公開されたときに、多くの人がカクレクマノミをペットとして飼おうとして死なせたそうで、ファインディング・ドリーの公開によって同じことが起こらないかと、映画関係者は心配しているそうです。
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