生き物

毒ヘビの血清の備蓄が2016年で枯渇する

By Herman Pijpers

世界中で毎年10万人以上が毒ヘビにかまれて命を落としていると推定されていますが、アフリカではヘビの毒に有効な血清のストックが2016年内に尽きてしまう、という危機に直面しています。

Africa braced for snakebite crisis : Nature News & Comment
http://www.nature.com/news/africa-braced-for-snakebite-crisis-1.18357


サハラ以南の西アフリカにはブラックマンバなどの、極めて強い毒性を持つヘビが生息しています。国境なき医師団の調査によると、中央アフリカ共和国と南スーダンでは概算で毎年3万人が毒ヘビにかまれて死亡しており、少なくとも毎年8000人が手足の切断を経験しているとのこと。

アフリカ以外でも、インドなどに生息する猛毒のカーペットバイパーによる被害が毎年発生していますが、毒ヘビにかまれた場合、ただちに血清治療を受けることで毒を中和することができます。しかし、2010年にフランスの製薬会社であるSanofi Pasteur(サノフィパスツール)が、毒液を注入した馬の血漿(けっしょう)から作られる「Fav-Afrique」と呼ばれる毒ヘビの血清抗体の生産を中止しています。かつて多くの人々を救った実績のある血清ですが、1人あたり250ドル~500ドル(約3万円~6万円)と原価が高いため、アフリカでは毒ヘビにかまれた人のうち10%しか治療を受けられないとのこと。血清を生産してもコストを回収できなかったわけです。

By Alessandro Vannucci

サノフィパスツールは、Fav-Afrique生産のノウハウを承継する準備していますが、引き継ぎ先は見つかっていない様子。南アフリカ・インド・メキシコ・コスタリカには、Fav-Afriqueより低コストの血清を生産する製薬会社がありますが、アフリカに生息する全ての種に対する安全性や有効性は、臨床試験で未確認のものであるとのこと。国境なき医師団は、Fav-Afriqueに替わる有効な血清の開発プロセスを促進するため、中央アフリカ共和国と南スーダンの2つの病院を研究施設として提示していますが、製品として確立されるまでには、少なくとも2年の歳月を要すると考えられています。

都市部では被害が少ないため、あまり重要視されていない毒ヘビの血清問題ですが、過去数十年で毒ヘビによる死亡者数は増加の一途をたどっています。WHOも十分な支援プログラムを用意できていない状況で、オックスフォード大学の熱帯医学専門家であるデービッド・ウォーレル氏によると、デング熱やアフリカ睡眠病といった17の熱帯病よりも多くの命を奪っているとのこと。ウォーレル氏は「かつて、我々が毒ヘビについて話すと、人々は笑って聞いていました。しかし、もう彼らは笑うことはできないでしょう」と話しています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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