取材

タブブラウザSleipnirのフェンリルがデザインにかける思いを具現化した「デザインスタジオ」写真集&デザインへのこだわりをインタビュー


「ユーザーにハピネスを」を理念に掲げて、国産No.1シェアのタブブラウザ「Sleipnir」を始めとするアプリ開発やウェブサービスを制作しているのが「フェンリル」です。2015年に設立から10周年を迎え、「無邪気によいデザインをつくる」ことにこだわったフェンリルデザインと専用のデザインスタジオを新設したとのことで、スタジオ内部を見せてもらうことにしました。

無邪気によいデザインをつくる - フェンリルデザイン
http://fenrir.design/

これが2015年に完成したばかりのフェンリルデザインの「デザインスタジオ」。フェンリル大阪本社の2階下にあたる、グランフロント大阪 [OFFICE BUILDINGS]の12階に入っていて、余計なものを一切排除してシンプルを極め尽くした設計です。


真っ白で継ぎ目の一切ない、巨大な一枚板の机が特徴的。デザインスタジオ専用に、特注で作ったものとのこと。


一人分のスペースは、以下のようになっています。


横幅も奥行きもかなり広めにとってあり、デザイナーが広々と作業できるこだわりの設計。


配線は机の下にまとめることで、机の上はスッキリとしています。


イスはこんな感じで、スタジオ内は全て同じ種類のイスで統一。


半球形の照明が非常にユニーク。


入り口横には、特注の給湯カウンタを設置。


「ゴミ箱のにおい対策としてフタは必須だが、フタが汚れたりゴミ箱がいっぱいになってフタが閉まらなくなったりする」という問題を解決するため、給湯カウンタに引き戸をつけて、ゴミ箱を内蔵することにしたそうです。


側面のパネルまで真っ白な作り。


カウンタの天面に置いてある電子レンジとポットも、モノトーン調に統一してあります。


こちらは共用の作業台。机と同じ真っ白の素材で作られています。


作業台の奥には、天井が吹き抜けになった倉庫スペース。


壁の一部には、作り付けの本棚が設置してあります。この本棚も、机と同じく特注で作ったものとのこと。


支柱や仕切り板が一切なく、棚のレイアウトを自由自在に決めることが可能。


デザイン関係の本がずらりと並んでいました。


デザインに関する本以外にも、街中で集めたというフライヤーや……


ディズニーアニメーションの本も。


さらには、カードゲームやボードゲームなどの小物も置いてありました。


誰がどの本を持ち出し中なのかが分かるように、貸出カードが使われているあたりは割とアナログっぽい感じ。


チーフデザイナーの松野さんが監修した、フェンリル2015年クリスマスカードも本棚に置いてありました。封筒の中に白いカードと、金色の斜め模様入りの透明のパネルを組み合わせて入れてあり、白いカードを引き出すと、模様がくるくると回って見えるというこだわりのカードです。


実際にクリスマスカードを引っ張り出してみた様子は、以下のムービーから確認できます。

カードを引き出すと模様がクルクル回る「フェンリル」のクリスマスカード - YouTube


本棚に置いてあるもの中で松野さんのオススメは、デザインチームのひとりが持ってきたという、フォントの見本集。非売品だそうです。


さらに松野さんが自ら持ち込んだオススメの本がコレ。表紙にキラキラと輝く水色の円が描かれています。


この本は、月の満ち欠けをさまざまな色を使って表した絵本で、文字は一切書かれていません。


背表紙には月の満ち欠けの流れがプリントしてあり、かなりオシャレ。


ロッカーは、数人で1個のロッカーを共有して使っているそう。


取っ手に刻まれた模様で、ロッカーを区別しているとのこと。


コート専用のロッカーもあり。


入り口の反対側からオフィスを見渡してみたところ。


オフィス全体が非常に静かで、作業に集中できそうな環境が整っているという印象でした。


窓側の席はこんな感じ。


窓際の柱に、机をぴったりと沿わせて置けるのは、特注の机ならでは。今後、デザインチームの人員が増えた際に使う予定だそうです。


窓から外を見ると、もともとJRの貨物駅があった、うめきた再開発2期用地が見下ろせました。


左手にはヨドバシが見えています。


というわけで、フェンリルデザイン チーフデザイナーの松野さんと、広報課の金内さんに、フェンリルのデザインについてのこだわりを伺いました。


GIGAZINE(以下、G):
デザインスタジオを見せていただきましたが、それにしても、すごいスタジオですね。いつごろ完成したのですか?

フェンリルデザイン チーフデザイナー 松野 紘明さん(以下、松野):
2015年6月です。

G:
ああいったオフィスを作ろうという計画は、いつぐらいから行われていたのですか?

松野:
最初の話は2014年12月くらいからあって、イメージはすぐに固まったのですが、そこから「まず、どこに移ろうか?」とビルを選ぶところから検討しました。場所は、割と最後の方で決まりました。場所が決まった後は、その場所に合わせてプランを作るという作業があり、業者さんにもいろいろと汗を流していただきました(笑)


G:
ちなみに、業者はどういう基準で選んだのでしょうか?試しに何かを作ってもらったのか、それとも実績のあるところを探したのですか?

松野:
今回お願いしたのは、今までにも工事をやっていただいている業者さんです。

G:
なじみの業者で大体勝手が分かっているので、無茶な要望を言っても「ああ、また何か言ってるわ、なんとかしようか」と、多少無理も効いた感じなのですね。

松野:
そうですね、結果的にお願いしてよかったです。どの業者さんにお願いした場合でも、結局こだわるところはたくさんあるので、目いっぱいやっていただく形になったと思います。

G:
スタジオのキャパシティ的には、社内に今いる人数と、プラスアルファで数名分を入れたイメージで作ってあるのですか?

松野:
そうです。定員は最初に大体決めています。ただ、そこからさらにどの程度のキャパシティに広げるかということは、もちろん多いほどいっぱい人が入れるので有利なのですが、「広々とした空間にしたい」とか、「無垢さやストイックさを表現したミニマルな印象」などを加味して、今のキャパシティになっています。

G:
ひとりあたりのデスクの幅は何cmくらいで想定しているのですか?

松野:
120cmです。

G:
結構広いですね。どこかのオフィスの1人80cmとか100cmとかいうところは見習ってほしいです(笑)。実際、すごくぎゅうぎゅうに詰められているオフィスは結構ありますよね。それに比べるとすごく余裕があるなというのが見て分かりました。

松野:
実は、14階の従来のデスクと同じ幅にしています。ただ、机の間に仕切りがなくて、1枚のテーブルを使って横の人との境目を設けないということを最初からコンセプトとして入れています。それによって、もともと120cmで十分なスペースなのですけれども、さらに広く感じられるようにしています。

G:
奥行きもかなりあるように感じたのですが、どのくらいの奥行きで作ってあるのですか?

松野:
奥行きは80cmです。一般的なデスクよりもかなり大きく取っています。


G:
かなり深いですね。

松野:
はい。デザイナーが入って仕事をするという前提で作りました。デザイナーが使っているディスプレイは大きめです。ディスプレイが大きいと、全体を見渡しながら作業をするのが難しく、少し距離をとらないと見えにくいんです。そのような問題が起こらないように、ディスプレイをちゃんと適切な距離に保てるようにしています。しかも、テーブルの手前もすごく広く取れるので、スケッチとキーボードを両方並べて置いても十分な広さですし、ペンタブなどを置いても十分な広さがありますね。

G:
やはり、非常に細かく考えられているのですね。世の中のデザイン関係のオフィスは見習わないといけないですね(笑)。GIGAZINEでも机を選ぶときに幅や奥行きをかなり考えていて、以前は奥行きを完全に犠牲にして作りました。

フェンリル株式会社 管理本部 管理部 広報課 課長 金内 哲也さん(以下、金内):
実際に自分が働く場所を自らデザインしているわけですから、よく分かっていますよね(笑)

松野:
今まで、「こうしたらいいのに」「こういう問題があるな」と考えていたことを全部解決しようと思って最初から設計しています。テーブル自体もオリジナルで作ったので、思う存分作り込むことができました(笑)


G:
すさまじいですね。次に本棚の部分ですが、あのコンセプトも同時期に思いついたという感じですか?

松野:
そうですね。まず「本棚が必要だ」ということと、「それぞれのデザイナーの資料を共有したい」ということは最初から決めていました。最終的にスタジオの印象の中に落とし込むことを考えて、「壁を四角くくりぬいただけの、長細くて広くて大きな本棚にしたい」というのは割と最初の方から決めていました。実際のスケッチを残しているのですが、これは割と最初の方に描いたものですね。


G:
スケッチを見ると、かなりイメージに近いものが完成したのですね。

松野:
そうですね。検討したものはいろいろとあり、プランが違うものもあります。例えば以下のデザインは、三角形の変わった形のビルのスペースを借りるかもしれないという時に描いたデザインです。このスケッチでも、みんなで使うような共用のテーブルというアイデアは既にあります。


G:
前回のインタビュー記事で読者から大好評でしたが、他にもおもしろいスケッチはありますか?


松野:
これは本棚ですね。壁に本棚と収納が並んでいるというスケッチです。


G:
こちらも、実際のスタジオのイメージに近い感じですね。

松野:
形は少しずつ違いました。この時のスケッチにはベンチがあって、ベンチの中に何か入れるというのも考えていました。収納の表面に模様をつけて区別するというアイデアは、実際は取っ手の模様で区別することにしたのですが、その名残があるという感じですね。

松野:
これはカウンターの初期案です。最初は普通にゴミ箱にフタをつけていましたが、最終的には全部を中に収めてしまうというデザインになりました。


松野:
このバックヤードはそのままですね。上部は開けてあります。


G:
すごいですね!こんな詳しい部分までアイデアとして作っていたのですね。このスケッチを見ていると、ほとんど松野さんの思いが全て形になったような感じですね。


松野:
相当、いろいろ大変なこともありました(笑)

机やイスなどを入れる前の、何もない状態のスタジオは以下のような様子。この状態から、一からスタジオを設計していったというわけです。


G:
思い通りに行かないというか、実際にやってみると大変だったのはどのような点ですか?

松野:
先ほど本棚の重さの話をしていましたが、最初は業者に「こんな本棚はできない」と言われました。本が重いですし、絶対に支えられないという話でした。もし最悪ダメなら、内側に支柱を入れてなるべく目立たないようにするというプランも一応用意したのですが、最終的にはがんばっていただいて(笑)、ちゃんと思い通りの本棚が完成しました。

本棚は、まず壁に沿って枠を設置して……


板を貼っていきます。


さらに上からウレタン塗装で仕上げ、真っ白な作り付けの本棚が完成。


松野:
本棚の他には、テーブルがやっぱり一番難しかったですね。「人工大理石にすると1枚板のテーブルにできる」とかなり最後の方に発見することができましたが、それまでは普通のメラミン板のテーブルのように継ぎ目が入ってしまうと言われていました。

G:
人工大理石を磨くと継ぎ目が消えるというのは初めて聞きました。

松野:
私も今回、この机のデザインで初めて知りました。あとは薄さとか、ぴったり収めるためにどうすればいいかということも、最後の最後まで業者さんとあーでもないこーでもないと相談していましたね。もう締め切りは過ぎていたと思うんですけど(笑)。決めなきゃいけないと言われていても、「こうしたらできるんじゃないの?」みたいな相談をしていました(笑)

机の制作は、最初に巨大な人工大理石の板を部屋に搬入。


板同士を隣り合わせて置いて……


合体させた後に、天面を磨いて継ぎ目が見えない様に加工したそうです。


G:
粘り倒したんですね(笑)。先ほどの話でぽろっと出てきましたが、全体的なテーマとして「ミニマル」というコンセプトがあるのですか?

松野:
そうですね。今回のスタジオは、「フェンリルデザイン」をそのまま表現することを含めていました。フェンリルデザインは「無邪気によいデザインをつくる」ということを掲げていて、「無垢」「ストイック」というイメージがあります。よいデザインのことだけを考えて、そればかりに真剣に取り組むという考えを、スタジオという空間で表現するとどういう風になるかなというところから、ああいったイメージになりました。

G:
スタジオの使い方自体も、フェンリルデザインの思想を露骨にイメージしているなと思いました。足元には物を置かないという考えもそのひとつで、下に物を置いているとぐちゃぐちゃしますものね(笑)。机に引き出しがないのもそういう理由なのですか?

松野:
そうですね、なるべく物を置かないようにという感じです。本来は物を置かなくてもいいはずなので。

G:
なるほど。

松野:
それであれば置かない方法を考えて、機能としては犠牲にせずに収納スペースにしまえば大丈夫なようにしていますし、カギもつけてちゃんと施錠されるようにしています。

収納スペースを制作中の様子は以下のような感じ。板の高さを後から変えられるように設計されています。


G:
足元にはキャビネットを置かないように、ということですね。他にも全体的にミニマルな雰囲気にするために気をつけた点はありますか?

松野:
ホワイトキューブのような感じにして、スペースもたっぷり取るようにしています。


G:
確かに、イスを引いたときに後ろの壁にぶつからないように、かなり空間を取ってありました。実際にデザインスタジオに移動してから、みんなの働きっぷりは何か変わりましたか?

松野:
かなり静かな感じで、人数も最大で35人しかいないので、静かな空間になっています。「静かなおかげで集中できる」という声が出ていますね。

G:
それが製品のクオリティにだんだん現れていったらいいなという感じでしょうか?

松野:
はい。実際に、静かな空間を求めて14階のエンジニアが12階で作業をする時もあります(笑)。それに、あれだけ広いと、テーブルの周りも広いですし、イスも移動できますので、「ちょっと誰かの席の近くに行って軽くミーティングする」というようなことも自由にできます。活発に議論が行われているようです。


G:
先ほど撮影中にもイスを動かして会話が行われていましたね。デザインスタジオで働いているのはデザイン関係の人ばかりだというお話ですが、他の部署から「うらやましい!」みたいな声はあるのでしょうか?

松野:
ありますね(笑)

G:
他の部署も、ここから先は特徴的な部屋に変わっていくのでしょうか?

金内:
そうなったらいいですね。「エンジニアリングスタジオ」とか作ったりして(笑)

G:
なるほど(笑)。そのうち「フェンリルデザインで『エンジニアリングスタジオ』をデザインしよう!」みたいな話が出てくるのかもしれないですね。

松野:
そうですね、その時は部屋の設計を考え直します。今回のスタジオはデザイナーがフェンリルデザインとして仕事をする時にどういったものにするかというところから落とし込んで1個ずつ全部考えているので、新しい要望があればまた違った姿になるでしょうね。

金内:
今回はフェンリルとしてデザインに改めて注力していきたいという思いがまさに形になったというスタジオなので、この次は「デザインと技術」の「技術」の方が回ってくるかもしれないですね。


G:
スタジオの空間を見るとミニマル的なコンセプトが非常に分かりやすいのですが、松野さんが「ミニマル的なものがいいな」と思うようになったキッカケや経験はあるのでしょうか?生まれた時からミニマル人間ということはないと思うので(笑)、何らかの変遷を経て今に至っていると思うのですが、ミニマルがいいなという考えに移行するようになった経験は、振り返ってみて何かありますか?

松野:
そうですね……具体的に何がキッカケだったのかはパッと思い出せないのですが、デザインをずっとやってきた中で、機能や目的がそのまま形になったものが優れたデザインだと思っています。機能をそのまま純粋に形にしようとすると、どうしてもああいった形になっていくのかなと思います。その機能の中に楽しげな感じを出したいというのも機能のひとつです。世の中のいろいろなデザインがそうなっていると思うのですが、純粋にデザインを形にしたらどうなるのかと考えると、機能だけに集中して余計なものをそぎ落としたものが優れたデザインだと日頃から感じています。

G:
松野さんがデザインを仕事にしようと思ったキッカケは何でしょうか?「これがデザインなんだ」と気付いた原体験のようなものがあれば教えてください。

松野:
今、パッと思いついたものだと、オリンピックのピクトですね。

G:
ピクトというと、オリンピックの案内看板ですね。

松野:
ピクトに心ひかれたのはよく覚えています。リレハンメルオリンピックだったと思います。

G:
確かにオリンピックのピクトグラムは、ユニバーサル的なデザインでかなり簡略化して作ってあるので、今のミニマル的なものに通じる点がありますね。

松野:
はい。しかも各オリンピックで特色も出していて、すごく端的に各競技を表現しているので、それをおもしろく思っていたのを覚えています。

G:
少し話がずれるのですが、この前ちょうど偶然、大阪万博の記念公園に行った時に知ったことで、1970年の大阪万博から世界的にピクトグラムが普及したそうです。実際に万博記念公園のEXPO'70パビリオンという記念館に当時のピクトグラムが展示してあって、今のピクトグラムの原型がほとんどココにあるなと戦慄してしまいました。元・鉄鋼館のパビリオンをそのまま使っていて、おもしろかったです。

松野:
ピクトグラムやアイコン単体でもおもしろいですよね。

デザインスタジオの本棚にも、ピクトグラムのグラフィックスの本が置いてありました。


G:
こういうデザインを立体にするとデザインスタジオの感じになるのだなあと思いますね。

松野:
今まで私がフェンリルでやってきた仕事はアプリのデザインが多いのですが、スタジオのデザインにもつながっているという感じがします。「何が必要でどうすれば解決できるのか」ということをそのまま形に落とし込んでいく作業なので、共通の作業でした。

G:
デザインのスケッチを描いていく時は、自分で思い浮かべたことを形にしていくと思うのですが、どういう気分で作業しているのですか?

松野:
どういう気分とは?

G:
要するに、デザイナー個人個人によってフロー状態というか集中している感じが違っていると思うのですが、松野さんの場合はどういう感じで集中しているのでしょうか?

松野:
そうですね……それぞれの必要なものを全部1個にまとめていくというイメージがありますね。大抵の場合、何か1つだけをかなえたら解決するというものではないので、例えば今回で言えば「ゴミ箱をなんとかしたい」という思いから給湯カウンタの中にゴミ箱を入れることにしたのですが、同時にスタジオ全体の印象にフィットさせたり、カウンタの上にレンジやポットも置けるようにしたり、収納の機能もかなえたりといった要件があったので、1カ所で解決した上にそれぞれが邪魔にならないというのが一番いいと思いました。そういう要件を全部並べて、重ねて、1個の形になっていくというイメージですね。


G:
一石二鳥、三鳥、四鳥のようなものを全部重ね合わせていくイメージですね。

松野:
アイデアを、常識にとらわれずに発想していく必要があると思います。

G:
アイデアは普段からため込む方なのか、今のように問題が発生した時に出たアイデアをまとめていく感じなのか、どういうようにアイデアを思いついていますか?

松野:
どちらもありますね。ただ、実際に形になる時には、何かを解決する時に出てくるアイデアが多いです。

G:
「アイデアを出せ」と言われても突然何もないところからアイデアが出てくるわけないので、普段からあの本棚に並んでいる本のようにインプットしていると思うのですが、インプットを普段から心掛けているのか、それとも心掛けなくてもありとあらゆるものがインプットになるので意識していないのでしょうか?

松野:
割と意識せずにやっていますね。

G:
日常のいろんなところから、という感じでしょうか。

松野:
何でも気になってしまいますね。例えば駅の壁から変な突起が出ていると、「この突起はなぜ出ているのだろうか、絶対わざとだよな」と考えたりします。他にも、扉を見て、「扉の開く機構を隠したい時はこういう風にしたらいいんだな」といったアイデアが自然にため込まれていて、何かの拍子に必要になると、アイデアが生かされるという感じです。

G:
割と普段から知的好奇心が強い方なのですね。いろいろなものに興味を持ったりだとか。

松野:
そうだと思いますね。

G:
いろいろな点と点を集めてつないで線にしていくという感じのイメージですね。

松野:
そういうイメージもありますね。楽しくてやっています(笑)

G:
デザインスタジオの本棚に松野さんが選んだ本がたくさんありましたが、ああいう変わった本は、本屋さんに行って偶然見つけるのか、ネットをうろうろしていて見つけるのでしょうか?

松野:
あの月の絵本は、本屋さんで見つけました。

G:
本屋さんに行く時は、どの本でもジャンルにこだわらずバラバラに見ていくのですか?

松野:
そうですね。気になるものや気に入ったものを探していく感じです。

G:
本屋自体が松野さんに合っている感じがします。Amazonは普通の本屋さんの対極にありますから。

松野:
そうですね。必要にかられて、目的意識を持って行くとなかなか見つけられなかったりしますね。たまたま見つける方が大事だったりします。


G:
なるほど。どうしてこういう質問を聞いているのかというと、世の中には「アイデアが出ない」「企画が出ない」という人がいて、僕にしてみれば「何を言っているんだ、普段からそこら中にネタが転がっているよ」という話なのですが、なかなか理解してもらえないです。デザインとアイデアは同じような感じがしますね。そこら中のものが何でもデザインしてあり、無意味なものなんてないのに、「あなたたちは目を開けて寝ているのか?」と思うことがあります(笑)。普段からそういうものに対して、いろんなものに興味を持つことが必要ですよね。

松野:
そうですね。世の中のすべての人工物は誰かがデザインしたものなので、なぜそういう形になったのかという理由を解明していくという楽しさもあります。例えばつまらないデザインがあったとしても、どうしてつまらなくなったのかという理由を考えるのがおもしろいんです(笑)。優れたデザインも、そうでないものも、全部おもしろいです。

G:
確かに、「どうしてこうなったんだろう」というデザインから、「評価されているけど意図したものと違うものができているな」と思うデザインもあります。優れたデザインが評価を得られるかというと、また違った問題ですよね。あまりにも優れすぎてナチュラルに溶け込んでいて、「誰も気がつかないくらい溶け込みすぎている」というものもありますね。また話が変わるのですが、以前「このデザインは超失敗だ」と思ったのが、阪急電車の新型車両のデザインです。車両の間のドアの機能デザインが変わってしまって、今まではドアを横に引くと開いたのですが、取っ手にセンサーが付いて持つと自動で開く方式に変わりました。取っ手を持つだけでセンサーが反応して開くのですが、取っ手型のせいでみんながガチャガチャ引こうとして「開かない!」と困ってしまって、手を離すとセンサーで感知できなくなり、後ろの人がどんどん詰まるという悪循環が起こっているので、いつになったら普及するのかと見ています。導入から10年くらい経っていますが、いまだにみんながガチャガチャやっているので、もうデザインをどうにか変えて、ボタンを設置して押してもらう方がいいのではないかと思います。

松野:
そういうデザインに限って、説明文が必要で、何か書いてありますよね。

G:
説明が書いてあるのですが、あまりにも取っ手が日常的な自然なデザインなので誰も読まないという(笑)。いまだかつてスッと開けたことがある人を見たことないです。あまりにも高度すぎるデザインですね。逆に、阪神電車の最新車両は、何を血迷ったのか、ホームに停車してもドアが自動で開かない設計です。乗り降りする人が自分でボタンを押してドアを開ける方式で、「これはド玄人向けだろ、誰も開けられないのでは」と当初は思いました。阪神電車もびびっているのか、運行当初は1日1本程度しか運行していなくて、時刻表の下に「この時刻の電車は新型車両なのでボタンを押して乗り降りしてね」と書いてありました。ただ、乗り降りする人を見ていると、あのボタンはちゃんとみんなが押すんです。乗ろうとしたらドアが開かないので周りをきょろきょろと見回したら、ちゃんと目線の方向にボタンが設置してあるので、説明も読まずにみんながボタンを押しています。2015年11月頃からは新型車両の運行本数が増えているので、デザイン的に無理そうなデザインでも案外いけるものだなと思っています。それでいくと、ソフトウェアのデザインは実際に作ってからユーザーテストをある程度行うことが可能ですが、実際に「このデザインで行こう」という決断はどのあたりでやるのでしょうか?

松野:
デザインスタジオは、普段から困っている点を解決するためにやっていったので、イメージの段階まではすぐに行き着きました。

G:
お話を伺っていると、どちらかというと実際に作る人の方が大変だったのですね。作る人に「ここが大変だった」と言われて、「そうだったんだ!デザインしているだけでは分からなかった」という部分はありましたか?

松野:
そうですね……作る際に、既製品を使う方が当然やりやすいじゃないですか。実績もあるし、施工も簡単だし、予算的にも安くできるのですが、全部の要望が少しずつ外れていたので既製品ではできないことばかりでした。ただ、これはある程度想像の範囲でしたね。大変なのは分かっているけれど、全部こだわっているので、「どうしてもコレにしたい!」というものが多かったです。一番印象に残っているのは、机の薄さです。「天板を薄くして、脚にきちんとはめ込む」という作業に業者さんが苦労していましたね。どこまで天板を薄くできるかというのは限界があります。業者さんは、安全性とか、搬入時に割れないようにということを考えるので、少し大きめに作りたいんです。最初は「厚み1cm」ですと言われていたのを、「3mmにしてほしい」と言って、相談して最終的にやっと6mmに行き着きました心の中では「やっぱりな」と思っていたのですが、相談中は知らん振りをして「いやいや、なんで薄くできないんですかー」といった要望を混ぜながらイメージに近づけていきました(笑)

G:
なるほどなるほど。

松野:
あのテーブルは、フレームがスチールで、天板が人工大理石を使っています。人工大理石はすごく丈夫なのですが、あのサイズを上に一枚ドーンと載せると、真ん中の部分が自重に耐えられなくて割れる恐れがあります。そこで、フレームの横の板をどこまで通すかを考えたりだとか、フレームだけではなく面で支えるために、木のパネルも入っています。


松野:
フレームと木のパネルは別の業者に作ってもらって現場でガチャンと組み合わせたのですが、ミリ単位で合わせないとピタッと収まらない仕事です。フレームとパネルを組み合わせるのは夜中の作業で、私も立ち会ったのですが、柱と支柱の形がギザギザとしていて、ここにピッタリとはまる板を作って収めるという作業でした。板のたわみもあるので、すごい精度でやっていただきましたね。


松野:
あとは、天板を薄くするにも、内側の方は分厚くしないといけなくて、でも薄く見せたいので、「一番外側だけを薄くして斜めにカットして内側に厚みを設ける」というアイデアも出していました。結局はその方法より他の方法がいいとか、強度的・予算的に難しいとか、いろいろな要素があって、今の形になりました。

G:
机の薄さの要望を出すとは、すごいですね(笑)。GIGAZINE編集部でも、同じような目的で作られたイタリアのメーカーの机を検討したことがあります。天板の外側から内側に向かって斜めに深くカットしてあり、目の高さで見た時にはちゃんと薄く見えるけれども、実は真ん中がとても分厚いという合成加工のタイプだったので、「この作りをパクろう」と思って、同じように合板を積み重ねて机を作ってもらいました。デザインスタジオの机は全部薄くしているというのはビックリです。

松野:
人工大理石だからできたというのはありますね。

G:
うちの場合は、ただの木を使っていました。

松野:
それもすごく大変な作業だと思います。

G:
ベニヤ板ではできなかったので、ベニヤ板を作る前の段階の板を使っていました。合板やラワン材を試してみて、最終的にただの集積材が一番反らなくていいという結論に達しました。細長い集積材を5枚重ねて、その上にメラミン加工の板を置こうとしたら、「板を置くよりも集積材を加工した方がいいのでは」という話になり、板に樹脂を染み込ませてカチコチにして後から表面をツルツルに磨くという方式で完成しましたね。

松野:
それはおもしろいですね。

G:
「こんなことができるのか」と、業者の人と一緒にビックリしていました。デザインスタジオと同じように、部屋に持ち込むときに板が折れたら大変なので、GIGAZINEでは材料を部屋に持ち込んで作業していました。板を作ってから机の形に削っていたので、彫刻のようでしたね。業者の人も「初めて作った」と言っていました。それからうちの要望として、蛍光灯を交換するために机の上に乗れるように「荷重80kgで人が乗れるようにしてほしい」と言ったら、机と鉄骨をつなげようということで、三角形のパーツを作って机と鉄骨を溶接しました。これで机が折れるなら家ごと折れる時だというほど、めちゃくちゃ丈夫で頑丈な机になりました(笑)

松野:
めっちゃおもしろいですね(笑)

G:
みんなで爆笑しながら作っていました。机にケーブルを通す穴を空ける作業も、実際にノートPCを机に置いて「ここに開けて」と頼んでバリバリーっと穴を空けてもらいました。

松野:
すごい現場対応です。

G:
それから、机の下に鉄骨がむきだしだったので中にLANケーブルをはわせて、カバーを合わせて作って外からケーブルが見えない様にしました。ただ、あとからLANケーブルを交換するのが大変でしたね。まさかケーブルが断線してしまうと思わなくて、配線しなおすのが大変でした。NTTとかが持ってくるような、ケーブルを通すパイプのような機材を買って、「電気工事屋かよ!」とか言いながら作業して大変でしたね。デザインスタジオの設計では、意外にうまくいかなかった部分というのはありますか?見ていると、うまくいっているように見えましたが……。

松野:
同じような話で、ケーブルのことなのですが、机の下にケーブルをはわせてうまく隠す方法は研究が必要でした。後から追加で自分たちで対応したので、割と大変でした。どうしても、ケーブルはなくすことができないものですので。


G:
GIGAZINEでは、「新本社ではもう有線LANをなくしてしまうか?」という話もあったのですが、結局は有線と無線のハイブリッドでやっています。最初にケーブルを敷いてもうまくいかないのは前回の教訓から分かっていたので、線だけは最後に穴を空けることにしました。

松野:
でも、現場対応できるというのは、オリジナルならではの楽しさがありますよね。

G:
以前ライブドアに勤めていた時も大変で、オフィスが床下配線だったんです。天井に配線工事してケーブルを回せばいいのに、森ビルが超オサレで床下に全部隠す方式でした。今のように洗練された方式ではなかったので、断線するたびに机を動かして2m×2mの巨大なパネルを外さないといけないんです。ケーブルを変えるだけで毎回大工事で、ホリエモンがぶち切れていましたね(笑)。今のビルだと床下に割とスペースがあるのですが、当時は床下のスペースが全然ありませんでした。

松野:
手がギリギリ入るぐらいでしょうか。

G:
そうです。床下の工事がまた大変で、中がぐちゃぐちゃになっていて「どうすんのコレ?」みたいなことがありました。ライブドアはIT系企業なので、普通以上にパソコンを使うのに、なんとビルがそのことを想定していなかった時代でした。「全社員にLANケーブルがあるなんて信じられない」と言われましたが、あれから後に全ビルに改修が入って、その後に入居した楽天は余裕だったらしいです(笑)

金内:
先駆者のおかげですね(笑)

G:
ライブドアは一生懸命へんてこなデザインばかり作っていたのですが、一番変だと思うのはコンビニですね。

金内:
ああ、聞いたことはありますね。

G:
ホリエモンが社内にコンビニを作ったんです。グランフロントのオフィスビルは、1階まで降りようと思ったらエレベーター2機を乗り継がないといけませんが、森ビルは1階から30階までエレベーターが1本で各階に止まりまくるので、下に降りるまで5分かかり、ご飯を食べに行く時間が60分だと足りないと苦情が殺到していました。そこで森ビルの1階でお弁当を売っている人にホリエモンが声をかけて、「僕のフロアでお弁当屋さん兼コンビニをやりませんか」ということで、条件を受けてくれたところが1件だけあったので配線や壁や飾りを何から何まで考えていたのがすごかったです。普通のコンビニと違うのは、ご飯が最優先なので巨大なお釜が2台置いてあって、ご飯おかわり自由のコンビニでした。それからおつりを出すのが面倒なのでワンコイン500円のお弁当で、1000円払った人はおかずを2個買わないといけない方式でしたね(笑)。今にして考えてみるといろいろとへんてこりんなレイアウトになっていたので、おもしろかったです。それでいくと、社内にデザイン専用の部屋を作るとはすごいなと思います。ちなみに、デザインスタジオを作るにあたって参考にしたデザインやレイアウトはあるのでしょうか?

松野:
オシャレなオフィスを集めたような資料をいろいろ見ました。

G:
印象に残っているオフィスのデザインは何かありますか?「あそこのオフィスがおもしろかったよ」というものがあれば教えてください。

松野:
どのオフィスとも似ているようで似ていないので、難しいですね……。

G:
確かに、こういったデザインのオフィスはありそうでないですね。


松野:
割と、西海岸的なデザインが人気なので(笑)。それはそれで楽しそうなのですが、今回のデザインスタジオはそれらとは違うコンセプトで作りました。単純にキレイにするだけで済ませるのではなく、ちゃんとコンセプトを形にしたかったので、どういうデザインがあるのかだけを一通り見て、あとは一度忘れて考えることにしていました。

G:
先ほど作業台を作っているという話がありましたが、どんな作業台になる予定ですか?

松野:
見た目は他のテーブルと同じで、高さも合わせていて、人工大理石とスチールの素材のグレードも同じですが、上がガラスのカッティングマットになっていて、内側にグリッドを引きます。ガラスは印刷ができないので、下からフィルムを貼って、机に固定するつもりです。もともとはビニールのカッティングマットで透明のものを選び、人工大理石の天板が映えるようにしようとしたのですが、巨大サイズのカッティングマットが存在しないので、数枚のカッティングマットを継ぐことになってしまい、継ぎ目ができるのは避けたいということで、他の素材をいろいろ検討しました。その中で、「ガラスのまな板がある、刃物に耐えるガラスがあるらしい」と聞きつけて、今はサンプルのガラスが手元に届いている状態で、軽く作業してみてうまくいきそうなので準備中ですね。

G:
作業台は必要にかられて作っているような印象ですが、デカイものを切るという作業が割と発生するのでしょうか?

松野:
頻度としては多くないのですが、紙のものを作る時に必要です。例えば先ほど見ていただいたクリスマスカードもそうなのですが、制作段階で実際のサイズに切って確かめます。あとは、お客さんに持っていく資料を作る際にも紙を扱う作業が必要なので、そういう時に使えるようにしています。たまにしか使わなくても、置いていないと困るので、デザインスタジオとしてちゃんと用意しようということを考えて置いています。あとは、デザイナーがいる「デザインスタジオ」を象徴するものでもあるので、普通のオフィスであれば必要ないものですが、デザインスタジオならではの什器としてちゃんと用意しようという思いも含めています。

G:
うちの身内でもデザインの仕事で同じように超デカイ作業台を使うときに、台に合うカッティングボードがなかったので、海外で買ってきていました。A全サイズという、A0を2枚合わせたサイズのカッティングボードが海外にあったようです。あとは、鉄板だと畳1枚分のサイズのものがあるので、鉄板も使っていましたね。買った時は「いつこんなん使うねん!」という感じでしたが、新聞紙1枚を広げて作業するためのスペースが必要だったようです。最後はそれでも足りなかったので、フローリングの上で直接やってました。キズが付いてもあとで磨けばいいやということで、もうめちゃくちゃな発想ですよね。

松野:
そういう解決方法があるのですね。それもおもしろいです。

G:
最後の方には、「カッターで床が傷つくのはカッターの技術が未熟なせいだ」という結論に達して(笑)、床にキズがつかないような形でサーッとカッターを引けるようになっていました。

松野:
雑誌を傷つけずに、ページを1枚切り取るような技術ですね。

G:
今では、ハサミを使ってフリーハンドで切れるようになって「技術の勝利!」と言いながら、紙なら何でも切れると言っています。僕の場合は、仕事で何かを切る必要があるときにレーザーカッターを使ったことがあります。今も、編集部で自前のレーザーカッターのレビュー記事を作成中です。自分で作るDIYのオープンソースのレーザーカッターメーカーが日本にもあるので、実際に製品を送ってもらって、組み立て始めてから何日も経っているのですがまだ完成しなくて「何かおかしい、普通の人間だと組み立てられないぞ、マニュアル通りなのにうまくいかない」と苦戦しているところです。

松野:
楽しみにしています。

G:
今後の予定として、作業台以外にもオフィスに何か増える予定はありますか?

松野:
作業台が完成して、一通りのものがそろうという形ですね。あとは人員も増えていく予定なので、今余っている机がきちんと稼働していって、また何か起こるかなという感じです。


G:
松野さんはデザイナーの採用も担当しているのでしょうか?

金内:
デザイナーに関しては、途中で社内の現場の人間も対応するのですが、松野は人事には直接タッチしていないです。

G:
「こういう人に来てほしい!」みたいな希望はあるのでしょうか?

松野:
やっぱり、デザインに対して純粋な人ですね。

G:
純粋というと?

松野:
私たちは「無邪気にデザインする」と呼んでいるのですが、フェンリルは今までずっと「ユーザーにハピネスを届けるためのもの」を作ってきて、その理念をデザインでやるとなると、大事なのはユーザーのためのよいデザインをひたすら追求できるような姿勢、スタンスだと思っています。もちろん会社としてやっていれば、いろいろな事情も必ず出てくるのですが、それを分かった上で、ユーザーのためのよいデザインを突き詰めるのは、変に「物わかりのいい大人」になってしまうと難しいと思います。じゃあどうすればできるかというと、それは無邪気にならないとできないことなんです。私たちはそういう姿勢で、あくまで「ユーザーのためによいデザインをすること」だけを考えてものを作ることを貫きます。デザインの力で、それをかなえられる人が、必要な人材ですね。


G:
いい話ですね!

松野:
ありがとうございます。

G:
他に言い残したことはありますか?

金内:
フェンリルデザインのブランド自体でしょうか。

G:
ブランドというと?

松野:
フェンリルデザインは、今までフェンリルがデザインを大事にしてきたということをもう一度改めてフォーカスして、より広く知ってもらうために立ち上げたものです。

金内:
ウェブサイトも新しいものを用意しています。フェンリルとフェンリルの一部を「フェンリルデザイン」という新しいブランドとして盛り上げていこうという取り組みを、松野を中心に行なっています。

G:
フェンリルにはソフトウェアの共同開発という事業がありますが、今後はデザインの仕事を受けるというのもアリということでしょうか?

松野:
はい。「デザイン」という言葉はすごく広いと思うんです。

G:
例えば「管理画面のデザインをしてほしい」という要望から始まって、究極的に「自動車のデザインをフェンリルに頼む」みたいな依頼がアリという感じなのでしょうか?「この自動車はフェンリルがデザインしました!」みたいな(笑)

松野:
楽しそうですね(笑)

G:
フェンリルデザインと言うからには、こういう仕事もできると嬉しいなという感じでしょうか?

金内:
まだ事業として具体的なお話があるわけではないのですが、ゆくゆくは「デザインのフェンリル」というのを強化していきたいので、技術ではないデザインだけの仕事もやっていけるとおもしろいなと思います。

G:
話していて思ったのですが、フェンリルのアイコン集みたいなものがほしいですね。いろいろな独創的なアイコンデザインを手がけているので、ああいうアイコンだけを集めてダウンロードできたらおもしろいなと思います。「フェンリル素材集、これを組み合わせたらあなたもフェンリルのモックアップが作れる!」みたいな(笑)。フェンリルは社長の柏木さんがソフトを作っている時から割とそういう傾向にあり、「標準のコンポーネントがそんなに嫌か」というほど考えがありありとしているので、人材選びもその延長線上にあるのだなと思います。もしもそういったおもしろ素材がリリースされたら教えてください(笑)

松野:
フェンリルデザインのサイトは今も立ち上げ中でどんどん更新していきたいですし、フェンリルデザインで手がけたデザインのこだわりやバックストーリーもどんどん公開していきたいと思っています。


G:
おもしろそうですね!

松野:
語れることはいっぱいあるので(笑)

G:
なるほど(笑)。本日はありがとうございました。

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in 取材,   インタビュー,   ソフトウェア,   ネットサービス,   デザイン, Posted by darkhorse_log

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