「忘れられる権利」によるGoogle検索結果の削除依頼でわかる傾向とは
by 古 天熱
いったんネット上に広まった情報をすべて削除するのは困難ですが、個人情報やプライバシーを侵害する情報、誹謗中傷などがいつまでも残り続けるのはどうなのかということで、救済手段として取り上げられるようになったのが「忘れられる権利」です。この権利によって、Googleには検索結果に対する削除依頼が寄せられていて、その一部が「透明性レポート」で公開されているのですが、手違いによって本来は公開されないはずだった範囲まで情報が流出し、いったいどういった削除依頼があるのか、Googleがどう対応しているのかがより詳しく判明しました。
Google accidentally reveals data on 'right to be forgotten' requests | Technology | The Guardian
http://www.theguardian.com/technology/2015/jul/14/google-accidentally-reveals-right-to-be-forgotten-requests
2014年5月に欧州連邦司法裁判所の判決により、Googleなどの検索エンジンに対して個人名を含む検索キーワードによる検索結果の削除を求める権利、「忘れられる権利」がユーザーにあることが認められました。削除依頼は個々に評価する必要があり、公益に役立つこと場合は検索結果を削除しなくてもよいことになっています。まず、Googleが公開している透明性レポートがコレです。
検索に関する欧州のプライバシー – 透明性レポート – Google
http://www.google.com/transparencyreport/removals/europeprivacy/
Googleが削除依頼リクエストの処理を開始した2014年5月29日以降で、削除のために評価したURLの総数は109万383件、受け取ったリクエストの総数は30万773件。このうち、削除されたURLは41.5%、削除されなかったURLは58.5%です。
削除依頼の例としては、たとえばドイツで10年以上前に軽微な犯罪で有罪判決を受けた教師から、判決に関する記事を削除するようにというリクエストがあります。このケースでは、Googleは個人の名前による検索結果から該当するページを削除しました。一方、オーストリアではビジネス上の不正行為で告発された男女2人が、犯罪に関する記事の削除をリクエストしましたが、Googleは検索結果から該当するページを削除しませんでした。
削除されたURLが多いサイトは、Facebook(www.facebook.com)が8640件、The Profile Engine(profileengine.com)が7108件、Google Groops(groups.google.com)が5514件、YouTube(www.youtube.com)が4782件という順です
公開されていたのは上記のような概要部分だけだったわけですが、漏れた情報にはもうちょっと詳しい内容が含まれています。ちなみに、情報の流出元は2015年3月23日公開の透明性レポートのソースで、約2ヶ月にわたって公開されていました。
#righttobeforgotten
http://sytpp.github.io/rtbf/index.html
その内容によると、2015年3月時点の削除依頼件数は21万8320件で、96%(約21万件)が個人情報に関わるものでした。
人口100万人に対してどれだけの削除依頼があるのかを示したグラフがコレ。エストニアが1192件、リヒテンシュタインが975件、オランダが810件と多く、少ない方を見るとギリシャが114件、ポーランドが154件など。
国別に依頼内容を分類したものがコレ。
たとえばイタリアだと、85%が個人情報、12%が犯罪関連、2%が政治関連。
ルーマニアでも一番多いのは個人情報(87%)ですが、政治関連が7%と多いのが特徴的。
数で見ると、最も削除依頼が多かったのはフランスからで1万7500件、対象URLは5万8000件でした。
そして、依頼ジャンル別の削除割合まで漏れています。個人情報の場合、削除受理が48%(濃い青色の部分)、削除拒否が37%(薄い青色の部分)、「情報不足」が14%(濃い灰色部分)。
著名人に関するものの場合、受理は22%、拒否は71%と大きく割合が変わっています。これは、著名人に関する検索結果は公益に役立つので削除する必要がないと判断したものが多い、ということだと思われます。
なお、カンタンに権利を行使したいという人向けに、GoogleとBingへの削除依頼を手伝い、かつ依頼後にちゃんと削除が行われているのかを確認してくれる「Forget.me」というウェブサービスが作られています。
The Right to be Forgotten online easily | Forget.me
https://forget.me/
なお、「忘れられる権利」はあくまで欧州連邦司法裁判所の判決により認められたものなので、Googleはフランス語版やドイツ語版などのEU圏のローカル版では削除依頼があれば情報の削除を行っていますが、全世界での検索結果削除については拒否しています。
米グーグル、「忘れられる権利」の全世界適用を拒否 | Reuters
http://jp.reuters.com/article/2015/07/31/google-right-forgotten-idJPKCN0Q506420150731
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