「会社で食べて寝て生活する」という考え方・Googleの場合

by Bill Dimmick
やむを得ず会社で眠り食事をする生活を送ったことがある人もいるはずですが、Googleの場合、社内Wikiに「Googleで生活する」というページが存在したこともあり、「オフィスで寝泊まりする」を越えて「車を買って会社の駐車場で完全に生活する」人々もいました。一体どんな人がGoogleでどんな生活を送っていたのか、Bloomberg Businessがまとめています。
Thirteen Months of Working, Eating, and Sleeping at the Googleplex - Bloomberg Business
http://www.bloomberg.com/news/features/2015-07-22/thirteen-months-of-working-eating-and-sleeping-at-the-googleplex
シリコンバレーには「ガレージで創業する」の次に「オフィスで眠る」という神話が存在します。例えば、テスラモーターズやスペースXを創業したイーロン・マスクはオフィスのデスクの横にあるビーズクッションの上で眠り、YMCAの施設でシャワーを浴び、施設のロッカーには自分の服を保管していたと言われています。また、ストレージサービス「Box」を立ち上げたアーロン・レヴィはもともと自宅をオフィスにしていたのですが、会社が大きくなり、社員が収まりきれなくなると自宅とは別にオフィスを作りました。そしてその際、自分の自宅にあるベッドをオフィスまで移し、「どんな状況でもデートはできるよ。やぼったくても、いつでも仕事がしていたいんだ」は語ったことでも知られています。Yahoo!の創業者であるデビッド・ファイロに至っては、億万長者となった後も、デスクの横の寝袋で眠っていました。

会社を大きくする役目を担う創業者にとって「働く場で暮らす」ということは理にかなっていますが、プログラマーが会社で生活することは、「会社への献身」というよりも「プログラムの質を高める」という意味の方が多くなります。
2005年当時27歳だったマシュー・ウィーバーさんも「会社で暮らす」と決意した一人。ただし、Googleでサイト・エコロジストとして働いていたウィーバーさんは「オフィスで暮らす」のではなく、レクリエーショナル・ビークル(RV車)を購入することを選択しました。それまでウィーバーさんは通勤に90分もの時間をかけていたのですが、ある日、アメリカ合衆国退役軍人省のロバート・マクドナルド長官がコーダーをリクルートしにGoogleにやってきたことから、同僚たちとの激烈な競争が始まったため、同僚たちと差をつけるために、Google本社の駐車場にとめたRV車で生活することを決意したのです。
彼は24フィート(約7.3m)もある、1995年に発売されたロードトレックのRV車を購入し、Googleやその隣のビルの駐車場に車をとめて生活しました。車の周りには人工芝を敷き、白いフェンスも設置し、同僚を小規模なバーベキューやカクテルタイムに招待していたそうです。食堂やバスルーム、ジムはGoogle本社の中にあるので、人が暮らしていくための施設としては問題なかったようです。

by H. Michael Miley
しかし、順調に見えたRV車での生活ですが、「雨と寒さに弱い」という問題点がありました。ウィーバー氏によると、RV車の外側では外気が凝結したとのことで、耐えがたい寒さだった様子。全ての衣服をプラスチックケースに詰めてオフィスに持っていき、その代わりにオフィスから取ってきた乾燥剤をRV車に持ち込んだとのことですが、54週間後にはアパート暮らしに戻ったそうです。
また、ウィーバーさんとは別のプログラマーであるベン・ディスクさんも2011年10月から2012年11月までの56週間にわたってGoogleの中で暮らしていました。もともと、ディスクさんはGoogleの全自動運転車を開発していた「510 Systems」の社員だったのですが、2011年に行われたGoogleによる510 Systems買収に伴い、Google社員となった人物です。以前はハワイに家を買って妻と暮らし、子どもをもうける予定だったディスクさんですが、2011年に離婚したため急遽サンフランシスコ・ベイエリアへと引っ越し、510 Systemsに就職したところでした。「ものすごく賞金の高い宝くじに当たったような気分だった」と当時の心境についてディスクさんは語ります。
ただし、この宝くじの問題は、サウスベイエリアで家を借りなければならなかったこと。彼の年収は1700万円ほどでしたが、離婚手当を払いながら月25万円の家賃を払うのは彼にとって非論理的でした。もともとディスクさんの両親は禅がきっかけで知り合っており、父親は和尚でした。ハワイで育ち、カリフォルニア工科大学でコンピューター・コーディングに深く没頭し始めたディスクさんにとって「所有する」ということは大きな関心事ではなかったのです。自分の荷物が車にそっくりそのまま入ってしまうことに気づいたディスクさんは、クラシファイドコミュニティーサイトのクレイグズリストで約22万円を払ってGMCの「Vandura」という車を購入しました。

by Dibaday / Lewis Adams Photography
Googleの社内Wikiにはかつて「Living at Google.(Googleで暮らす)」というページがありました。数人の先人がこのページに書き込んだ内容を参考に、ディスクさんはツインのマットレスを車の後部に設置し、マットレスの下には棚を設置しました。Vanduraは砂漠の中で街を建設するサバイバルな野外フェス「バーニングマン」でもよく使われる車で、ディスクさんの場合、車内は緑色の手製カーテンや木目調のパネルで装飾されていました。完全に「家」として機能しており、駐車場から動かされなかったのですが、「もし運転していたら全てが粉々になっていただろうね」とディスクさんは語っています。
Google社内にある食堂「Google's Cafe 150」は全ての食材が半径150マイル(約240km)以内で採られたオーガニックのものだったので、ディスクさんはただで食事ができるだけでなく、かつてないほど健康的な生活が送れたとのこと。しかも、周囲には大学があるため、Googleでの食事に飽きたら大学の食堂を使えました。スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末の充電はオフィスで行い、夜中でも会社に戻ればトイレやシャワーが使え、洗濯も可能、ということで、ディスクさんの生活費は限りなくゼロに近かったそうです。

ただ、ウィーバーさんと異なり、ディスクさんは自分の車に同僚を呼んでバーベキューやカクテルアワーなどを行いませんでした。自分の幼少期や元妻との生活を考えた時、決してバンでの生活は幸せなものではなかったからです。彼はひたすら、早期退職してハワイで農場を購入するためにお金を節約し続けました。「僕の孫たちが育つ場所を購入するのが全てなんだ」と語り、部屋を賃貸しないでいたディスクさんですが、バンで暮らす男性と子どもを持ってもいいと考える女性を見つけ出すのは難しく、女性との最初のデートでは「職場近くのこぢんまりした場所に住んでいる」と語っていたそうです。
2012年、ディスクさんはGoogle内で部署異動となったのですが、異動先の職が退屈だったためGoogleを去り、Leica Geosystemsに転職しました。そこでもバンでの生活を続行しましが、駐車場は会社のものではなく「Hacker Dojo」というコワーキングスペースのものを使っていたのこと。Hacker Dojoの駐車場ではディスクさんの他にも4人のコーダーがバンで生活していたそうです。
56週間にもわたってGoogleの駐車場で暮らしたディスクさんによると、夜中の2時に掃除人がオフィスにやってくるGoogle社内ではプライバシーを持つのが難しく、落ち着いた生活ができないとのこと。社内には「Google nap pods」というお昼寝スペースが設けられていますが、ディスクさんに言われせるとGoogle nap podsは「ジョークのようなもの」らしく、使う気にはならないようです。

by Ellen Spertus
しかし、オンラインフォーラムの情報によれば、ディスクさんと時を同じくして、Google nap podsとビーズクッションと瞑想室、マッサージルーム、窓のない会議室、ソファなどを組み合わせることによって13カ月もGoogle社内で暮らしたエンジニアもいたそうです。なお、Googleは今回のBloomberg Businessの記事に対して、コメントを控えています。
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in メモ, Posted by darkhorse_log
You can read the machine translated English article The idea of "living by eating at a….