マグヌス効果でボールの挙動はどう変化するのか
by blueyedviking
ボールを投げるときにバックスピンをかけると揚力が生まれて飛距離が伸びます。これがマグヌス効果の1つで、具体的にどれだけの力があるのかを実証したムービーが公開されています。
Surprising Applications of the Magnus Effect - YouTube
実験の舞台はオーストラリア・タスマニア島にあるゴードンダム。
高さは126.5mあります。
その上から、バスケットボールを落とします。
まずは何も工夫せずにそのまま落とします。当然、風に流されて……
ダムの壁からちょっと離れた場所に落下。ボールが風を受けてふらふらと動いているのが、ナックルボールや無回転シュートが予測のつかない動きをする理由です。
続いては、バックスピンをかけて落とします。
はじめはまっすぐ落ちていくように見えますが……
ぐーんと画面上方へ、ダムから遠ざかるようにボールが伸びていきます。
落下したのははるかに離れた水面。これが「マグヌス効果」によるものです。
では、マグヌス効果とは何か。
これは落下するボールを示したもの、先ほどの実例でいうと右側にダムの壁があります。落下するボールに対しては、上向きの空気の流れがぶつかり、向かって左側の流れはボールの回転と同じ方向を向いています。
すると、ボールに沿って画面右側へと流れることになります。
このとき、ボールに対して、左側へと動く力が生まれます。
こうして、ボールはダムの壁から離れた場所に落ちることになりました。
「マグヌス効果」は1852年、ドイツの科学者ハインリヒ・グスタフ・マグヌスによって初めて認識されました。
実験ではボールを上から落としていましたが、マグヌス効果はボールが前へ進むときにも作用します。このため、テニスやサッカー、野球などで大きな役割を果たしています。
たとえば、野球のストレートは、ボールに強いバックスピンをかけて投げることで揚力を得ています。そのため、ボールはより直線に近い軌道で飛んでいくので、力のあるストレートを投げる投手と対戦したバッターは思ったよりもボールが落ちてこず、ボールの下を空振りすることがあります。一方で、強いバックスピンをかけると回転軸がぶれやすく、制球が定まらない、というデメリットもあります。
そして、「マグヌス効果」を利用した意外なものが「船」です。この画像の船には大きな煙突が2本あるように見えますが、この船は「ローター船」と呼ばれるもので、帆の代わりに回転する円柱が取り付けられています。
先ほどのボールと同様、回転する円柱に対して横から一定の風を受けることで前向きの力を生み出し進むという仕組みです。
さらに、この考えを発展された「ローター飛行機」も考えられました。画像はそのプロトタイプ。
翼の代わりに、ローターの回転で揚力を得ようとする代物でしたが、船とは違ってこの形ではあまりうまくいきませんでした。
ただ、ローターの回転だけで飛ぶことが可能であることは確か。
ローター船は環境問題の観点から注目を浴びる存在なので、スポーツ以外でも「マグヌス効果」を耳にすることがこれから増えるかもしれません。
ちなみに、「ストレートの下を振る」事例としては、2006年のオールスターゲームでの藤川球児とカブレラの対決などがあります。
藤川vsカブレラ&小笠原 - YouTube
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