色見本帳のPantone(パントン)はどうやって「色」をお金に変えているのか?
by Ian Ransley
色見本を販売している「Pantone(パントン)」は、日本ではソフトバンクと提携して圧倒的カラーバリエーションの携帯電話を発売したことでも知られています。インターネットが普及し簡単に色見本を見られるようになった現代で、Pantoneのアナログな色見本帳がいまだに売れ続けている理由を、経済・金融情報を扱っているBloombergが解説しています。
How Pantone Is Still Turning Color Into Money - Bloomberg
http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-08-26/how-pantone-is-still-turning-color-into-money
Pantoneは研究所で色を開発し、織物工場や、印刷所、デザイナーなどにさまざまな色の色彩記号を売ることで、収益を上げています。「色を売る」という非常に単純なビジネスモデルですが、Pantoneは同じ色をずっと売り続けているわけではなく毎年色の種類を見直していて、2015年には「バレエシューズ」「スパイスの根」「ジュラシック・ゴールド」「ウミガメ」といった210色が色見本帳に新しく追加されました。これらの色は、大げさな名前がつけられていますが、すべて自然界に存在する色です。
Pantoneは収益を公開していませんが、広報担当のMolly Walsh氏によれば、2014年には創業以来最高額の収益を生み出したとのこと。現代社会ではインターネットなどを使って誰でも簡単に色を入手できることを考えると、Pantoneの増益は驚くべきことです。
by webcointernet
製品をデザインする際、ウェブデザイナーに色を伝えるには、RGB、CMYK、カラーホイールといった基準を使い、色を正確に指定します。しかし、色見本を作っているのはPantoneだけではなく、Pantoneには数多くの競合企業が存在していて、例えばニューヨーク発のSCOTDIC Coloursは、コットンとポリエステルの色に特化していてファッション業界で有名です。アメリカ政府も固有の色のルールを持っています。
それでもなおデザイナーがPantoneの色見本を好んで使っている理由は、1755色もの色を収録したPantoneの色見本帳「Plus Series」を、扇子のように広げて色を一度に見ることができるためです。また、Pantoneの「Fashion, Home + Interiors」は、2310種類の布見本を収録しています。他にもPantoneでは、色見本をプラスチックの立方体に焼き付けた色見本も作成していて、これは工業製品のデザイナーが色を選ぶために役立っています。
by Sinéad Cochrane
Pantoneでは、色ビジネスがデジタルプラットフォームに流出するのを防ぐため、色見本に少し神秘性を持たせることにしているとのこと。Pantoneの社員には、調合室で色を作成する「ミックス・マスター」と呼ばれるスタッフがいますが、現在では「カラーエコノミスト」「カラー心理学者」という役職名で呼ばれ、全社員120人のうち20~60人が世界中で色の流行を調査しています。世界的に健康や自然派食品に対する関心が高まっていることから、2015年に追加された210種類の色は、オレンジやピンク系統が多いとのこと。また、テクノロジー系企業が好む青系の色も多く追加されています。
色彩学の専門家であるLangdon Graves教授は、「ミックス・マスターたちは色について調査し、色のイメージチェンジをはかっています。Pantoneの色見本は、単なる色の参考資料ではないのです」と語ります。従って、色の流行を知りたいファッションデザイナーや企業は、Pantoneの色流行予測ブックを購入したり、Pantoneの専門家をコンサルタントとして雇い入れたりしています。単純に色見本を作るだけならば他の色見本帳メーカーや印刷所でも行うことができますが、色の流行を予測できるのはPantoneだけとのこと。
また、Pantoneのカラータイル特有のデザインを生かして、コーヒーカップやiPhoneケース、子ども向けの絵本といった製品も販売されていて、Pantoneでは製品の販売と引き換えにロゴの使用料を得ています。
by Eelke
以下は、モナコで営業しているPantone Cafeの店舗。外装全体がPantoneの色見本のようなデザインです。
Pantone Cafeでは、色見本帳を模した包装紙を使った「パントーンエクレア」などが販売されています。
Bloombergは、「Pantoneの色見本システムの価値は『色の標準化』である」と分析しています。Pantoneの色見本帳を持っていれば、カナダとバンクーバーなどの離れた場所でも、全く同じ色を作り出すことができるのです。フォーダム・ロースクールのSusan Scafidi氏は、「Pantoneはインターネットの恩恵を受けていると感じられます。なぜならPantoneは色見本のシステムをいち早く確立し、世界中に普及させたからです」と語っています。ティファニー、エルメス、クリスチャンルブタンを始めとするファッションブランドは、色を指定する際にPantoneの色コードを使っています。「ファッション業界で働いている人はほぼ全員がPantoneの色見本帳を使っていると言えるでしょう」とScafidi氏。知的財産および製造の観点から、ファッション用品を作る際には色を正確に指定する必要があり、Pantoneの色見本を使えば容易に色を指定することができるとのことです。
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