国務長官時代にヒラリー・クリントンが使うよう強く勧められた開発費18億円のスマートフォンとは?
By US Embassy
アメリカのオバマ大統領がセキュリティ面の理由でiPhoneを使えなかったことが分かっているとおり、一部のアメリカの高官には「自由な通信端末の使用権」が与えられていません。元ファーストレディにして自らも大統領選を戦うヒラリー・クリントン氏も、2013年まで務めた国務長官時代に安全な通信を可能にする「特別なスマートフォン」としてとんでもない端末を勧められていたようです。
This is the phone NSA suggested Clinton use: A $4,750 Windows CE PDA | Ars Technica
http://arstechnica.com/information-technology/2016/03/this-is-the-phone-nsa-suggested-clinton-use-a-4750-windows-ce-pda/
アメリカ合衆国大統領や国防長官などは、一国の政府関係者というだけにとどまらず世界情勢に大きな影響を与えうる存在として、通信の秘密に対する要求は一般的な政治家の比ではありません。そこで、アメリカ国家安全保障局(NSA)主導で、外部から通信を探知されない特別な端末が開発され、一部の政府関係者に与えられ、他のモバイル端末の利用が制限されています。
クリントン氏が国務長官を務めていた2009年から2013年までの期間にNSAは、Secure Mobile Environment Portable Electronic Device (SME PED)プログラムという安全な通信を可能にする専用端末を開発するプロジェクトを行っており、特別仕様のBlackBerry 8830を使うオバマ大統領を除けば、ほとんどの政府高官がモバイル通信端末としてSME PED開発端末を使っていたそうです。
SME PEDプログラムではGeneral DynamicsとL3 Communicationsの2社のみが端末の開発を認められ、それぞれに1800万ドル(当時のレートで約18億円)の開発予算が割り当てられたとのこと。クリントン氏が国務長官を務めていた当時は、General Dynamics社の「Sectéra Edge」ベースの特別端末のみが政府公認のSME PEDスマートフォンだったとのこと。ベースとなったスマートフォンSectéra Edgeは以下の様なスマートフォンです。
ちなみに2013年当時の人気スマートフォンiPhone 5sはこんな感じ。
Sectéra EdgeにはSDカードスロットがありますが、政府高官用の特別モデル「Executive Kit」にもあるのかは不明。特別モデルとはいえ、ベースOSはWindows CEなので、機能性は推して知るべし。なお、Sectéra Edge Executive Kitの端末納入価格は1台当たり4750ドル(約47万円)ですが、専用のサーバーソフトウェアの費用や保守管理費用などは別途予算が割り当てられています。
Sectéra Edge Executive Kitは驚くべき事に2015年まで使われていたとのこと。SME PEDプログラムはようやく役目を終え、2016年からはDefense Mobile Classified Capability-Secret(DMCC-S)という新しい専用端末開発プロジェクトに引き継がれているそうです。
結局、クリントン氏はSectéra Edge Executive Kitの使用を拒否して、オバマ大統領と同じ特別仕様のBlackBerry 8830を使いました。その結果、当時の規則ではBlackBerry端末で私用のメールホスティングが禁じられていた一方で、BlackBerry標準ブラウザでの私用メールチェックまで禁じられていなかったこともあり、個人メールを公務に使用する「メール問題」を引き起こしています。仮にクリントン氏がSectéra Edge Executive Kitを使っていればメール問題が起こらなかったかどうかは誰にも分かりません。
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