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全自動で衣料品を生産するロボットミシンは途上国の縫製産業を奪い取る


近い将来、ロボットが人間の仕事を奪い去るかもしれないという懸念が沸き上がり物議を醸しています。完全なる機械化・自動化の流れは衣料品産業にも忍び寄りつつあり、途上国の仕事が奪われるという指摘がされています。

A robotic sewing machine could throw garment workers in low-cost countries out of a job | The Economist
http://www.economist.com/news/technology-quarterly/21651925-robotic-sewing-machine-could-throw-garment-workers-low-cost-countries-out

衣料品の素材である生地の製造や縫製は、人間の手作業が必要であるため、途上国など人件費の安い国や地域で請負われています。つい先日までは衣料品の多くを製造していたのは中国でしたが、中国経済の発展に伴う人件費高騰のせいで、衣料品の生産現場は中国からベトナム、バングラディッシュを経て、最近ではミャンマーなどより成長途上の人件費が安い国へと移っています。

By Arian Zwegers

しかし、この安い人件費を求めて生産拠点を移す動きが、全自動縫製マシン(ロボットミシン)の登場によって終了するのではないかという指摘があります。

生地を織ったり、裁断したり、ボタンやステッチを付けたりといった単純な作業は、すでに全自動化されています。しかし、異なる種類の生地をつなぎ合わせたり、生地の端を仕上げたりなど、動作を切り替える必要がある作業は比較的難しく、人間の手が必要です。もっとも、IT技術の発展によって、これらの作業のハードルを乗り越えるマシンの登場は近いとのこと。

「生地のヨレやたわみはもはや過去の問題です」とはジョージア工科大学で教授を務めていたスティーブ・ディッカーソン氏は述べています。ディッカーソン氏は現在、アメリカ・アトランタでSoftWear Automationという会社を立ち上げて、衣料品製造の完全自動化技術を開発中。高性能カメラを使って生地の状態を詳細にキャプチャーして、その情報を基に縫製したり、生地の端を認識して折り返しつつ縫っていく手法を試しているとのこと。

By Susanne Nilsson

SoftWear Automationの技術は1秒間に1000フレームの超高速撮影によって瞬間的に変わるコントラストから生地の状態を把握するというもので、この技術で2012年に特許を取得し、DARPAから130万ドル(約1億6000万円)の研究費用を獲得しています。2014年には異なる素材の生地を縫い合わせられるロボットミシンの製作にも成功。すでに熟練工に勝るとも劣らない精度で縫い合わせる技術の開発に成功しているそうです。

また、LOWRYと呼ばれるロボットミシン用の腕も開発。LOWRYは吸引式のピックアップアームを持ち、異なる種類の素材を持ち上げて他のマシンに受け渡すことが可能とのこと。つまり、カット専門のロボットや縫製専門のロボットにLOWRYを搭載することで、生地の裁断、縫製などの衣服を製造する作業をロボットだけのチームで完結させられるというわけです。

GAPやユニクロ、ZARAなどのファストファッションブランドは、大量に生産することでコストを抑えて、従来になく早いサイクルで、製品を消費してもらうことに力点を置いたビジネスモデルです。このため、衣料品を海外で製造することで発生するタイムロスを嫌う傾向にあるそうで、全自動の衣料品製造ロボットに対して非常に関心を持っているとのこと。

By Elvert Barnes

マーケットリサーチ会社Plunkett Researchのジャック・プランケット氏は、アジアに生産拠点を構える衣料品会社は、賃金をいかに抑えられるかに神経をとがらせており、その目は全自動で衣料品を生産できるロボットミシンに向いていると述べています。

なお、人間の手を一切加えることなく商品を生産することに高い関心があるのは衣料品分野だけでなく、靴の産業でも同じとのこと。現在は3Dプリンターを使って出力された従来にないデザインのスニーカーが注目されていますが、近い将来、より柔らかい生地を3Dプリンターで出力して靴を作ろうという研究が進められているそうです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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